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日本帰還

~数週間後・貨物船「レイターサワー」~

ファリスタ―魔導王国との貿易にやってきた民間船、「レイタ―サワー」。

帝国ユナイテッド海運所属の船で、その大きさは全長約450メートル。

約2万5000個のコンテナを積み込むことができる超巨大貨物船である。

そんな超巨大船ではあるが、民間船であることは変わりない。

海賊などに襲われる可能性も考慮し、海上保安庁の巡視船による護衛を受けている。

しかし、護衛の巡視船が全長120~140mほどの船ばかりなので、

「レイタ―サワー」の大きさが際立っていた。

すべての船が船尾に日章旗をはためかせており、

これらが日本の船だということはだれの目に見ても明らかである。

そんな巨大な貨物船「レイタ―サワー」は、港町ラトエノで大量のコンテナを積み下ろしていた。

日本からの輸出品は主に工業製品、輸入品は主に食料品や工芸品である。


「あった……」


ラトエノの街角で、ローブを羽織った少女がそうつぶやいた。

岬だ。彼女は、無事にテリャティア帝国を脱出し、ここまでやってきていたのである。

港は日本によって改造され、ハーフティンバー様式の建物が立ち並ぶ中に、

巨大なガントリークレーンがあるというなんともアンマッチな光景が広がっていた。

岬は港のコンテナに隠れながら、ゆっくりと「レイタ―サワー」に近づいていく。

船員に頼んでも、乗せてもらえないことはわかりきっていた。

コンテナの向こうで、船員たちが話している。

翻訳現象が働いていても、わかった。日本語だ。イントネーションが違う。


「ここら辺のコンテナは積むんだっけ?」

「そこにある荷物は全部積んで大丈夫だ。検査も終わってるし」

「おーけー」


岬の隠れている場所に、ガントリークレーンのアームが近づいてくる。

それを見て、岬は近くのコンテナに入ろうとした。

しかし、鍵がかかっている。

訓練で修得した……というか、習得させられた魔法『鍵開け』を使い、コンテナのカギを開く。

地味に、彼女は日本人初の魔法使いなのだが、彼女はそのことを全く持って知らない。当然である。

中に入ると、アームにそのコンテナがつかまれた。

コンテナの扉を再度閉めると、中は真っ暗になる。

先程と同じように、訓練で習得させられた魔法『ライト』を使い、あたりを照らした。

彼女が使える魔法は、この二つだけである。


「うわっ」


ゴトン、という音が響く。

コンテナが、船の甲板に置かれたのだ。

このままここで息をひそめておけば、日本へ帰れるはずである。


***

十日後、博多港に入港した「レイターサワー」。

積まれていたコンテナを、クレーンが次々とおろしていく。

コンテナの中にいた岬は税関に見つかり、事情聴取を受けることになった。

調査の結果、愛媛県警に保管されていた2032年度の行方不明者名簿に彼女の名前があることが判明。

政府はARSを使用して服にかけられていた魔法を解除し、日本製の服に着替えさせた後、彼女を両親のもとに送り届けた。

警察による事情聴取と、精神科医によるメンタルセラピーが定期的に行われるが、いずれ元の生活に戻れるはずである。

テリャティア帝国はファリスター魔導王国を通じて抗議、岬の返還を要求してきている。

日本政府はもちろんそれを拒否したため、両国の関係は悪化の道へ進むこととなった。

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