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加原技研

~加原重工横浜技術研究所・駐車場~

加原技研はすこしだけ小高い場所に立っており、浸水していない。

車を駐車場に止めると、施設へ向かった。

人はいない。おそらく、この台風で避難したのだろう。

扉を開き、中に入った。

建物はなぜかボロボロで、天井も一部崩れている。

少し先に進んでみると、白衣を来た男性が柱に突き刺さって亡くなっていた。


「うわぁ……」


その男性の遺体を見て、さくらが声を漏らす。

通路には研究員と思われる人々の遺体が大量に転がっており、

この研究所が何かに襲われたのだろうことがわかった。

天井に空いた大穴からは、雨水が吹き込んできている。

転がっている遺体を避けながら、六人は奥へ奥へと進んでいった。


***


「……あっ」


しばらく進むと、男性の研究員が倒れていた。

その研究員はまだ息があるようで、六人に何かを伝えようとしてくる。


「第七世代が……奪われた……」

「第七世代?」

「裏切り者は……錠前……だ」


研究員はそう言い残すと、息を引き取った。

彼の手は、近くのパソコンを指さしている。

パソコンの画面には、研究員名簿のようなものが映っていた。


「錠前……?」


名簿をスクロールし、錠前という名前を探す。

しばらくスクロールすると、『錠前 秀樹』という名前が目に入った。


「こいつか……」

「裏切り者って、どういう事でしょうね?」

「わからん。が、行ってみるしかないだろう」


六人は、名簿に書かれていた住所へ向かってみることにした。


***


「ヤバいな、道路がほとんど冠水してる」


車は、道路の水を切り裂きながら進む。

人は全くおらず、救助隊のヘリも見当たらない。

結城は、カーラジオを付けた。


『橋霧町での被害は予想をはるかに超えており、

陸上自衛隊による救助活動は依然続いています。

区民の約80%が救助されましたが、

それでもまだ多くの方々が取り残されています。

東京23区でも大きな被害が発生しており、交通網は完全に麻痺。

救助活動は難航を極めています。

また、首都圏全域で停電が発生しており、復旧の見込みは立っていません』


ラジオからの声が、車の中で反響する。


「うぉお!」


直後、道路が崩壊。

幸い、脱輪することはなかったが、本格的に地盤が緩みつつあるようだ。


***


土砂降りの中、六人は錠前の住むマンションに到着した。


「こんちわー! 不届きもので~す!」


結城はそう言いながら、車から取り出したバールで、

マンションのガラス扉に殴り掛かった。

扉はいとも簡単に壊れ、入れるようになる。


「錠前の部屋は……302号室か」


錠前の部屋へ向かい、扉をこじ開けようとした。

しかし、開かない。


「ダメか。よし、こいつを使おう」


そう言って、結城が何かを取り出す。


「何ですかそれ?」

「ダイナマイト」

「ああ、ダイナマイト……ダイナマイト!?」


和佳奈が、驚愕の声を上げる。


「ど……どこから持ってきたんですか! そんな物!」

「独自のルートで仕入れたものさ」

「独自のルート……?」


結城はそう言いながら、ダイナマイトを扉にセットする。

そして、そこから少し離れると、言った。


「発破!」


轟音と共に、扉と周辺の壁が吹っ飛ばされる。

六人は、部屋の中に入って行った。


「ずいぶんと暗いな」

「停電してますからね」


六人はライトをつけ、部屋を探索する。

少し進むと、つけっぱなしのパソコンが置かれていた。

画面を見ると、それは日記のようだ。


「日記か……」

「っていうか、なんでパソコンついてんだ……?」

「机の下にバッテリーが置いてある。多分、これのおかげだね」

「なるほど」


日記は、データが欠損しているようで、文章のところどころが見えなくなっていた。

六人は、読めるところを読み始める。


***


2035年 7月10日

産業スパイとして、加原重工に潜入することに成功。

上手く取り入ることができれば、わが社の技術力は爆上がりするだろう。

そのためにも、まずは研究員としての地位を確立する必要がある。

あと、これを機に、日記を書きだすことにした。


[読み込み失敗]


2035年 8月7日

日本政府による発表で、日本が異世界に転移したことが分かった。

とても現実の出来事とは思えない……。

加原重工も、大量の社員をリストラした。

幸い、うまく取り入っていたため、俺はリストラされずに済んだが……。

これからどうなることやら。


[読み込み失敗]


2036年10月6日

GPS衛星「おおとり」との連絡が途絶したらしい。

話によると、隕石の衝突だとか。

隕石か……


[読み込み失敗]


2036年 12月01日

海岸で少女を拾った。記憶喪失らしく、何も覚えていないらしい。

とりあえず、家に連れ帰ることにした。


2036年 12月02日

警察署に連れて行ったが、少女の戸籍はなかった。

異世界人の可能性もある[読み込み失敗]


2036年 12月03日

記憶喪失の少女は、何を聞いても「わからない」と答えてしまう。

警察も対応に困っているようなので、俺が養子として引き取ることにした。

名前がないと不便なので、名前を付けようと思う。

どうしようかな……「愛」、とでもなずけようか。


2036年 12月04日

加原重工は、新たな製品を加原技研でつくっているらしい。

なにがつくられているのかはいまいちわからないが、多分新作のトークロイドだろう。

本社にこの情報を伝えなくてば。しかし、電話は感づかれそうだ。

そうだ、区民図書館の本に挟んでおこう。

これならばれないだろうし、専門書コーナーなら第三者が取る事もないだろう。

見つけやすいよう、絵本に挟んでおいた。


2036年 12月05日

愛に読み書きを教えることにした。

とりあえず、ひらがなとカタカナはすべて教えておく。

漢字はおいおい教えていけばいいだろう。


2036年 12月06日

愛はとんでもないポテンシャルを持っていた。

もう五十音すべてを覚えたし、漢字も常用漢字は全てかけるようになっていた。

漢字辞典を読んだらしいが……とてもそれだけとは思えない。

ただ、文法はつたない部分が多い。まだまだ教えることはありそうだ。

せっかくだし、算数や理科も教えようかな。


2036年 12月7日

彼女は俺に懐いてくれてるし、養子にしてよかった。

台風が近づいてきているので、一応、食料とかを買いためておこう。


2036年 12月8日

愛は、天文学に興味があるようだ。

恩師に天文学者がいるので、今度紹介しようか。

今は、鷹那大学にいるんだっけ?


2036年 12月9日


***


日記を読み終わり、少しの間、沈黙が流れる。


「なるほど。アイは、ここで錠前とやらと暮らしていたのか」

「で、錠前は加原重工に潜入した産業スパイだったと……いったいどこの企業だ?」


結城が、そうつぶやく。


「わかりませんね。加原重工の同業他社何て、大量にありますし」

「たしかに……ん?」


ふと、机の上の日記帳に気が付いた。

どうやらそれは、アイが書いたものようだ。


***

12月06日

日本語の練習のため、日記を書くことにしてみた。

でも、何を書けばいいのかわからない。


12月07日

頭が痛い。

頭痛薬を買ってきてもらおう。


12月08日

双子台風とやらが近づいてきているらしい。

19号と20号、だっけ? どっちも大型だとか。

嫌な予感がする。


 月 日


すべて思い出した。

私の使命を果たさなくては。

あの男は[解読不能]。私の使命を果たすためには、必要な[解読不能]だ。

[解読不能]様は国立[解読不能]学研究所に[解読不能]されているらしい。

ただ、邪魔[解読不能]だ。護衛として、[解読不能]に聞いた機械人形を[解読不能]。

今日の[解読不能]には台風21号の勢力が[解読不能]になるらしい。

それまでに[解読不能]様を[解読不能]しなくては。


――以降は、土砂やガラス片による損傷が激しく、読むことができない。


***


「この日記は……」


直後、大きな揺れとともに、部屋が揺れた。

天井……というか、現在いる場所より上の階がすべて崩壊し、暴風雨が吹き込んでくる。

暴風で本や紙がどこかへ吹き飛んでいき、地面が大きく傾いた。


「こ、このままじゃまずいぞ……いったん、車に戻ろう!」

「は、はい!」


六人は、駐車場へと走る。


***

マンションから飛び出し、車に飛び乗った。

エンジンをかけ、急発進する。

敷地外に出たとたん、マンションが地盤ごと崩壊。

濁流の中に沈んでいった。


「わぁお」

「こりゃ本格的にまずそうだ。さっさとこれを片付けないと」


とりあえず車を走らせながら、日記の内容に関して話す。


「日記の内容から見て、アイは国立研究所に行ったみたいだ」

「国立研究所……国立と研究所の間に何か入っているのは間違いないけど」

「この区で国立の研究所と言ったら、国立生物学研究所かな?」

「国立生物学研究所……行ってみる価値はあるかもしれませんね」

「よし。医院長、お願いします」

「はいはい」


結城は、ハンドルを国立生物学研究所に向けて切った。


***


「うわっ!」


結城がそう言って、ブレーキを踏んだ。

道の一部が濁流にのまれていたのだ。


「これはやばいですね……」

「泳ぐ?」

「なんでそんな発想になるんですか! 普通に大回りすればいいでしょ!」

「確かに」


その時、つけっぱなしのラジオから、音声が聞こえてくる。


『現在、首都圏全域で大規模な電波障害が……おり、救助活動が難航しています。

……は車での移動を……と発表しており、被災者の……は……です。

また、災害に乗じて器物損壊事件が発生したとの情報が入ってまいりました。

被害にあったのは橋霧町に位置する……監視カメラからの情報によると、

犯人は20代……6名ほどの集団とのことです。

しかし、監視カメラがこの災害により損傷していたため、

この情報が正確な可能性は低……被災者の方々は……ください。

また、加原重工によると、災害に乗じて最新型トークロイドが……されたとのことです。

警察は、器物損壊事件と同一犯と考え、捜査を……います』

「……これオレたちのことじゃね?」

「たぶんそうだね」

「まじかよ……」


結城が、あきれたように言う。


「とりあえず、先を急ぎましょう」

「ああ……そうだ。車以外でも情報を得られるようラジオアプリを立ち上げっぱなしにしとこう」


そう言って、結城はスマホを触った。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


などと思ったら、

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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