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台風下の街


「うわっ!」


廊下に出ると、地面が大きく揺れる。

電灯が明滅したかと思うと、あたりが真っ暗になった。

窓から差し込む、弱弱しい光だけが頼りになる。


「アイちゃん!」


さくらが、追いかけようとした時、再び地面が揺れる。

そして、窓をぶち破り、通行看板が室内に飛び込んできた。

割れた窓からは雨や風が吹き荒れ、まるで台風の中にいるようだ。

いやまあ、実際に台風の中にいるのだが。


「うわっぷ!」


割れた窓から飛び込んできたレジ袋が、さくらの顔に張り付いた。

それを外そうとあたふたしている間に、アイの姿を見失ってしまう。


「ど、どこ行った!?」

「多分外です!」


***

~鷹那大学・横浜キャンパス・駐車場~


「重っ……」


風で押され、重くなっているガラス戸を無理やり開く。

ガラス戸を抑えながら傘を開こうとするが、一瞬でひっくり返ってしまった。


「くそっ、とんでもない風だ」

「暴風域に入ったんですかね……」


さくらは傘を捨て、ずぶぬれになりながら外に出る。

他の三人は、傘を開こうともせずに外へ出た。

並木は風にあおられて大きく揺れ、空中を軽いものが飛び交っている。

四人が駐車場を歩いていると、止められていた車が転がってきた。


「車が転がってくるって何!?」


車は宙に浮かび、四人の方へ飛んでくる。

強い風とはいえ、車が飛ぶほどではないはずなのに。


「避けろっ!」


四人がとっさに避けると、車は並木にぶつかり、ひしゃげた。



「早く、大学の敷地内から出ないと駄目な気がしてきた」

「アイちゃんも外へ出たと思います。行きましょう」


***

四人はレンタカーに乗り、鷹那大学の外に出る。

アイの姿がどこにも見えないことから、この横浜市内に逃げ出したのだろう。


「風が強いからか、ハンドルが取られるッスね……」


内村は、四苦八苦しながら車を運転している。

道路に他の車はいないのでまだ大丈夫だが、予期せず蛇行運転になっていた。


「いったいアイちゃんはどこに……あっ!」


アイと同じくらいの背丈の人影が、『加原重工製品展示館』と書かれた建物に入っていくのが見えた。


「あっ、あの建物に入った!」

「え!? 行ってみましょう!」


***

~横浜市・加原重工製品展示館・一階展示室~

四人は受付を済ませると、展示室に入る。

台風下であるためか人はいないが、水滴が奥の方まで続いていた。

まるで、ずぶぬれの人が歩いて行ったようだ。


「ここは創業から2026年までの製品を展示しているみたいですね……」

「へぇ……。だから、トークロイドとかがないんだ」

「初めてのトークロイドは2027年ですから」

『……あの、なんで展示品見てるんですか? 早く追いかけないと!』


ツバキがそう言うと、三人は渋々展示品に背を向けた。


***

~加原重工製品展示館・トークロイド展示室~


「足跡が途切れてる」

「いったいどこへ行ったんでしょう?」

『外には出ていないようですが……』


四人は周りを見る。

ショーケースの中には、様々な型のトークロイドが並べられていた。


「……ん?」


展示品と展示品の間に、アイが立っていた。


「……何やってんの?」

「……」

「行儀悪いから出てきてね?」

「あ、はい」


アイが、ショーケースから外に出た。


「で、なんで逃げたの?」

「えっと……実は、橘教授に話さないといけないことを、忘れちゃって……」

「忘れた?」

「ああ、いや、細かく言うと違くて……あの、橘教授に何かを伝えなきゃいけないって使命を感じて、行ったのはいいんですけど、なにを言えばいいのかわからなくて、それで……」

「つまり……?」

「橘教授に、伝えなきゃいけないことがあるんです。でも……わからないんです」

「なるほど……」

「……う、うぁあ……」

「アイちゃん?」


突然、アイが苦しみ始めた。

アイを中心として空間がゆがみ、四人の意識が混濁する。

空間のゆがみはどんどん大きくなっていき、四人は意識を失った。

「面白かった!」


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