第78話 嘆願書の在処
リックスをはじめ、他の5人はこれで一旦解散することにした。これからの話をするにしても、グイファスが中将の求めているものを用意しなければ、何も進まない。
そのためアッサムは、自分より上の人物を説得するための方法を考えると言い残して退室し、セシルは腑に落ちない様子ではあったものの、中将の意見を尊重することにしたようで、グイファスの「証明」を待つことにしたようだった。
「少佐、分かっていると思うが今の話は他言無用で頼む」
アッサムに続いて、部屋を去ろうとするセシルの背にリックスが言うと、彼は振り返って「誰かに話すつもりなど毛頭ありません」と不機嫌そうに答えた。
「こんな話、誰が聞いても反対しますよ」
そう言って、部屋を出て行ってしまった。
「少佐……」
「仕事がやりにくくなりそうだな」
リックスの一言に、リセムスはため息をついた。
「少佐は自分の気持ちで周りを振り回すような方ではありません。……多少は、致し方ないかとは思いますが。しかし、人選が間違っていたとは思いません」
するとリックスはふっと笑って、「同感だ」と頷く。
「少佐が言っていることは正しい。軍人だけではなく、国民の声そのものだ。彼が我々に協力してくれるようになったら、きっと心強いだろう」
「そう思います」
「さて、グイファス」
彼は次に、サーガス王国の青年の方を向いて声を掛けた。
「君はサーガス王国が、本当に大蛇のことで困っていることを証明できると言ったが、その方法はどういうものだ?」
「はい。実はジルコ王国に入ったのは、私以外にもう一人おりまして、その者が我が国の陛下よりお預かりした嘆願書を持っています」
その言葉に、リックスとリセムスは思わず目を丸くした。
「サーガス王国の国王が、我が国に嘆願書を?」
「信じられないな」
リックスが正直に呟くと、グイファスは目を伏せた。
「そうなのですが……それくらい、ひっ迫した状態なのです。また、陛下はまだよいのですが、皇太子が大蛇を酷く恐れていて、奴を片付けないことには王位継承権も放棄すると……」
「それはそれで他の問題が浮上するだろうな」
「他の問題とは?」
マルスが尋ねると、リセムスが答えてくれる。
「王位継承をめぐって、王家での争いが生まれてしまうことです。そうですよね?」
グイファスは顔を上げて頷く。
「その通りです」
「サーガス王国の王家って、複雑なのか?」
マルスの問いに、グイファスは苦虫を潰したような顔をした。
「まぁ、それなりに……」
どうやらここでは言えない事情があるらしい。
「サーガス王国が大蛇を排除したい理由もはっきりと見えた。単なる書状ではなく嘆願書である必要も分かった。問題はその嘆願書のありかだが、君はどこにあるのか分かるのか?」
リックスの問いに、グイファスは頷いた。
「この街にいるのは確かです。暫く会っていませんから、私が捕まったことは勘づいていると思います」
「彼が捕まっている可能性は?」
「それはゼロに等しいと思います」
「何故?」
「彼の容姿は、ジルコ王国の者と似ているからです」




