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第75話 国交が冷えた理由

 今から100年以上前の話。これはジルコ王国の民に伝わる一つの歴史である。


 当時のジルコ王国とサーガス王国との関係は、小さな小競り合いはあったものの商人の行き来は頻繁に行われるような間柄だった。


 サーガス王国の商人が持ち込むものの多くは、宝石や金属でできた装飾品。あちらでは、鉱物が取りやすいということと、その加工技術が優れており、ジルコ王国の貴族たちはこぞってそれを手にしようとしていた。


 一時期、あまりにもジルコ王国の金貨がサーガス王国に流れ出るようになったので、貴族たちにそれを自粛するように国から指導があったが、それでもサーガス王国の宝石を求め、こっそりと取引する者もいたくらいだ。


 このような状態にあっても、当時はまだ国境の番人(イーガルド・フォー)を国境に配置したり、不法侵入してくる者たちを徹底的に排除したりすることはなかった。それが変わってしまったのは、大きな戦争が起こってしまったせいである。


  サーガス王国は今でこそ、一つの王国として成り立っているが、100年前はまだ小国に過ぎなかった。そこから近隣の村や部族と戦い、現在の一つの国へと成長させたのである。


 そのなかに、ジルコ王国とサーガス王国の国境の間で暮らす部族があった。


 サーガス王国はその土地を、国の一部にしようとしたらしい。それに反発した部族がサーガス王国と戦ったのだが、女子供や老人は戦うことができない。そのため、彼らは戦火から逃れるためにジルコ王国へ渡ったのである。


 部族の者達に「国境」の概念はない。ジルコ王国もそれが分かっていたので、初めの頃は、警戒しつつも静観していた。


 しかしサーガス王国の人間は容赦なかった。彼らを捕まえ、捕虜にしたり、時には見せしめに殺したりしたのである。それを知った国境周辺に住むジルコ王国の民の一部が、その部族を匿ったのだが、そのせいで戦いは悪化した。


 サーガス王国は、ジルコ王国が自分たちの侵略を邪魔しているとして、国境を越えて戦い出したのだ。つまり、ジルコ王国に火種が移ってしまったのである。


 そこから、大きな戦争に発展した。


 戦争の期間は一年間に及び、戦死した軍人は推定3万人。一般市民も1万人近く犠牲になり、歴史上「最悪な戦争(ゾルド・ウォリア)」と言われている。

 それからというものジルコ王国は二度と同じようなことにならないよう、国境の番人(イーガルド・フォー)を配置するようになり、不法侵入者を徹底的に排除するようになり、現在に至る。



 ジルコ王国とサーガス王国の国交が冷えてから100年が経った。世代が変わっても、ジルコ王国の国民はサーガス王国に対して不信感を抱いている。それ故に、簡単に「分かりました」といことは出来ないのだ。


 だがリックスは、セシルの問いを鼻で笑う。


「蔑ろ? そんなつもりは毛頭ない。サーガス王国との国境で死んだ軍人がいくらいたか。私の前で死んだ者もいる。そんなことは少佐より分かっている」


「だったら何故」


「歴史は歴史。いつか変わっていく必要があると思うが? それとも少佐はこの状況を続けて、死者を増やしたいのか?」


「そんなことは言ってません。あなたの方こそ、今の状況ではサーガス王国の肩を持っていると思われてもしかたありませんよ?」


 その瞬間、リックスの表情が冷ややかなものに変わった。これまで飄々と流していた彼の態度が一変し、室温が急激に下がったような気さえした。


「浅はかな。これから先軍備を強化することも上層部は考えているようだが、はっきり言う。無駄だ」


「サーガス王国が我が国の脅威だというのに?」


 セシルの冷たい問いに、リックスは鼻で笑う。


「脅威? 私はもっと先のことを見据えて話をしているんだ」

「どういうことです?」

「サーガス王国が助けて欲しいと言っているのを機に、この冷戦を終わらせる」


 誰もがその言葉に、眉を寄せた。

 彼は何を言っているのだろう、と。ただ一人、グイファスだけはじっとリックスの目を見つめていた。


「少将……?」


 マルスがそう呟くと、リックスはこう言った。


「私は国境の番人(イーガルド・フォー)を無くしたいと思っているだけだ」

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