第74話 集合
「よし、これで全員集まったな」
リックスがにやっと笑いながら言うと、アッサムは腕組みをしてのっけからため息を吐いた。
「集まったのはいいが、これから何をするつもりだ」
いかつい顔をした、いかにも軍人という男がリックスに尋ねる。
「やだなぁ、ここに集まる前に話したでしょう。サーガス王国の現状とそのためにメレンケリの力が必要であることを」
「ざっくりだがな」
「ざっくりでも要点は話しましたよ」
アッサムとセシルには、大まかにではあるがグイファスのことやサーガス王国が置かれている現状について説明していた。
「しかし、それを私たちに話をしてどうしろと言うのです?」
セシルが口を挟む。柔らかな口調だが、今回の件に関してあまり積極ではないことが伺えた。
「少佐にはメレンケリたちの補佐役をしてほしい」
「補佐?」
「詳しい内容はあとで」
「では、私は?」
尋ねるアッサムに、リックスはさらりと答える。
「中将には軍事警察署の署長を動かしてほしいのです。ついでに、国王陛下にも話を付けて下さい」
重大なことを平然と言ってのけるので、アッサムとセシルは思わず顔を見合わせた。
「署長と陛下に話をつけるというのは、とても難しいことだぞ。署長は百歩譲って出来たとしても、陛下に伝えるなど……。ヒベロク、本当に分かっていて言っているのか?」
アッサムの問いに、リックスは頷いた。
「ええ勿論、分かっています。もし話が通らないのであれば、強行突破も辞さない考えです」
「というと?」
「我々だけでサーガス王国へ赴きます」
リックスの宣言に、顔をしかめたのはリセムスだった。
「私は行きませんよ」
きっぱりと断られたが、彼は軽く受け流す。
「それは分かっているって」
「どうでしょうか? 中将も少佐も手を貸して下さらない、となったら、私のような使い捨ての駒でもないよりはましと思っているのではありませんか」
「なんだ、分かっているんじゃないか」
軽い口調で言うリックスに、リセムスはむっとする。
「分かっていますよ、分かっていますとも。でも、話は聞いていませんからね」
「固いよなぁ、リセムスは」
「少将が何でも簡単に考えすぎなんです!」
すると、その間にアッサムが割って入った。
「分かったから、そこだけで話をするな」
「……すみません」
リセムスが素直に誤ったのに対し、リックスは反省の色はなかった。
「中将が、我々の強行突破を阻止してくださればいいのです」
二人のやりとりを聞いてアッサムは長くため息を吐くと、呆れたように言う。
「そうは言うが、簡単なことではないぞ。サーガス王国に行くなどと、よく軽々しく言えたものだ。軍事警察署がなんのためにあるのか分かっていての発言か?」
ここまで黙って聞いていたセシルが付け加える。
「中将の仰る通りです。国境の任に就いているあなたなら、我が国とジルコ王国がどれくらい険悪な状況か分かっているでしょう」
「分かっている。だが、それを打開したい」
「何故? 何故なのです? 我々の国の関係は悪いんですよ。あちらの国と関わらないように、この100年間、軍事警察署はずっと戦って来たんです。少将はそれを蔑ろにするおつもりですか?」
セシルがそう言ったときここにいる全員、つまりグイファスでさえ、ジルコ王国とサーガス王国の歴史を思い出していた。




