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第69話 長女

「では、どうするのだ」


 ガイスの質問に、クディルは母親とは似ておらず、柔らかい印象の目を細めた。


「だからこそ、母はメレンケリさんに全てを話すことにしたのです」


 ここまできて、どうしてクディルがここに尋ねて来てわざわざ話をしに来たのか、そしてなぜフェルミアがメレンケリに全てを話すことにしたのかをガイスは悟った。


「まさか……」


「ええ、そのまさかです。メレンケリさんの力を持って、大蛇を退治しようということになりました」

「……」


「本当は母もメレンケリさんに危険が及ぶようなことはしたくないと言っていました。ガイスさんの娘さんですし。ですが、もう私たちには大蛇を封印できるほどの力を使うことができません。『大地の神』の加護がもう少し強かったら、封印の石を作り戦うこともできたでしょうが――……」


 そう言って、クディルは俯いた。


「呪術師の技術は失われつつあり、封印の石は作れません。抗ってはおりますが、どこまでいけるのか……。私たちにジルコ王国の土地と対話し、ここにある『大地の神』と心を通わすことが出来たのならば違ったのかもしれませんが、さすがにその方法は分からなくて……。ですから、メレンケリさんに頼らざるを得ないのです」


 クディルの話を聞いてから、ガイスは暫く沈黙していた。そしてクディルも彼が話し始めるまでお茶を飲みながら待っていた。そして、ついにガイスは大きく息を吸って吐き出すと、組んでいた手をぎゅっと握る。


「あの子には、苦労ばかりさせてしまう……」


 ガイスは顔に苦悩をにじませた。


「ガイスさん……」


「私はこの右手の力は、長子に引き継がれていくものだと思っていた。それも男だ。だから、私の子供の中で長男であるトレイクが引き継ぐものだと思っていたのだ。しかし、運命は違った。二番目に生まれた娘、女として長女であるメレンケリがこの力を受け継いでしまった」


「……」


「驚いたよ。こんなことがあるのかと。そしてトレイクに力が引き継がれたのだとしたら、それなりに自分のやり方を教えてやれたと思うのだが、メレンケリは娘だ。どうにも難しくてな。私には年の離れた姉がいたけれど、この能力のことがあったせいで一緒にいた記憶があまりない。だから、女の子にどう教えたらいいのか分からなかったのだ。時には叱りすぎたということもある。だけど、どうしても自分の二の舞を踏んでほしくなかった。それが願いだった」


「お気持ちお察しします」


「だが、いつしかあの子は笑わなくなった。泣かなくなった。そして、感情を表に出さなくなった」


「……」


「それから、物事を淡々と受け取るようになった。これでよかったのか、と思っている矢先、今度はサーガス王国での蛇退治。本当に、あの子の運命はどうなっているのだろう……」


 ガイスがメレンケリの運命を憂いていると、クディルが言った。


「いえ、もしかしたら選ばれたからこその運命なのかもしれません」


 その言葉に、ガイスは俯いていた顔を上げた。


「どういうことだ?」

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