第65話 闇に差す光
メレンケリの質問に、グイファスとマルスも聞き入っていた。もし、元に戻す力があるというのなら、きっと彼女にとって救いになるだろうと思っていたからである。
だが、フェルミアの答えは彼女が求めているものではなかった。
「残念ながらない」
「ない……」
「ああ。ないね」
メレンケリはゆっくりと下を向き、俯いた。
「それはあんたの曾祖父も祖父も、そして父親も考えたことだったけど、その右手で石になった者たちを戻す術はない」
「……」
フェルミアは寂しそうな表情をしながら、メレンケリに告げた。
「あったら、お前の父親だって親友を救えたはずだろう?」
そう言われて、メレンケリはぱっと顔を上げた。フェルミアは悲しそうな顔に、無理に笑顔を作る。
「父のこと……知っているんですね」
フェルミアは頷いた。
「私は寧ろ、あんたがガイスの過去を聞いているとは意外だったけどね」
「……つい先日、あなたのことを聞いたときに教えてもらったので……」
「そうか」
フェルミアはふうと大きく息を吐き、天井を見上げた。
「石になった者を解放して欲しい、という願いは私の祖先も聞いている。邪悪な力から解放されたメデューサ自身が、がそういう願いをしたんだ。彼女は自分の意思とは裏腹に、無関係の人たちを石にしてきてしまったから、罪の意識はとても重かったんだろうと思うよ」
「……」
「それで私の祖先をそれで私の祖先を頼ったのだろうがどうしようもない。色々手は尽くしてはみたんだが、未だにその方法が見つからなくてね。探してはいるんだが……力不足ですまないね」
メレンケリは首を横に振った。
「そんな……フェルさんが謝ることではありません」
自分と同じく悲しい顔をしているメレンケリの肩に、フェルミアはそっと手を置く。
「いや、もし私たちに石になった者を元に戻せていたら、きっとアージェ家の人間はもっと穏やかに暮らせただろうなと思うのだ。だから、それはそう思わせていてくれ。あんたたちの責務を負えない代わりに、せめて気持ちだけでも支えられたらと思う」
メレンケリはフェルミアの手に自分の左手を重ねた。
「フェルさん、ありがとうございます」
石にした者を戻す方法はなかった。だが、メレンケリは十分だった。
右手に宿った力が何処から来たのか知ることができたし、その理由も曾祖父が曾祖母を助けるためだった。
もしあの時、ラクトがメデューサを救わなかったら祖父は生まれていなかったし、祖父が生まれなければ父、そして自分もこの世に生を受けることはなかったのだ。
自分の手は確かに人を不幸にしてきた。
それは変わらない事実だが、単純にこの右手が「最悪」なわけではないと知って、メレンケリは心の中の闇に少し光が差した気がしていた。




