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第64話 新しい仲間

「ちょっと、待て」


 グイファスは、マルスの腕を掴んで彼の茶色い瞳を心配そうに見た。


「何故、あなたがその剣を買う必要があるのですか。関係ないでしょう? これはサーガス王国の問題です」


 するとマルスはムッと、顔をしかめた。


「だから何だ。俺が部外者だとでも? だから俺にはずっと敬語で話しているのか? さっきフェルさんに話した態度みたいに、俺に言ってみろ」


 グイファスは首を横に振った。


「部外者なのは間違いない……と思いますが……」

「敬語」


 そういって、マルスはグイファスをじろりと睨む。彼はそれに気圧されてため息をいた。


「ええと、分かりま……分かったよ。俺の言い方が悪かった。大蛇の問題はサーガス王国の問題なのに、ジルコ王国の君がそんな大金を払ってまで戦いに行くことじゃないと言っているだ」


 グイファスの真剣に心配している表情を見て、マルスはようやく理解した。

 彼は自分のことを侮辱しているわけでも、部外者だからと言ってのけ者にしようとしているわけではなかった。サーガス王国の問題をジルコ王国の軍人であるマルスが、背負う必要のないことだと言ってくれていたである。


「何だ、そういうことか」


 マルスはふっと笑った。


「心配してくれて嬉しいけど、俺はそれよりも君たちの力になりたいんだ」

「俺……たちの?」


 グイファスとメレンケリは視線を合わせ、それから再びマルスに戻した。

 マルスは二人の視線が恥ずかしかったのか、肩をすくませ少しおどけた風に答えた。


「ここに来るまではさ、グイファスの監視とメレンケリの補佐をするためだった。だけどフェルさんに会って、グイファスの話が本当だということを知って、それからメレンケリの右手のことを知ったら……二人の力になりたいと思ったんだ。純粋に、ただそれだけなんだ」


「危険が伴ってもか?」


 グイファスが言った。


「俺は軍人だぞ。多少の危険くらいで怯まないさ」


「俺の国の問題でもか。サーガス王国とジルコ王国の仲は良くない。その中の悪い国の為に、ジルコ王国を守る軍人が出払うなど許してもらえるだろうか」


「許すように説得するさ」

「何故君は、そんなにも力を貸してくれようとするんだ……」

「それは君も同じだろ」


 マルスの言葉に、グイファスは金色の目を見開いた。


「俺は君に……、何か特別なことはしていない」


 すると、マルスは笑った。


「そうだよ。グイファスは俺に何も特別なことはしていないさ」

「じゃあ、何故……」


 するとマルスはちらりとメレンケリを見てから言った。


「それは、秘密」

「何だよ、それ……」


 その時、テーブルを固い金属か何かで叩く音がした。


「話はまとまったかい?」


 その音は、フェルミアがどこから取り出したのか、最初に会ったときに持っていた煙管だった。彼女は煙管を巧みに操ると、びしっとグイファスにその先を向けた。


「グイファス、そういえばあんたはまだ答えていなかったね。その剣、買うかい?」


 尋ねられ、グイファスはぐっと剣を握った。


「勿論」

「値段は聞かないのかい?」


 すると彼は笑った。


「聞きません。彼が買うのに、俺が買わないわけはないですから」


 グイファスの笑みに、フェルミアもつられるように笑った。


「それもそうだね」


 フェルミアは話がまとまったところで、ぐっと腕を伸ばし欠伸をした。


「さてと。私が話せるのはここまでだ。大蛇の弱点だの何だの、教えてやりたいところだが、残念ながら私の手元には情報はない。それは自分たちで探すんだね」


「充分です。この剣も授けて頂きましたし」


 そう言うと、グイファスはゆっくりとマルスとメレンケリを見た。


「心強い仲間も手に入りました。あとは自分たちで何とかします」

「それならいいが。メレンケリは? もう聞きたいことはないか?」

「聞きたいこと、ですか……」


 フェルミアに聞かれ、メレンケリは考える。


「……では、もう一つだけお聞きしたいのですが」

「何だい?」

「私の力で石にしてしまった者は、元に戻すことってできるのでしょうか?」

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