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第62話 大蛇がいる限り

「グイファス……」


 メレンケリがぽつりと呟くと、フェルミアは立ち上がってテーブルに片手をつき、にやりと笑った。


「お前の気持ち、伝わった。それなら私も力を貸すとしよう」

「……どういうことです?」


 グイファスだけではなく、メレンケリもマルスも訝しそうな顔をしている。その三人の顔を眺めて、フェルミアはテーブルから手を離し肩をすくめた。


「そのままの意味さ。お前を試した」

「試す?」

「ああ。気分を害すようなことを言って悪かったね」

「何故そんなことを……」


 だがフェルミアはグイファスの問いには答えず、メレンケリの方を向いた。


「メレンケリ。お前はその力を無くしたい、と言ったな」

「……はい」


 突然自分に話が振られて、メレンケリは戸惑いながらも頷く。


「その力は、子供に引き継がれると自身からは次第に力が失われていく。それを待たずしてということだな?」


 フェルミアは続けて質問をする。そしてその瞳は真剣だった。その為、メレンケリも真摯に答えた。


「そうです。それに私と同じような苦しみを、もし子供ができたとして、その子に負わせるなんてしたくないですから」


「成程、分かった。では話を少し前に戻そう。私はさっきお前に、サーガス王国の大蛇をその右手の力で葬り去るつもりはあるかと聞いた。なぜ聞いたのか。それは大蛇が生きている限り、その力も存在し続けるからだ」


「それは、どういう……」


 するとグイファスが何かに気が付いて答えた。


「元々メレンケリの力は、メデューサについていた力を引き離した力だから――そうですね?」


 フェルミアは頷く。


「そうだ。大蛇になる前、邪悪なものをその身に持っていたのはメデューサ。そしてそのメデューサが持っていたのが、人を石にする力。それを引き離したのが当時の呪術師とラクトだ。

 いいかい、メレンケリ。よくお聞き。

 力というものは、大元があり続ける限り存在するんだよ。だからお前のその力は、大蛇の中に巣くう邪悪なものが消えてなくなるまであり続ける。代々引き継がれていくんだよ」


「大蛇がいる限り……」


「そうだ。だから私はお前に提案した。もしお前にその気があるのなら、大蛇と対峙したらどうかとね。グイファスが言うように封印の石があれば、大蛇を封印することは可能だろう。だが、それではお前の力は消えることはないし、封印の石の効力が切れれば大蛇は再び復活する。それならば、曾祖父と曾祖母からの因縁である大蛇をメレンケリのその力で滅ぼせばよいのではないか、というのが私の考えだ」


「しかし、一つ疑問があります」

「何だ」


「先程フェルさんは、元々大蛇は『大地の神』の力が元になっていると仰いました。すると、大地に繋がれた花を石に出来なかった私の力は、大蛇に有効なのでしょうか?」


「確かに、奴は元々『大地の神』の力を得て具現化したもの。しかし、それはとっくの昔に途絶えている。だからこそ、奴は人の血を啜っているんだ。力を得るには、そうするしか出来ないから」


「そういうことだったのか……」


 それに対して頷いたのはグイファスだった。


「だから、大蛇は人の血を狙うのですね」


「そうだ。過去、国王と血の盟約を結んだときは、まだよかった。国王の血と、地下という環境が、大蛇を生かしていたから」


「それはどういうことですか?」


「聞き伝えだが、サーガス王国の城の下には、『大地の神』から得た力を呪術師が道具などに秘めて、しまっていたという。大蛇はそれを分かっていたんだ。だから、地下で生活していた」


「なるほど……」


「ということは、私の力は大蛇に有効ということですね」


 フェルミアは頷いた。


「そうだ。だが、マルスが先ほど言ったように危険は伴うだろう。だから無理にとは言わない」


 メレンケリはフェルミアをじっと見た。そしてごくりと唾を飲み込むと、躊躇うように彼女に問うた。


「勝算はありますか」


「五分五分だろう。奴も進化しているだろうからね。さっきも言ったように、多分大蛇の姿もしていないだろう。噛みつかれはしないだろうが、女の手で首を絞められるということもあるかもしれない」


 メレンケリは思わず自分の首を左手で触れる。


「それに石にする力は失ったが、もしかしたら別の能力を備えたかもしれないしね」


「でも、私が大蛇を石にしたなら……」


 メレンケリの言葉を引き継ぐように、フェルミアは言った。


「お前のその力は右手から消えるだろう」

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