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第60話 大蛇を葬る手段

「え?」


 その問いかけに驚いたのは、メレンケリだけではなかった。グイファスもマルスも眉をひそめた。


「どういうことですか?」


 グイファスが問う。すると、フェルミアは笑った。


「私には、もう封印の石を生み出すほどの技術はない。だが、サーガス王国ではあの大蛇が厄介者になっている。だったら、その大蛇をメレンケリの右手の力で葬り去ってはどうかと言う話だ」


「そんな無茶な……!」


 マルスはテーブルを叩いて立ち上がった。


「メレンケリは女の子ですよ! 大蛇って危険なのでしょう? 近づいて噛まれでもしたらどうするのですか!」


 フェルミアはマルスの態度にも平然と答えた。


「いや、今は多分大蛇の姿をとっていないだろう。あれは、元々メデューサに引っ付いていた邪悪なものだ。あのとき、メデューサが正気に戻ったからもう大丈夫だと思ったのだが、浄化しきれていないものがあったのだろう。それが運悪く近くにいた蛇に憑りついたらしい。それが森ではなく人がいる場所で生活しているうちに、どんどん増幅していって、知恵を付けだした。それが蛇が言葉を話すようになった要因さ」


「じゃあ、今はどういう姿をしていると?」


 マルスの質問に、フェルミアは顎に手を当てて推測する。


「私が思うに、女の姿をとっているだろうよ。最初に憑りついたメデューサの姿だ。邪悪な力が長らく一緒にいた娘だ。姿を再現するのは苦ではないだろう」


 メレンケリは驚いた様子だった。


「ひいおばあ様の?」

「ああ。邪悪な力も増幅したのだろう。だからその姿を取ることができている」

「しかし、なぜそこまでしてサーガス王国の中で暴れる必要があるのか……」


 マルスが不思議に思っていると、フェルミアが答える。


「理由なんてないさ。邪悪なものが何かを判断して動いているとは思えない。手当たり次第に物を壊し、人を殺しているのだ」

「そんな……」


 メレンケリは口元を手で押さえた。


「しかしその大蛇を擁護するわけではないが、奴も苦しんでいるのだ。人の負の心をその内に潜めていてそれが荒れ狂っているのだろう。それ故に何かに当たり散らしたり、人を苦しめたりすることでひとときの安らぎが訪れるのだ。止めてくれるのなら、止めてほしいと思っているだろうよ」


「だがそんなこと、奴を許す理由になんてならないだろう」


 マルスが言うと、グイファスが同意した。


「その通りです」


 金色の瞳が、フェルミアを捉える。


「奴を許す理由にはならない」


 すると、フェルミアは肩をすくめた。


「誰も許せなんて言っちゃいなよ。私は理由を聞かれたから答えただけだよ。もっとも推測でしかないけれど。それよりも、グイファス」


「はい」


「あんたがここに来たのは、奴を封印する手段を手に入れるためだろう。暴走を止めるためにね。だが、頼みの綱だった封印の石はここにない。だから私はメレンケリに提案したんだ。奴をお前の力で葬り去ってはどうかとね」

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