第52話 見透かされていた心
「さて、どこから話そうか。いや、お前は何が知りたい?」
「あ、私……私は――」
そう言って、メレンケリはグイファスを見た。ここに来たのは「封印の石」についてまじない師から聞くためである。それよりも自分が聞きたかったことを先に聞くわけにはいかないと思ったのだが、グイファスはメレンケリに手を差し出すようなしぐさをした。「先にどうぞ」ということだろう。
メレンケリは悩んだが、彼が気にしていない風に笑うので、それに応えるように頷き、フェルミアに尋ねた。
「この力のことについて話をお聞きしたいです」
「具体的には?」
「この異能が、どこから来たのか、についてです」
「それはガイスは話さなかったか?」
「父はまじない師のあなたに聞け、と言いました」
「ふーん……そうかい。話すのはいいけど、そもそもメレンケリは自分の力についてどれくらいのことを知っているんだい?」
「私が知っていることは『触れると石になること』、『必ず子供に継承されるもの』、そして最近知ったことですが力が継承されると『前の持ち主から力がなくなる』という、大きく三つのみです」
「なるほど……」
メレンケリは膝の上で手を握ると、フェルミアの方を向いた。
「私は父からこの右手の力について何も聞いて来ませんでした。そして本当に最近になって、呪術師の方の存在を知って、この力をなくしてもらおうと思ったんです……。今の『石膏者』の仕事が嫌だったから……」
「メレンケリ……お前、やっぱり……」
メレンケリがマルスに視線を向けると、彼は心配そうに見ていた。
「すみません、マルスさん。本当は辛かったんです。『石膏者』の仕事なんてしたくなかったんです。でも、父から言われたことでしたし、兄のトレイクもいつも私を見て眩しそうにしていましたから……。何と言うか期待を裏切りたくなくて、ただただ取調室の隣に立って必要な時に罪人を石にしていただけなんです」
「……」
「それに、あなたに言ったら心配をかけてしまうと思ったんです。心配をして変な気遣いをさせてしまうと」
「そんな――」
「それに」
メレンケリはマルスの言葉を遮るように言った。
「それにきっと兄に言ってしまうでしょう? 上官にも相談するかもしれません。あなたは優しいから、きっと私のことを案じて色々気を回すだろうと思ったんです。でもそれは私が望まないことでしたから……だから言いませんでした」
「……」
マルスは初めてメレンケリの心の内を見た気がした。『石膏者』としての仕事をした後の彼女はいつも辛そうだった。だから励ますことが出来たらと思い、話を聞いていたつもりだった。もし辛いというのなら、自分が何とかして守ってあげようと思っていた。そして彼女が言う通り、身内にも相談するつもりでいた。
(全て見透かされていた……。そしてそれは彼女が望まぬことだった、か)




