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第43話 交渉

「まじない師、か」


 次の日、早速グイファスにまじない師の話をした。

 父から地図の写しももらったので、行くことができることも伝えた。


「どうかしら。呪術師とは違うみたいだけれど、私のこの手袋を作ったのはその人みたいよ」


 グイファスは少し考えると頷き、メレンケリに向き直った。


「その人はこの国ではまじない師と呼ばれているのだろうけど、多分サーガス王国で言う呪術師のことだ。ぜひ、会ってみたい」


「そう。それなら、行ってみましょう」


 メレンケリが簡単に提案すると、グイファスは頷いたが困った顔をしていた。


「どうかした?」


「まじない師に会いに行くのはいいが、私は目的を果たすことが出来るだろうか」


 グイファスが懸念するのも無理はない。彼は元々犯罪を犯して捕まっている。そして疑いがまだかかっているからこそ、メレンケリを監視役として傍に付け、警察署で《《彼が動くのを待っている》》のだ。

 だが、グイファスの目的が分かってしまえば、彼は取り押さえられる可能性もある。それを彼は懸念しているのだ。

 だがそれについて、メレンケリはすでにリセムスに相談していた。


「問題ないわ。それについては、信頼できる人に話をして対策をしてあるから」

「そうなのか?」

「ええ」

「……分かった。君を信じよう」


 グイファスは金色の瞳でメレンケリを見た。彼女はそれを受け止め頷く。

「出発は明日。北の山へ行きましょう」


 メレンケリはリセムスとのやり取りを思い出す。


――――――


「まさか、大蛇が国を滅ぼそうとしているなんてね……。まるでおとぎ話みたいだ」


 メレンケリはガイスから話を聞いた翌日に、リセムスに「話がしたい」という旨を伝え、一時的に監視を別の者に交換してもらった。


 そしてリセムスの執務室で、これまでのことを説明した。

 サーガス王国のこと、グイファスが探している封印の石のこと、まじない師のことについてである。


 そして一通り話し終えると、リセムスは神妙な面持ちをし、「おとぎ話のようだ」と呟いたのだった。


「私もそう思います」


「それで貴族の屋敷に侵入したのは、『封印の石』を手に入れるため、か。理屈は確かに合っているけど、これをどう上に報告すべきか……」


 メレンケリは、上司の気持ちを察して表情を曇らせる。


「はい……この話を上層部が信じるのは、難しいかもしれません」

「でも、アージェは信じているんだよね? だから私に話している。違う?」

「そうです」


 メレンケリは頷いた。


「もし、彼の言っていることを否定してしまったら、私のこの手の力について説明がつきません」


「確かに、アージェの力は不思議なものだ。言われて初めて気が付くなんて、それくらい私たちの仕事の中で当たり前になっているんだね」


「大尉がそう思って下さって、安心しました」


 メレンケリは少しだけ顔を綻ばせる。それを見たリセムスも、笑みを返した。


「私が否定するかも、と思っていた?」

「少し心配はしていました。信じて下さるとは思っていましたけれど、正直確信はありませんでしたから」

「そっか。そうだよね」

「だから、安心いたしました」

「うん」


 リセムスは頷くと、彼女に尋ねた。


「けれど、まじない師がどこにいるかは分かるの?」

「父に教えてもらいました。北の山に住んでいらっしゃるようです」


 するとリセムスは驚いた様子で、「北の山? あそこに人が住んでいるの?」と尋ねた。


 そう思うのも無理からぬことで、「北の山」はメレンケリの家がある丘のさらに北にある山である。山菜やきのこが取れる場所なので、しばしば人が出入りしているが、山の中腹から急に傾斜がきつくなるので、そこからあまり人が入らない。


 もし、人が住んでいるとしたら、きのこ狩りをしている人たちが気づいているだろうが、そういう噂は一つとして聞こえてこないところからすると、まじない師が住んでいるというのは中腹より上である可能性が高い。


「はい。父はそう申しておりました」

「あまり人と付き合いたくないのかな?」

「きっとそうだと思います」

「そっか。どちらにせよ、北の山にいるんだったらそこに行くしかないよね。――しかしそうなると、問題はグイファスをどうやって連れ出すかだなぁ」


 メレンケリは頷いた。


「はい。話だけなら、私一人がまじない師の元へ行けばいいのだと思います。しかし、グイファスはその人に頼んで、『封印の石』を融通してもらわねばなりません。それは私には出来ないことかと思います」


 山登りはしたことがないので、ちゃんと辿り着けるのか心配はあるが、それでもまじない師に会うという目的があるだけで、何でもやってやろうという気になる。


「そうだね。まじない師の人がどんな人かは分からないけれど、やっぱりサーガス王国のことは、サーガス王国の人間が何とかしないとね。私たちにはどうしようもないことだから」


「はい」

「何かいい案はないものか……」

「そうですね……」


 二人が神妙な面持ちで思案していたときである。リセムスの部屋に、ドアをノックする音が響いた。

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