第3話 「イーガルド・フォー」と異国からの侵入者
「軍事警察署」は、メレンケリが働いているところを本部とし、各地に点在している支署を「警察署」、国境付近を守っているものたちのことを「国境の番人」と呼んで区別している。
「警察署」は主に国内で起きたものを取り扱っており、普段は街の警備を行っているのが、それよりも軍事警察署が注力しているのが国境の警備であり、それらを担っているのが「国境の番人」である。
ジルコ王国の北と東には、山脈や大きな川があり、この地形によって他の国の侵略を防ぐことが出来てはいる。しかし草原が広がる南は、その地で生活している遊牧民族がおり、西に至っては大国サーガス王国があるため、そこを守る者達が必要なのだ。そのため国境を接しているところでは、いつも緊張感が漂っている。
国の境では遊牧民族の侵攻もたまにあるが、それよりもサーガス王国からの不法入国者が後を絶たない。「サーガス王国での働き口がない」とか、「サーガス王国に恨みがある」と言ってジルコ王国に入り込む者たちがいるのだ。
サーガス王国は、元々小さな村々が集まって大きくなった国のため、貧富の差や差別が激しいと言われており、その社会の底辺にいる人々は藁にも縋る思いで、危険を冒してでも国境を渡ろうとする。
しかしジルコ王国とサーガス王国は、「市民が国境を越えるための協定」を結んでいない。
これは過去に、二つの国が戦争した経緯があるせいなのだが、それ故にどんな理由であれサーガス王国からジルコ王国へ入った者は、全て不法入国者となる。
ジルコ王国の中には、不法と分かっていながら金を稼ぐためにサーガス王国の人間を就労させている者もいるが、本来サーガス王国の者はこの国で就労は愚か、住居を得ることすら出来ない。それ故に上手く街のなかへ入り込んだとしても、捕まるのがオチである。
ジルコ王国は他国からの侵入を強く警戒している。そのため、どんな理由であっても不法入国した者は全員、メレンケリがいる軍事警察署の本部に連れていかれ、取り調べと言う名の「尋問」を受けることになるのだ。
そして軍事警察署は、ジルコ王国に危害が及ぶと思われるものを排除する役割を担っているため、この国で他国の者が何かをしようものなら、場合によって消さなければならない。
その「消す」行為に、メレンケリの力はとても有効なのだ。
痕跡を残すこともなければ、どこからか批判があっても否定することができる。
アージェ家にしか受け継がれない、秘密の力。
それはこのジルコ王国を守るために、大いに役に立っているのである。




