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第25話 (後編)「石にする」と言い換えているにすぎない

「まず、誰かと仕事の辛さを分かち合えないこと。普通、人は辛いことを分かち合って生きて行くんだ。だから相談もするし、愚痴も言う。聞く方は少し大変だけれど、言った方は案外すっきりするものだ。だけど、君の場合、他にその力を持っている者もいなければ、『石膏者』という仕事をしているものもいないのだろう? だったら、それは辛いに決まっている」


「……他には?」


「『君にしか出来ない仕事』というのは聞こえがいいかもしれない。しかし石にしてしまったら、二度と元には戻らないというのは、中々に大変なことだ」

「……」

「君は『石にする』という言葉で惑わされているのかもしれないが、人の人生を―……」


 グイファスは何を思ったのか、そこで言葉を止める。だが、メレンケリははっきり言って欲しかった。そのため催促する。


「人生を、何?」


 グイファスは迷った。だが結局、その言葉を口にした。


「一瞬にして終わらせている。つまりは人殺しをさせられていることに他ならない。君はそれを知らぬふりをし続けてきた。それは自分のためでもあるし、周りもためでもある。だから、酷な仕事だと言った」


 メレンケリは彼から視線を逸らす。目を細め、そのまま閉じた。

 グイファスの言い分は的を射ている。本当はメレンケリも分かっていた。しかし、ずっと気づかないふりをしていた。


(そうね。『石にする』というのは言葉をすり替えただけで、私は人を殺めているのよ。だから怖いし、辛い。本当はこの仕事が……大嫌い)


 しかし、この手に力がある限り『石膏者』からは逃れられない。

 故に、心の中ではずっと誰かに責任をなすり付けて来た。



 ――私の意志で容疑者たちを石にしているわけじゃない。上の判断で「やれ」と言われたからするのであって、そこには私の意志はないの。



 そうやって、自分は別の角度で見たら「被害者なのだ」と言いたい気持ちがあった。こんな酷い仕事をさせられている被害者なのだ、と。


 だが、それがグイファスの監視する仕事を任されたことから、責任がメレンケリの手に握らされてしまった。


 リッチャーは「メレンケリの判断でグイファスを石にしていい」と言った。それは軍人の誰からの判断も得ず、彼女自身が判断しなければならないということであり、責任も全てメレンケリにあるということだ。


(だから余計苦しくなっちゃったのよね……)


 兄のように人を笑顔にする仕事だったらどれほど良かっただろうか。


 しかし自分が持っている力は、人の顔を苦悩に歪ませるばかりだ。


 容易に近づくことが許されないせいか、畏れられ、重宝されているような気がしているが、それはメレンケリが求めたものではない。生き生きと働く兄を見て余計にそう思ってしまったし、グイファスを任されたときから逃れられない責任にどこかで苦悶していたのだ。



 ――私は言われた通りに人を石にすればいい。



 そう思うようにしなければ、この仕事はできない。

 メレンケリは頷いた。


「ええ……私は何人もの男を殺してきたのよ。石にしているなんて……都合のいい解釈だわ。私はあそこで、人を殺しているのよ……」

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