第13話 留置所
メレンケリは管理室から、グイファスが入れられている牢の鍵を借り、留置所の管理者に牢の場所を聞いた。どうやら彼は、ここの一番奥にある半地下になっている場所にいるようである。
メレンケリは意を決し、そこへ向かうことにした。
(さすがに殺風景ね……)
留置所の廊下は初めて通ったが、見ると同じ形をした沢山のドアが廊下の両脇に等間隔で並んでいる。この一つ一つの部屋に、被疑者が入れられているのだろう。扉同士の幅はそれなりに空いているが、部屋の中はきっと狭いに違いない。
「……」
メレンケリは出来るだけそちらに視線が行かないよう、まっすぐ前を向いて歩いた。
一番奥に向かうと、半地下へ向かう階段がある。メレンケリは管理室から鍵と一緒に借りてきた明かりを掲げそこを降りると、再び廊下が目の前に現れた。
「まだ、続くんだ……」
メレンケリは明かりで足元を照らし、気を付けながら歩を進めていく。薄暗くて辺りが良く見えないのだ。
「……」
しかし、歩を進めていく内に目が慣れ、なんとなく半地下の様子が見えて来た。
そこは地上とは打って変わり環境が悪く、奥に行けば行くほど劣悪になっていく。闇は深まり、壁の土はむき出し。足元のコンクリートは雑な仕事で作ったせいか、ひび割れている。そして、どこからか雨漏りをしている音がしていた。
(でもこれが、刑を待つあの男に相応しい場所、ということなのよね……)
グイファスと言う男がここに入れられたのは、それ相応の罪を犯したから。メレンケリはそれを己に言って聞かせ、彼に何を言われても気持ちが揺れ動かないよう、事前に心を固く閉ざす。
(あそこだ)
ようやく辿り着いた牢屋。
清潔とは言い難く天井が低いその場所で、片膝を抱えて座るグイファスの姿があった。両足には鎖が付いており、抜け出せないようになっている。ここで唯一の慰めになる物は、外の空気が入る空気穴から入るわずか日の光くらいなものだろうか。
グイファスは眠っていたようだったが、彼女が掲げた明かりに気づき目を覚ました。
そしてこのような殺風景な場所にメレンケリが現れたからだろうか。グイファスは、不思議なものを見るかのように、金色の瞳を大きく見開いた。
「君は……」
「昨日はどうも」
メレンケリは、グイファスを見下ろして素っ気なく挨拶をした。
「確か、メレンケリと言ったね」
グイファスの声は、取り調べを行っていた軍人たちの前とは全く違った。柔らかく、爽やかな風が吹くような声。それを不思議に思いながらも、メレンケリは表面上は淡々と答える。
「ええ。そうよ」
「石にする力を持っている」
「その通り」
「私を石にするつもりで来たのかな?」
グイファスが真剣な表情で、メレンケリを見つめた。
「違うわ」
「じゃあ、何のために?」
「仮釈放をするため」
グイファスは驚いていた。
「仮釈放?」
「ええ」
メレンケリはポケットから鍵を取り出すと、鉄格子の鍵を開けた。
「その代わり、私が監視として付きます」
「……なるほどね」
メレンケリは、グイファスに繋がれた足枷も外すため慎重に近づく。するとそのとき、彼からは土と血の臭いがした。メレンケリは思わず息を止め、さっと彼の足かせを外すと、すぐに距離を取った。
「あなたは賢いようだから分かっているでしょうけど、逃げようとしても無駄だから」
グイファスは金色の瞳をすっと細める。
「分かっているよ。何かあれば、君に石にされてしまうということだろう?」
「そうよ」
足枷を外されたグイファスは、座ったままでぐっと上に手を伸ばし、そして立ち上がった。だが天井が低いせいで、中腰になってしまう。
「大人しく君に従おう」
メレンケリはじっと彼を見つめ、そしてグイファスに牢屋から出るように言った。
「では、こちらへ。あなたが泊まる部屋を案内するわ」




