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第11話 リセムス・ハルカ大尉

 メレンケリは軍事警察署に出勤するとすぐに、上司であるリセムス・ハルカ大尉に呼ばれた。


「すまないね、来て早々呼び出してしまって」

「いいえ」


 リセムスは小さい執務室へメレンケリを招き入れた。

 彼の部屋は、壁に設置された本棚にぎゅうぎゅうと書籍が詰め込まれており、あるものは入りきらず床に積み重なっていた。そんな状態の部屋のどこから取り出したのか、彼は簡易椅子を用意してくれたので、彼女はお礼を言いながらその椅子に座る。


「話は聞いたよ。リッチャー大佐が君の家に乗り込んだって?」


 リセムスは物腰の柔らな、ほっそりとした体型の三十代前半の男である。その見た目通り戦闘に向いていないが、事務的な作業が早く、机上にある仕事を片付けるのが得意だ。また、出自も軍事警察署にしては珍しく子爵の出身である。


 だからだろうか。軍人にありがちな威圧感がない。お陰で、メレンケリもこの上司には素直に話ができる。


「はい。急に訪問されました」

 するとリセムスはため息を吐いた。

「ひどいね、それ。礼節を欠いている。部下だからって、連絡もなしに行くなんて」

「正直、困惑しました……」

「分かるよ。頼んだ内容も問題だらけだしね」

「大尉は私の仕事の内容をお聞きになっているのですか?」


 リセムスは肩をすくめる。

「大まかなことだけさ。でも、アージェにグイファスの面倒を押し付けたんだろうなってことだけは分かった」

「……やっぱり、押し付けられたんですね」

「彼が何をしても答えないから、苦肉の策だったんだろうけどね」

「でも、それならば何故彼を殺さないのですか? いつもだったら、こういう場合私の力で石に――……」


 そう言って、メレンケリは項垂れた。

 自分の言っていることが苦しい。人を殺したいわけではないが、だからと言って犯罪者を監視しなければいけないことも納得できない。


 リセムスはメレンケリの様子を見つつ、彼女の言葉に頷いた。


「僕もそこが引っかかていてね。今までのような案件だったら、軍事警察署では彼を石にしているはずなんだ。だが、今回はそうさせない。グイファスが《《やろうとしていたこと》》を探って欲しいと言っている」


「宝石を盗もうとしたんじゃないんですか?」


 その問いに、リセムスは唸る。


「容疑も貴族の屋敷への侵入と窃盗未遂なんだけどね。何なんだろう」

「それなら、彼をかくまっていた誰を探したい、とか?」


「いや、それなら尚更アージェの力は不要だろう。何を言っても答えない男だ。自分を助けた者のことを白状するとは思えない。だったら、地道にこの街を調べた方が賢明だろうし、それはグイファスがやろうとしていたこととは結び付かないよ」


「では、なぜ……」

「知りたいよね……。上の人たちは彼の何を知りたいと思っているんだろう。アージェに任せたことで彼は本当に逃げるんだろうか。策が安直なような気もするけど。――あと、アージェ」

「はい」

「調べろって言ってるわけだけど……本当はやりたくないよね?」

「……はい」

 リセムスに尋ねられメレンケリは正直に頷いたが、言葉を続けた。

「でも、断る余地もないことも分かっています。こんなものを渡されました」


 そう言って、彼女はリセムスの前に書状と許可証を出して見せる。彼は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「こんなものまで用意していたのか……」

「……はい。あの、大尉」

「うん?」

「私はこれから何をすればよいのでしょうか。グイファスの監視役として」

「アージェ……」

「ここまで用意されたら、やらないわけにはいかないでしょう」

「……」


 リセムスはメレンケリをじっと見て、そして覚悟を決めたように言った。


「……まずは留置所へ行って、グイファスを軍人用の宿舎に移動して欲しいそうだ。彼の為に用意した部屋があるのは番号G1の宿舎。部屋は三階の303号室。頼めるか?」

「はい。分かりました」

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