第259話 新メンバー
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新部隊設立。
特殊選抜部隊は軍の中でも特別な立ち位置になる。正規の部隊にはなるが、独立組織のような側面がある。基本的には上層部からの命令に従う形だが、独自に動けることも多い。
そして、なぜ特殊選抜部隊が設立されたのか。それはやはり、これからの時代において魔術を使用した大規模な戦争が行われると予想しているからだ。
コード理論。
今まで魔術とは、ルールのない無秩序なものだった。それは魔法、超能力などと呼ばれそこに理論などありはしなかった。ただ漠然と才能のある人間だけが使える特別なもの。
しかし、コード理論の体系化によってその無秩序なものが台頭することになった。もちろん才能は必要ではあるが、今まで以上に魔術を使用できる者が増えたの事実。
それをインフラの整理など生活に役立てるのは当然だが……やはり、人間の業を避けることはできない。
闘争。
それはどの時代であっても、起こり得るものである。人は常に戦いを求めているわけでは無いが、火種はどの時代であっても存在する。そしてそれは、現代で言えば魔術……ということができるだろう。
今まで特別なものだった魔術が、多くのものが使えるようになり、さらには魔術は進歩した。それこそ、一人で百人、いや千人を相手にできるほどの魔術師がいるほどに。
だからこそ軍は、来たるべき時に備えて準備をしていたのだ。
「正式に特殊選抜部隊が発足することになった。まだメンバーは少ないが、これからよろしく頼むよ」
特殊選抜部隊のメンバーが、ヘンリックの執務室に全員揃うことになった。今日は顔合わせということで、このあと全員で食事に行く予定になっている。
「さて、今後はメンバーも増えていく予定だがしばらくはここにいる人間たちでこの部隊は構成される。そこで最後のメンバーを紹介しよう。少尉自己紹介を」
「はい」
促されて全員の前にやってくるのは、精悍な顔つきをした男性だった。その甘いマスクから女性に人気はかなりある。実際に、軍の中には彼のファンがいるとかいないとか。
全体的に爽やかな印象であり、彼は前に出てくると自己紹介を始める。
「ハワード=ケネット少尉であります。と、堅いのはここまでだな。俺のことは気安く、ハワードと呼んでくれ。そこの天才三人も、それで良いぜ?」
微笑を浮かべて、その白い歯が輝く。
この部隊にはヘンリックとデルクがいるが、その中でもハワードは爽やかという一点に尽きる。その顔立ちも女性受けするのは当然。
キャロルは彼の笑みを見ると、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「うわ〜っ!! めっちゃイケメンだねぇ〜☆ 私はキャロキャロだよ〜☆ よろしくね、ハワードちゃんっ!」
「ははは……十六歳の子供に、ちゃんづけされるのか。しかし、それもよし! ははは!!」
ハワード=ケネット。年齢は二十三歳。士官学校を卒業して一年が経過している。そんな彼がどうしてこの部隊に配属されることになったのか。それはもちろん決まっている。
彼が軍人として優秀だからだ。
「ふふ。すげーイケメンがきたが、どうやら魔術の腕は立つようだな」
「リディア。こそこそと休暇中に情報収集をしていたようだが、まさか……」
「そのまさかだっ!! ハワード! 私はお前に決闘を申し込むぞ! この部隊で誰が最強なのか、教えてやろう!!」
急な展開ではあるが、この場に驚きはなかった。アビーとフロールはため息を漏らすが、その他の人間は面白そうだなと思ってニヤリと笑う。
「お、お前があの超天才魔術師か」
「どうやら、私の噂は聞いているようだな?」
歩みを進めていくと彼の目の前に立つのだが、視線は明らかに挑発しているようなものだった。
「もちろん。魔術の歴史が始まって以来の、超天才魔術師だろ?」
「……超天才魔術師?」
「あぁ。ただの天才じゃ無いって聞いてるぜ?」
爽やかな笑顔でそう言われるので、リディアはニヤァと笑うのだった。
「ふふ。ふはは!!! よく分かってるじゃないか! それで、私と戦う準備はいいのか?」
「もちろん。エインズワース。お前が仕掛けてくるのは、俺も分かっていたからな」
バッと急に軍服を脱ぎ去ると上半身裸になる。それはまさに、鋼の肉体。弛まぬ訓練によって構築されたその体は、圧倒的な筋肉を有していた。
まるで彫刻のように深く刻まれたその筋肉は、彼の努力を反映している。
「おぉ! 流石だな、ハワード!」
「デルク……お前には負けるが、俺だって努力してるんだぜ?」
ハワードとデルク。階級は違うが、二人は友人であり筋肉によって結ばれたソウルメイトである。その筋肉は互いに共鳴しているのか、大胸筋が反応していた。
「ほぅ……どうやら、この部隊に入るだけの筋肉は有しているようだな……」
じっとその筋肉を見つめる。
決してこの部隊の採用基準は筋肉などではないが、リディアもまた筋肉を愛する人間の一人。ハワードの努力を認めているようで、ゴクリと喉を鳴らす。
「お二人とも、執務室で暴れるのはおやめくだ──」
と、フロールの言葉を聞くことなくリディアは一気に加速。そのまま勢いをつけて、ハワードへと向かって行った。
あまりの速度に全員が彼女の移動に気がつくことができなかった。そう……ハワードを除いては。
「おっと。スゲェスピードだな」
「な……っ!!? 私のスピードを見切っているだとっ!!?」
それはリディアにとって初めての経験だった。彼女が胸板に目掛けて放った拳は、ハワードの右手の中に包み込まれていた。
内部コードによって身体強化をしているにもかかわらず、彼はリディアの攻撃を受け止めたのだ。
「ふふ。俺だって、伊達にこの部隊の所属じゃない。近接戦は得意だぜ?」
リディアを煽る。しかし流石にそれからは、ヘンリックが静止するように声をかける。
「二人とも。熱くなりすぎだ。そこまでにしておきなさい。それと、エインズワースはもう少し落ち着くといい」
「ちえー。くそ、また今度やるしかないかー」
「俺はいつだって受けて立つぜ?」
上腕二頭筋と大胸筋をパンプアップさせると、彼は再び爽やかな笑顔を浮かべる。
「はぁ……この部隊には変人しかいないのかしら」
「中尉。それには自分も同感です」
この部隊の良心であり、常識人でもあるのはフロールとアビーだけだった。彼女たちはこれからもっと大変なことになるのだろうとすでに予想している。
「うんうん。しかし、相変わらずいい筋肉だね」
「恐縮です。少佐殿」
この部隊の男性陣は全員が筋肉の虜であり、そこにリディアも加わるとなれば収拾をつけるのはフロールとアビーしかいない。
キャロルに至っては、「うわー! 筋肉すごいねーっ!」と騒いでいるだけだった。
こうしてついに、特殊選抜部隊が正式に発足することになる。
改めてお伝えしておきます。
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また書籍版第1巻が発売中なので、続刊のためにも是非ともよろしくお願いします!!




