↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/355

第199話 優勝候補


 ついに大規模魔術戦《マギクス・ウォー》が開幕となった。試合も順調に消化されていき、まもなく各リーグの上位チームが確定する。


 そんな中で、この大会で優勝候補と言われているチームが一つあった。

 

 それはチーム:フォルストだ。


 全戦全勝。また、試合もこれまで一つも時間切れまで戦ったことはない。ほとんどの試合を、第三ポイントで終わらせている。つまりは、完封試合ということだ。


 ルーカス=フォルストとエヴィの前線。さらには、アルバートは後方からの魔術支援に特化しているが、超近接距離《クロスレンジ》での徒手格闘戦も難なくこなす。


 全てのバランスがかなりの高水準で整っている。


 それが、チーム:フォルストであった。


「よし。今回も完勝だね」


 静かに納刀。そして、カフカの森の中にサイレンの音が響き渡る。


「勝者はチーム:フォルスト」


 そのアナウンスを聞いて、ルーカスの周りにエヴィとアルバートがやってくる。


「やったな」

「おう! 今回も完勝だなっ!」


 二人はコツンと互いの拳を合わせると、ルーカスとも同じことをする。


 今回の試合もまた完封。全ての拠点でポイントを取り切った。相手には、一ポイントも与えていない。


 そもそも今回の予選はその性質上、完封試合をすることは限りなく難しい。それは、次の拠点へのローテーションがあるからだ。


 そのため、どれだけ戦力がかけ離れていても、ゼロポイントということはほぼあり得ない。


 だが、拠点ではアルバートが待機して、そのサポートをエヴィがする。


 一方のルーカスはたった一人でローテーションをして、次の拠点を一人で防衛。そこから二人が合流して、同じように試合を展開していく。


 一見すれば、ルーカスの実力が目立つが、大会ではチームとしての完成度も高く評価されていた。決してルーカスだけのワンマンチームではない。


 エヴィとアルバートもまた、今回の大会でその評価を確実に上げていたのだ。


「さて、戻ろうか。今日も反省会だ」

「分かりました」

「反省会か……今回は俺がちょっとやらかしたからなぁ〜」


 エヴィが頭を掻きながら、そう言葉にする。


 確かに完封試合ではあるが、まだまだ改善点は存在する。今回の試合では、エヴィが前に出過ぎたせいで、ルーカスがサポートに回るしかない場面があった。


 彼はその性格もあって、つい熱くなってしまう。


 頭では冷静に努めるべきだとはわかっているのだが、内部《インサイド》コードで強化した身体は止まることはなかった。


「そうだね。エヴィが前に出過ぎたせいで、僕がサポートするハメになった」

「う……」

「それも含めて、色々と反省点を上げよう」


 三人はそのまま、カフカの森の外へと向かっていく。


 その風格は、もはや王者のもの。


 常勝のチームとして、彼らはこれから先も戦い続けるのだった。



 ◇



「終わったか」


 チーム:フォルストの試合を、三人で観戦していた。モニター越しにはなるが、その卓越したチームワークはよく理解できる。


 俺たちと同様に、森での戦いをしっかりと熟知している。


 それは三人の立ち回りを見れば明らかだった。


 おそらくは、間違いなく本戦へと駒を進めるだろう。


「強いわね」

「えぇ。でも、わたくしたちも負けてませんわっ!」


 アリアーヌはそういうが、実際のところは……五分五分といったところだろうか。いや、ルーカス=フォルストだけならばまだしも、アルバートとエヴィの完成度がかなり高い。


 チーム:オルグレンには欠点はない……と言及したいが、実際ネックになるのは俺の存在だろう。それは全力を出すことができないからだ。


 厳密に言えば、全力を出すことは不可能ではない。しかしそれは、かなりのリスクを伴ってしまう。できれば、基本的な魔術の使用は控えて、内部《インサイド》コードを主軸にして戦っていきたい。


 予選ではそれで通じると思っている。しかし、本戦ではさらなる猛者たちが待っている。チームとしての連携も、予選の相手とは比較にならない。


 それに、本戦はリーグ戦ではなく、トーナメント形式だ。敗北してしまえば、そこで大会は終了となってしまう。


 力を使うにしても、限定的な場面にしたい。


 それこそ、自分の能力が遺憾なく発揮できるような……と、考えていると目の前にアメリアの顔が映る。


「レイ。どうかしたの? 考え込んでいるみたいだけど」

「そうだな。二人には共有しておこう」


 そして俺は、その場で自分が考えている懸念について話した。すると、声を上げたのはアリアーヌだった。


「大丈夫ですわっ! 私たち二人でサポートしますわっ! それに、いつまでもレイに頼ってばかりはダメだと思いますの」

「アリアーヌの言う通りね」


 アメリアもまた、その場で軽く頷く。


「レイはいつも抱え過ぎだと思うの。今回の大会は、レイは確かに頼りになるわ。私とアリアーヌはあなたのことを信じてる。でもね、人を頼るって恥ずかしいことじゃないと思うの。それは、レイがあの時に教えてくれたのよ」


 少しだけ顔を赤く染めながら、アメリアは恥ずかしそうに言葉にした。彼女が言っているのは、魔術剣士競技大会《マギクス・シュバリエ》の時のことだろう。


 あの時は俺も、色々と葛藤していた。


 こんな自分が人の心に触れていいのかと。

 

 誰かに寄り添って生きてもいいのかと。


 そう思っていたからだ。


 しかし、アメリアと出会い、みんなと出会い、少しずつ変わってきていると……思っている。


 あの時の行動で、アメリアにそう言ってもらえるとは……本当に俺は、人に恵まれている。


「ありがとう。アメリア」


 微笑む。


 きっと今は自然な笑みを浮かべることができているだろう。


「そうですわよ、レイ。あなたは私にだって、たくさんのものを与えてくれました。けれど、レイも何か思うところがあるのでしたら、教えてくださいまし。わたくしたちは、チームなのですから」


 アリアーヌもまた真剣な表情でそのように語る。


 そして、隣に座っているアメリアがそっと俺の手に触れてきた。


「レイ。大丈夫よ。私たちが、あなたを支えるから。だから、絶対に優勝しましょう」

「そうですわっ! わたくしたち乙女に任せてくださいましっ!」

「あはは……アリアーヌの言う乙女は、ちょっとよく分からないけどね」


 いつものようなやりとり。そんな些細な会話に俺は、幸福を感じていた。


 そして、モニターを見据える。そこには、エヴィ、アルバート、ルーカス=フォルストが映っていた。


 あの三人に勝つためにはどうすればいいのか。きっと真正面からぶつかれば、拮抗は徐々に崩れていくだろう。


 だがきっと、俺たちなら勝つことができる。


 アメリア。アリアーヌ。


 二人ともに、その成長をずっと間近で見てきた。


 さらに成長しているのは二人だけではない。俺もまた、成長している。それは精神的な面だけでなく、魔術的な面でも。


 魔術領域暴走《オーバーヒート》は現状この上ないくらいに良くなってきている。俺の魔術領域は、まだ制限されている部分はあるが、以前と比較すればかなり魔術を問題なく使えるようになっている。


 冰剣も数を制限すれば、問題なく使用できるほどには。


「……そうか。いや、二人には助けられてばかりだな」

「そんなことないわよ。レイだって、いつも私を助けてくれるわ」

「そうですわ! でも、わたくしたちを頼ってもいいんですわよ。だって、仲間なのですからっ!」

「あぁ。そうだな。では、今後の話をしよう」


 そうして俺たちは、今後の試合についてミーティングを開くことにした。


 間も無く予選も終了する。


 やってくるのは本選。そこでは、試合のルールも大幅に変わり、戦い方も変化していくだろう。


 だがきっと、やり遂げることができる。


 俺はそう、信じている──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。