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第14話 環境調査部へ行こう!


 実技演習の翌日。俺たちのパーティーはトップで通過したということで、割と話題になっていたのだが……やはりその評価はアメリアに向かっていた。



「はぁ……もう嫌になるわ」

「お疲れだな」

「えぇ……」



 現在、俺、アメリア、エヴィ、エリサの四人で学食で食事をとっている。アメリアも貴族との付き合いに疲れたとのことで、俺たちのところに来たらしい。



「だって、流石ローズ様! しか言われないんだもの。みんなの協力でクリアできたのに、なんだか嫌になっちゃう」

「まぁ……言わせておけばいいさ。俺たちの功績は、俺たちで知っていればいい。だろ?」

「そうだぜ! 俺も別に色々と言われるのは慣れてるからな! 主に、レイのおかげでな!」

「ははは……それは、違いないなエヴィ」

「ふふ、だろ?」

「わ……私も……みんなでクリアできたのが……嬉しかったし……私も役に立てるって……わかって、嬉しかった……!」

「あぁ〜。もう、エリサってば本当に可愛いわね〜」

「うわっ!!」



 隣に座っているエリサに思い切り抱きつくアメリア。


 ストレスでも溜まっているのだろう。貴族間のやり取りは知らないが、きっとアメリアにとって良いものではないということだけはよく分かった。


 俺たちはそのまま、束の間の休息を楽しむのであった。



 ◇



「ふっ……ふっ……レイ、本当にいいのか?」

「あぁ。今が頃合いだろう……ふっ……ふんっ!」

「そうか……ふっ……ふっ……」



 夜。俺たちは寮の一室で互いに声をあげながら会話をしていた。もちろん、ボクサーパンツを履いているだけであとは何も着ていない。こんなほぼ裸の状態で何をしているのか……それは……。


 筋トレだ。


 筋肉を信じ、筋肉を崇めよ、さすれば救われん。


 これこそが師匠の教えの一つでもある。今は衰えたが、当時は師匠も女性にしては異常なほどの筋肉を蓄えていた。俺はその教えを、こうして学生になった今でも実践している。


 そうして俺はあることのために、こうして自らの筋肉を鍛えていた。



「いろいろと見て回ったんだろ?」

「あぁ。でもやはり、選ぶなら……環境調査部と園芸部だな」

「……意外な組みわせだが、俺はいいと思うぜ」



 二人での合同筋トレを終了し、今はほぼ裸のままプロテインを補充する。筋肉には何よりもプロテインだ。


 ちなみに今している話は、部活動である。


 アーノルド魔術学院に限らず、魔術学院には部活動が存在している。俺はそんなことは全く知らなかったが、強制ではないものの、入学してから多くの学生は部活動に精を出すのだという。それは娯楽目的から実用的なものまで、様々だ。


 俺はこの約二ヶ月間は部活動の様子を見に、放課後の時間を使ったりしていた。あまりいい顔をされないこともあったが、こうして俺は決めたのだ。自分が何部に所属するのかを。


 掛け持ちは許されているので、数ある中でも環境調査部と園芸部に決定した。



「俺は普通に入部できたが、レイは苦労するかもな」

「任せておけ。俺はこれでも……これを持っている」



 スッと近くの机から取り出すのは、とあるカード。一見すれば普通のカードだが、それは見るものが見ればわかる代物だ。



「は!? まじかよ!」

「あぁ。実は一年前に取得してな」

「……はは。そりゃあすげぇな。きっと部長も喜ぶと思うが、それは後にとっておくといいぜ」

「どうしてだ?」

「その方が面白いだろう?」

「ふふ、だな」



 互いにニヤリと微笑む。


 そうして俺たちはすぐに眠りにつく。筋肉にとって休息は大事だ。夜更かしなど、もってのほかだからな。



 ◇



「さてレイ。俺はお前を紹介しない」

「あぁそれはわかっている」

「自分の力で切り開く、だろ?」

「俺がいい始めたことだからな。一般人オーディナリー枯れた魔術師(ウィザード)。その先入観を拭うためにも、俺は自分で切り開くさ」

「じゃ、部室で待ってるな」

「了解した」



 放課後。


 エヴィとそう話して、俺は彼の背中を見送った。



「よし……行くか」



 環境調査部に入るには、いろいろとクリアすべきことがある。それに人間同士の付き合いになるのだ。悪い関係は育みたくはない。だからこそ、俺は積んで来た。エヴィと共にこの二ヶ月もの間……な。



「ふふ……俺の大胸筋も笑っているようだな」



 と、自分の大胸筋を触りながら俺は部室へと向かうのだった。



「……頼もうッ!」



 そう言って、コンコンと扉をノックする。部室がある棟にやって来て、俺は『環境調査部』と書かれている部屋の扉の前に立っている。



「……誰だ?」扉を開いて男が尋ねる。

「レイ=ホワイトと申します」

「……例の一般人オーディナリーか。で、何の用だ?」

「入部希望であります。部長」

「ほぅ……俺の顔は知っているようだな」

「は。入るからにはある程度のリサーチはしているので」

「……いいだろう。話は聞いてやる」

「失礼します」


 その場で礼をすると、俺は室内に案内される。


 中にはホワイトボードと、それに各部員が使っているらしきロッカーが存在した。


 そして中には部員がいた。数はそれほど多くはない。エヴィ、部長も含めて七人。俺を含めれば八人がこの場にいることになる。



「さてお前ら、入部希望者だ。こんな時期に……な」



 そう部長が告げると、一人を除いて鋭い目つきで俺を見てくる。


 そこにいるのは筋骨隆々の屈強な男たちだ。


 環境調査部。それは森、山、川、果ては氷河地帯まで冒険をする部活動だ。あらゆる環境を調査するという目的を果たすために、彼、彼女らは日夜環境と戦っている。そうして環境調査をする者のことを総称して、ハンターという。卒業後にはハンターを目指す者もおり、この部活はそういう人間の集まりである。


 ちなみに補足だが、今は女子部員はいないらしい。



「ほぅ……」

「細いようだな」

一般人オーディナリーを考慮しなくても、このバルクはちょっとね……」

「確かに線が細いな……」



 と、部員たちにはそんな反応をされる。もちろんエヴィは何の反応もしない。



「さて、脱げ。まずはそれで見極めようじゃないか」



 黒髪で刈り上げている一番身長が高く、一番筋肉が厚い生徒。それが部長だった。現在は四年生らしく、金級ゴールドのハンター免許ライセンスを持っているらしい。つまりは、金級ゴールドハンター。魔術師の階級と同じで、ハンターもまた階級に分かれている。


 その中でもトップのハンターは日夜この世界を駆け回っているとか……なんとか。



「了解しました」



 俺は脱げ、と言われるのは知っていた。それはエヴィがすでに経験していたからだ。だからこそ、俺は全身の筋肉を鍛えていたのだ。


 俺は躊躇などなく、ボクサーパンツ以外の全てをその場に脱ぎ去った。


 そして自身の身体を見せつける。この筋肉で覆われた圧倒的なボディを。



「……な!?」

「何だ、あのバルクは……!?」

「でかいッ! 着痩せするタイプだったのかッ!!?」

「ほぅ……なるほど」



 部長は驚きの声を上げずに、ただじっと俺を見つめていた。



「レイといったな……」

「はい。部長」

「いい筋肉だ。大胸筋、上腕二頭筋、大腿筋だいたいきん僧帽筋そうぼうきん、バランスがいいが……貴様、やっている側だな?」

「……わかりますか?」

「俺を誰だと思っている。ゴールドハンターだぞ? それは実用的な筋肉だ。決して魅せるためではない。実際に体を動かして身につけた筋肉も含まれているな」

「流石ですね。脱帽です……実は、私の実家はドグマの森の近くでして。よくそこを駆け回っていたのです」



 ニヤリと笑うと、さらに他の部員が反応する。



「なぁ……!? ドグマの森……だと?」

「難易度指定、S級の森だよな!?」

「な……なるほど……それで、あのバルクなのかッ……!」



 そうして部長もまた、ニヤリと笑ってこう告げる。



「いいだろう。第一次試験は合格だ。あとは……実技を見ようではないか」

「は。了解しました!」

「今日は全員でカフカの森に向かう。全員、準備をしろ」

『了解!』



 ということで俺たちはカフカの森に向かうことになった。



 ◇



 八人でカフカの森にやってきた。もちろん俺はまだエヴィとは話をしていない。合格のその瞬間まで、喜びは分かち合わない約束だからだ。



「レイ」

「はい部長」

「あれを見ろ」

「……巨大蛇ヒュージスネークですね。危険度、B級の」

「あれを処理しろ」

「一人で、ですか?」

「そうだ。それくらいの実力はいる。今年はエヴィしかいい奴がいなかったからな。お前には期待しているぞ? そのバルクが偽物でないことを示せ」

「……御意」



 俺はすぐに内部インサイドコードを体に走らせると、そのまま一気に距離を詰める。持ってきているのはブロードソード。一般的な剣の一種だ。そして俺は巨大蛇ヒュージスネークに感知される前に駆け抜けて……一閃。


 その首を薙いだ。


 だがこれで終わりではない。俺はすぐに刎ねた頭を潰すと、そのまま残った胴体の処理に移る。巨大蛇ヒュージスネークの特徴は、頭を落としても動き続けることだ。そのため、油断したハンターがその残った胴体に絞め殺されることもある。



「よし……これでいいでしょうか?」



 すぐに胴体も串刺しにして、その処理を終える。


 頭と胴体。適切な処理をできたと俺は自負する。



「ほぅ……なるほど。ドグマの森での経験は本当のようだな」

「はい。そしてここで、皆さんに差し入れがございます」

「何だそれは?」

「エインズワース式、秘伝のタレです」



 俺はニヤリと笑うと、そのまま他の部員に火を起こしてもらってすぐに調理に入る。胴体の一部をナイフで掻っ捌くと、皮を剥いで、分厚い身の部分を取り出す。それを八人分用意して、そのまま蒲焼の状態にして串に刺して焼いていく。


 その際に使用するのがエインズワースの秘伝のタレだ。


 師匠は料理はできない。が、こういった調味料を生み出すのは天才的だった。俺が調理して、師匠が調味料を提供する。その経験がこうして生きているのだ。



「出来上がりました」

「ほぅ……」

「おぉ!」

「すげぇ! めっちゃうまそうだ!!」


 全員共に、ハンターの端くれ。こうして蛇を食べることに抵抗などないようだった。


「む……!」

「う……うまい!!?」

「何だこれは……ッ!? 悪魔的だぞッ……!!?」


 その反応は予想した通りだった。


「レイ」

「はい部長」

「貴様、もしかして……持っているな?」

「流石の慧眼。実は私も……」



 そうしてポケットから取り出すのは、ゴールドの……ハンター免許ライセンスだった。



「なぁ……!!?」

「部長と同じ、ゴールド……だと!?」

「まさか!? 一般人オーディナリーがゴールドだと!? しかし、それだと得心がいく……このスキルは只者じゃないッ! こいつには確かな凄みが……あるッ!!」



 ニヤリと笑うと、部長もまたニヤリとほほ笑み返してくる。



「そうか。レイもまた、あの課程をクリアしたのか」

「はい。中々に過酷でした」

「俺がゴールドになったのは去年だ。お前はいつ取ったんだ?」

「私も去年です」

「……逸材、だな。ここまでくれば、文句はないな。なぁ、そうだろ……お前たち!」


 部長が声を上げると、蛇の蒲焼を食べているみんなが声を上げる。



「もちろんだ!」

「あぁ! 一般人オーディナリーなんか関係ない!」

「そうだ! そもそもうちの部には貴族もいないからな! それこそ、一般人オーディナリーなんて関係ないぜ!」

「レイ……だったな? よろしく頼むぜ!!」



 どうやら俺は入部を許可されたらしい。



「ふ……お前がこの環境調査部の柱になれ」

「は。謹んで、お受けいたします……」



 恭しく礼をして、ちらっと見るとエヴィもまたグッと親指を立てていた。


 とりあえず、環境調査部には入部できそうだった。


 さて次は女性の花園である……園芸部に向かおうか。

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