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より良き次の世界

 その空間には、クリスタルによって封じられた。正確には、自ら封じられた白いドラゴンが存在している。それを眺めるかのように、目を閉ざした女性は佇んでいる。他には誰もいない静寂の空間の中、非常に長い沈黙が流れているようにも感じられる。


「汝、何故、呼び出した」


 この女性は、エンシェントの分体であり、姿は微妙に透けている。対する白いドラゴンは、フォルフルゴートだ。どうやら呼び出した側である、しかし、何も話す気配が無い為に、問いかける事にしたようだ。更に言えば、その声には若干怒りがこもっている。


「君に、言っておいた方が良いかも知れない事がある。だけど、それは、大きな負担になってしまうかもしれない。何を言っても、世界を守るつもりでいるのか?」


「汝、あるべき姿を、放棄した軟弱者。それが、今更何を? 笑止、我らを、下し、見下げる愚物か?」


 心配するような雰囲気のフォルフルゴートに対し、エンシェントは怒りを滲ませる。完全にすれ違っているようにも見える光景だが、それを収める存在さえもここには居ない。居たとしても、誰が止めるだろうか。


「僕は、それについては何を言うつもりもないよ。ただ、それが今の僕の在り方。他の誰かが〈外部〉を見る事の無いように、守っているんだ」


「詭弁を騙るか、汝の弁解、一滴の雫さえ、腐食する、柔さと知れ」


 呼ばれて来たとは言え、エンシェントはまともに話を聞くつもりは無いようだ。寧ろ怒りを加速させているようにも見える。それを見ても、フォルフルゴートも態度を変える気は無いらしい。ただ、困った様子だけは感じ取れる。


「解った。これ以上何を言っても意味は無いみたいだね。だから、本題に行くことにしよう。その方がいいだろうしね」


「事実、汝は、欠陥」


 エンシェントからの罵倒は止まりはしないが、本当にこのままでは話が進みはしない。それを悟ったフォルフルゴートは強引にでも話を進める事にしたようだ。


「この世界の真実について、どこまで話したら良いのか、迷ってはしまう。ここは逆に聞くべきだろうか……。何を知りたい?」


「否、必要無い」


 だが、これに対するエンシェントの返答は至極単純なものであった。そして、流石にそれを想定していなかったのか、動揺するかのように、フォルフルゴートが微かに動く。


「世界を守る、君には必要な事だと思う。そして、そんな事しなくても……」


「否。我らは世界を守るもの。命を守るもの。あるべき姿であり、汝の失ったもの。故に、必要ない。我は秩序の管理者。整えるものであり、地に根を下ろし、より良き世を思い続ける。それが我らだ」


 それだけ伝えると、エンシェントは姿を消した。これ以上フォルフルゴートと会話する事を拒んだようだ。そして、再び訪れた静寂の中で、ポツリと、一言こぼれた。


「次の世なんて、もう無いんだよ……」

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