4160回目の世界
我らは前の世界のようなことが起きないように、尚更に動くつもりであった。だが、その必要が無いくらいの状況に陥っていた。先ずはイニシエンとメビウスが実質手を組んだ。〈神聖国〉は表をイニシエン、裏をメビウスが担当し、強固な基盤を築いている。そして、あらゆる方法でレアルの行動を制限している。よくやっていると言えるだろう。
だが、我らさえも抑制しようとするのは、間違っているだろう。確かに、手を組むことを良しとはしなかった。正直言えば、悪くは無いと思っているが、我らの在り方として、それで良いのかと、考えてしまう。フォルフルゴートが欠陥を持っていなければ、いや、この欠陥は、かつてドラゴンが変質した為か、どちらにしても、現実を変える事は出来ない。
そうだ、二つほど、気になる事が在る。一つ目はレアルの従者だ。スクラップになったものは〈世界転生システム〉によって蘇る事は無かった。代わりに、ディレイスクラップという従者のようなものが生成されたのだ。あまりにも制御が効かない為、基本的に動きを停止させてはいるようだが、その機械の塊に、見覚えのあるパーツが存在している。
形を変えてもそこに存在しているのは〈魂〉の有無が関係しているのだろうか。だとすれば、これは非常に厄介な事になるだろう。だが、我らも魂には手を出すことが出来ない。レアルが何もしない以上は、どうにもならない事である。おそらく物理的に破壊するのも億劫だろう、魂三つ分の生命力を削りきるのはなかなかに難しいのではないか。
もう一つ、誰が最初に思いついたのか解りはしないが、いつの間にか広まっていた事がある。我らの扱う〈権限〉と人間の使う〈能力〉は根本が違う。だが、それを応用する事は出来ない話ではない。〈シールコード〉というのは〈魔力〉そのものというよりも、単なる命令文だ。それを使って疑似的な〈根源〉を創り出して〈権限〉の扱いを簡略化しているものがいる。
確かに、これは良い考えかも知れない。宣言一つで決められた〈権限〉の扱いが出来るというのはとても簡単と言える。応用的な使い方は出来ないが、そもそもその場しのぎで〈権限〉を扱うなどと、思考回路が焼き切れるようなもの。であれば、その分沢山の宣言を創っておけば良いというだけの話。既に何体かの精霊は行動に移している。特にグラビ、奴はこういう事に目聡い。
解っている。解ってはいる。変わる時が来ているのだと。だが、良い方向に変わる事が出来るのか、それが気がかりだ。我らは愛すべき命を守らなくてはならない。変わるというのが、どれだけの重荷になるだろうか。忘れてはならない、この世界の礎となった命たちを、そして、今この世界があるという事を、我らは屍の山に根を下ろしている。




