表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツチノコ  作者: 無銘
6/14

初めての夜1

夜になった。パチパチと音をたてながら辺りを照らす火の隣で、石を打ち付けて作った打製石器で魚の腹を裂き内臓を取り除く。水でよく血を洗い流し土魔術で作り出したすこし曲がっている棒を、魚を串刺しにし火に近づけて焼く。


(こんな物かな?起きてから初めてやる事ばかりで何だかんだ疲れたよ)


そう、名の無い子供が深く息を吐きながら念話で話し掛けた。


(まぁワシも外に出て来たのは今日が初めてじゃからお互い様じゃよ)


ポメラニアンの様な姿をしたスコールが相槌を打つ。


(そうなのか?そう言えば火を起こしたの初めてだって言ってたか。スコールの事は今まで聞いてなかったけど、スコールは今までどこで何をしてたんだ?)


日が真上にあった時に出会ったスコール。彼は自分の色々な疑問を何事もなく答えてくれたが、今思うと彼自身の事は自分からは聞いていなかった。知っているのは、彼が自慢げに話してくれた神獣フェンリルの息子であることだけだった。


(ワシか?ワシとしては森の奥で子供のお前さんがどうして埋まってたことが気になるが……まぁいいか)


スコールは何故自分が埋まってたか気になる様だが、その前に自身の事を教えてくれるらしい。


(ワシは産まれて5年ずっと父上の縄張りの中で危なげなく過ごしていたんじゃよ。………今の一言でワシの一生が語れるがもう少し掘り下げようかの……そうじゃのう……ワシの母上の話でもしようかの)


そう一言で自身の一生を話したスコールは、それでは味気ないと母の話を語り始めた。


(昼ごろにチラッと言うたと思うが、ワシの母上は魔獣の位は余り高くはないんじゃ。母の種族名は魔獣賢狼、他の魔獣達と比べずば抜けて頭が良く、統率が上手い種族なんじゃ。そのために「ビーストテイマー」と呼ばれる人間達によく飼われておる。ワシの母もビーストテイマーに飼われていた賢狼の一体じゃった。母はいつもの様にビーストテイマーと他の魔獣達と一緒に、増えすぎた魔物供の駆除をしていた。そんな時に現れたんじゃよ……ワシの父、神獣フェンリルが……母達は父の姿を見て一瞬で敵わないと悟り………っと?そろそろ魚が焼けた頃じゃないかの?)


そう言いスコールが魚の方に目を向けた。釣られて自分も目を向けると、魚は火で炙られ白かった身がきつね色に変わり所々少し焦げが付いた。注意を向けた途端魚の焼けた魚の香ばしい香りが鼻を刺激した。頃合いだと思い串に手を取ると、火傷をする程では無いがそれでも熱かった。


(熱ちちち…)


(ほう、中々に美味そうではないか。ワシの分も取ってくれ)


焼けた魚の内二匹を、尻尾を振っているスコールに渡した。焼けたての魚をスコールはハフハフと熱いそうに食べ始めた。


(うむ、自分達で用意した食べ物は格別じゃな!!)


そうスコールが少し興奮した様子で念話を送ってくる。

自分も食べようとするが熱くて上手く食べれない、少し冷ましてから食べようと思っていると、スコールが魚をほうばりながら、さっきの話を再開した。


(何処まで話したかの……あぁそうじゃ、えー母達は一瞬で敵わないと悟った。そうして思考が一瞬止まった次の瞬間母が目にしたのは……苦楽を共にした仲間達の死体じゃった。)


……何か話の流れが変わったな……魚を食べながら聞いていい話なのか?


(仲間の死体を目の当たりにした母は次は自分の番と腹をくくって目を瞑ると、「はぁ…はぁ…久しぶりの女だ…」と言って父が母に覆いかぶさったそうじゃ。そうして交尾をして出来たのがワシじゃの。ワシが出来たと知った他の義母上達は、母を保護して側室に向かい入れられた。その際父は義母上達にカンカンに叱られたらしい、母は父を恨んでいたが今では少しぎこちないが仲は悪く無いの。)


何か、最後が怒涛の展開の話だったな。……それはそうと交尾って何だ?


(交尾って何?)


(……番が子供を作る際に聖獣コウノトリを呼ぶんじゃよ。その儀式が交尾じゃ)


スコールがしまったと後悔した時には質問をされてしまった。何とか考えて答えたが、答えになっていないことを言ってしまった様な気がするスコールだった。


(まぁ産まれてから5年はさっきも言うたが、父の縄張りにいたんじゃよ。その間にワシのユニークスキル図書館(ライブラリィ)で知識を蓄えていたんじゃ)


何でも図書館(ライブラリィ)とか言うユニークスキルのお陰で()()()()の事は難なく分かるらしい。


(ユニークスキルって何?スキルと違うの?)


(ユニークスキルはその者しか持たない希少なスキルじゃ。ただ、魔力を持たない者は大抵持っているそうじゃ)


だそうで魔力を持っているにも関わらずユニークスキルを持っているのは本当に極一握りだそうだ。


(所でいつまで食わずに魚を持って居るんじゃ?)


スコールに言われ気付いた自分は、生暖かい魚をボソボソと食べ始めた

夜はもう少し続きます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ