夜に向けての備え
魔獣コケッコウ
地鶏の様な外見をしていて空は飛べないため魔物や、その他の魔獣達によく狩られている。だが天敵から逃げるために発達した脚から繰り出される蹴りは、打ち所が悪いと大人でも死んでしまうらしい。その他の特徴として繁殖力が高く、人間や人間の近縁種達から家畜として育てられているらしい。
(それで?これからコケッコウを狩りに行くの?)
(いや。今から狩りをすると夜になってしまうのう。別にワシはいいのじゃが、お前さんは夜目が効かんじゃろ?狩りは明日にして今から夜に向けての準備に取り掛かるとしようかの。お前さんを見つける前に川を見つけてるからそこまで向かうとしよう。……と忘れておった。そこの月の雫を摘んではくれんかの?)
スコールは自分を見つける前に、川なる物を見つけたらしくそこまで向かうらしい。しかし何故月の雫を摘む必要があるのだろう。
(何で月の雫を摘む必要があるんだ?希少なんだから大事にしたほうがいいと思うけど?)
(なら土ごとでも構わんよ。月の雫は特殊な魔力を放っておっての、低俗な魔物や魔獣が寄り付かんから夜を安全に過ごせるんじゃよ。それに月の雫も水辺が近い方が過ごしやすかろう)
成る程。だから自分はあんな無防備な状態でも魔物達が襲い掛かって来なかったのか。……そうなると月の雫は自分の命の恩人、もとい恩花だな。
そう感謝しながら月の雫の根を傷つけない様慎重に土ごと持ち上げた。
(……でもそれなら何でスコール近づけたの?)
(月の雫に近づかんのは低俗な魔物達だと言うたろ?ワシは神獣フェンリルの息子じゃ。そのワシが高貴以外の何者でもなかろう。まぁとにかく今は夜の備えをするぞ。まだやってもらう事があるから忙しくなるぞい)
こうして月の雫を持って自分達は川に向かった。
◇◇◇
(さて川に着いたの。今からやることは、薪と食糧の確保じゃ。川で魚を捕まえたいが、手では難しいから捕まえられんじゃろう。しかしワシが魚を捕まえるための作戦を考えた、それに当たってお前さんの魔術を使うからのう。期待してるぞい)
何でも、自分の土魔術でC←こんな型に壁を作り、魚を追い込んでC←この中に入れ最後に蓋をして魚を捕るそうだ。
(魔術何て使ったことないぞ?)
(何、コツを掴めば後はどうにかなるからの。ワシが補佐をしてやるから安心するんじゃ)
スコールが魔力の操作を補佐してくれたからか。何とか土魔術のコツを掴み使えるようになった。
使うイメージとしては土を持ち上げる感じだ。スコール曰く慣れれば地面から離して使えるようになるらしい。
早速川の中で土を使うが、川の流れで土が拐われてしまい上手く出来ない。どうすればいいか悩んでいるとスコールが「土を押し固めて硬くすればいい」とアドバイスをくれた。アドバイス通りにイメージしながらやると、上手く川の中で土の壁を作り上げる事が出来何とか罠を作り上げることが出来た。
川から出ると何やら立ち眩みがした。
(何か……クラクラするんだけど?)
(魔力を使いすぎたかの?どれワシが魔力を分けてやる)
スコールはそう言うと背中に前足をポンっと起き……!?!?!?!?
「ヴォェェエェェエエェ!」
突然背中から得体の知らない不快な何かが流れて来た。そして直ぐさま気分が悪くなり何も出ない筈だが、嘔吐を吐く様になうずくまり、初めての声を絞るように吐き出した。
◇◇◇
罠を設置し終わり、魚が戻ってくる間に薪を集める事になった。
薪は森に枝が大量に落ちているため楽だと思ったら、スコールが(乾いていない)だの(持って来る量が少ない)など五月蝿く、先端が体に刺さるため割と痛い作業だった。
(まぁ夜を越すのにはもう十分じゃろ。日が出ている内に火を起こすとするかの)
スコールがそう言うと何をしたのか薪から煙が出てきくる。そしてみるみると煙の量が増して来て、追加の薪を焚べるとやがて火が着いた。
(こんなものかの。知識としてあったがやるのは初めてじゃったから成功して良かったわい)
スコールは嬉しそうに言った。
(凄いな……これが「火」か……何だかんだ暖かいけど、近過ぎると暖かいというより熱いのか。それにしてもどうやって火を付けたの?)
(何、日の光を魔術で集めて燃やしたんじゃよ。詳しいことは夜に教えてから安心するんじゃ。それよりそろそろ魚が戻って来てるころじゃろ。見に行くとしようかの)
川には魚が戻って来ていた。罠の方に追い詰めたが中々に難しい。魔術で追加の壁を作りつつ追い込み4匹程捕まえる事が出来た。魚を捕まえ川から出るとまた、クラクラと眩暈がして。スコールが近づき前足から魔力を送り……
「ヴォエエエェェェエエ!!」
情けない声が夜の森に響いた