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ツチノコ  作者: 無銘
2/14

世界に一つだけの植物

初めての感覚、初めての音、初めての匂い、そして初めての日の光で目が覚める。


(…………)


()()は確かに生きている。

リズムを刻む心臓、血液を循環させる血管、昔の名残か薄っすらと生える産毛、物を掴むために発達した手、それらがら備わっているため植物ということは無い。

しかし、それは下半身が埋まっていた。

そして何故だか動かないため植物のようだった。


(………)


()()は今の奇天烈な状況で動揺しているわけでも無かった。

動揺するはずがなかった。

何故ならそれが()()だと思っているからだ。


いや普通とすら思わない。自分がこの大地に生えているのは、自分の周りに生えている木々と同じぐらい当たり前のことだから。

だからこうして木々達の葉の間から溢れる日に当たって日向ぼっこするのは当然だ。


自分は他の木達と比べ、姿が違うし、歳もとってないし、背も低くて小さい。


だが、そんなことは些細な事だ。


自分の見える範囲では逆に同じ種類の木が隣合わせという事自体が珍しいくらいだ。そして自分は背が低い木もいるし、自分より明らかに若い若木も居る。


しかし、隣合わせが珍しいだけで同じ植物が居ない訳ではない。視界に入る植物はどれもこれも、数のばらつきがあるが仲間がいる。


やはり自分はおかしいのだろうか……


そんな事を、自分でも気付かず内に考えてていると、ふと自分の視界の右端に他の植物の色とはかけ離れた植物がみえた。


(見づらい…)


そんな事を思い、少しばかりのジレンマを覚えるとある事に気付いた。



ーーー自分は動けることに…ーーー



これは自分の中でも一、ニを争う発見だ!!


ちなみにもう一つは視界の右端の植物だ。


そうと分かれば腰を右に捻り、視界の中央にその植物を捉える。


とても綺麗な植物だ。


自分より小さいのに、自分を含めたこの木々達より目立ってる様に見える。


ついでに左の方にも腰を捻り辺りを見回すが自分とあの綺麗な植物の仲間は見つからない。


さっきまでは、自分は他と比べ変だと思ったが、この綺麗な植物を見てそんな事は無いと自信が付いた。


いや更に綺麗な植物と同じ仲間が居ない同士で、何だかんだ仲間意識が湧いてきた。


そんな感情が芽生え自然と腕が上がり、バンザイをしている事に気付いた。


そして心地の良いそよ風が吹き、自分と綺麗な植物は揺れる。


やはり自分達は仲間だ


そうに違いない。


自分の様な植物がいて、綺麗な植物が居る。


みんな違ってみんな良い。


これが普通。これが当たり前。




……しかし、そんな普通や当たり前の事は自分の中だけなようでーーー










(………人間よ…土に埋まってなにをしている?)







ーーー第三者から見たらやはり奇天烈な事らしい

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