ドワーフとの邂逅
二足歩行の生物が、声を出してこちらを見ている。
(スコール、あれ何て魔獣?)
「魔獣じゃないわい」
(……いやあれどう見てもドワーフじゃろ?ハティお前さんは言葉がわからんようじゃし、ワシが話をしよう)
「なんと!?もう一人の念話の主はポメラニアンだったんか!?」
(ポメラニアンじゃないわい!!)
何やらスコールがドワーフと揉めている。何と言われたたのだろうか?
「その子は言葉が通じんのか?」
(見た感じそうらしいのう。お前さんはここに何しに来たんじゃ?)
「儂か?儂は今日も山菜を採りにこの森に来ていたんじゃ。そしたら索敵に念話が引っかかっての。頭の固いエルフの老害どもが、500年ほど前の仕返しに来たんじゃないかと思って偵察に来たんじゃよ」
(成る程のう。お前さんは軍に所属していたから念話が探知できなのか。面白い技術じゃな)
「エルフは無線機を使わんでも遠くへ会話が出来るからの、その対抗策じゃな。……話が逸れたの、君達は何故森にいるんじゃ?ハティって子は裸じゃし?」
(何故ハティがここに居るかは本人にも分からんらしい。ワシが見つけた時は土に埋まっておった)
「土に!?……長い事生きていたが、育児放棄でそこまでされた子供は見た事ないわい……あーここで会ったのも何じゃから今から儂の家に来んかの?ご馳走するぞ?」
ドワーフの目がこちらに来た。……よく分からないが何か同情されているらしい。
(ハティよ、ドワーフが家に案内してくれるらしいぞ、行くかの?)
(話はよく分からないけど、悪い話じゃないなら行ってもいいんじゃない?)
「よし!決まりじゃな、儂の名前はチベット・ロックウェルじゃ。家でご馳走を食べさせてやるわい」
(ワシはスコール神獣フェンリルの息子じゃ……ほれ?お前さんも)
ん?この流れは自己紹介でもやってるのかな?
(あー……俺はハティ?……よろしく?)
「ハッハッハ!!よろしく頼むの!……スコールは意外と冗談が好きなんじゃな」
チベットとはスコールの発言を冗談として受け入れた。
「ふむ、全裸で村に入るのはマズイの。ほれこれでも着るといい」
チベットほそう言って上着をハティに渡した。
(?何て?)
(裸で村に入るのはマズイそうじゃから、それを羽織れだそうじゃ)
そういえば確かに、チベットは何か身に纏っている。……こう着るのかな?
穴に腕を通す。チベットの上着は俺には大きく、体の大半を隠す感じになった。
「では行くとするかの」
こうしてチベットが住む村へ向かって行った。
◇◇◇
歩き始めて30分ぐらいだろうか。柵に囲まれた沢山の何かが見えて来た。あれがチベットが言っていた村だろうか?
村の中に入るとドワーフがチベットに話掛けてきた。
「ん?チベット、その坊主はどうしたんだ?」
「この子は森にいた所を保護したんじゃよ」
「成る程。育児放棄か……坊主強く生きろよ」
何やらチベットが誰かと話していたら、話し相手のドワーフに頭を撫でられた。
(何て言ってたの?)
(「強く生きろ」じゃと)
強く生きろ……まぁ、スコールの位を上げるには強くならないといけないからな。
返事をしない俺に何やら違和感を覚えたドワーフは、またチベットと話始めた。
「もしや、この坊主喋れんのか?」
「あぁ、どうやらそうらしい。これから儂の家で保護しようと思っておる」
「そうか……困った事があったら俺に言えよ。出来る限り協力するからな」
「ありがとのう。ではまたの」
話が終わりまた歩き始めた。しかし色々知らない物が沢山ある。周りをキョロキョロ見ているといつのまにかチベットの家に着いたようだ。
「着いたぞ。ここが儂の家じゃ。小さい家じゃが客をもてなすぐらいは出来るぞ」
そう言われ、チベットの家に上がる。
(ワシ、ドワーフの家に上がるの初めてじゃ。ここには電気や水道とやらが普及しておるのか?)
「昔はあったんじゃが500年前の種族大戦の爪痕がまだ残っておっての、復興したのがまだ中央王都とその周辺だけでな。復興するのにはまだ時間が掛かりそうなんじゃよ」
(そんなに掛かる物なのかの?)
「500年前の大戦で技術者が大勢死んでな。それで復興が遅れておるんじゃよ。それに駄目になったパイプやらが邪魔での。それを掘り起こす何も時間が掛かるんじゃ」
(成る程のう)
何やら2人で話合っている。話に入らないと凄い疎外感がある。
「まぁそれはいいの。これから新鮮な山菜を使った天ぷらをご馳走してやるわい」
(天ぷらじゃと!!)
スコールが嬉しそうにそう言い尻尾を振っている。
(天ぷらって油が無いから作れないとか言ってたやつ?)
(そうじゃ!まさか天ぷらを食べれるとは想って無かったわい)
「君達は森で何を食べてたんじゃ?」
(魚や木のみ、山菜とかじゃな。一度だけコケッコウを仕留めて食べたの)
「よくコケッコウを仕留められたのう。大したものじゃな」
そう言いチベットは山菜を持って台所に向かう。それに俺は着いていく。
「ん?なんじゃ?座って待ってていいぞ?……それとも天ぷら料理に興味があるのかの?」
チベットが聞いてきたので頷く。※スコールが翻訳してくれた。
(天ぷらの作りかたが気になる)
「そうかの。では儂の手伝いを頼もうかの」
(美味しいの、まっておるからの)
こうして天ぷら料理を作り始めた。
矛盾はこれで回避できたのだろうか?