無垢と残酷
「ハア…ハア…」
疲れた。とにかく疲れた。
(ハティ。お前さん、その見た目の割りにエゲツない倒し方したのぉ……)
スコールは満身創痍で倒れている俺に近づいてそんな事を言ってくる。
(手段と余裕が無かったからね。俺だって出来るならスマートに倒したかったさ)
そう言い、両目に棒が貫通し、首が270度ぐらい回っている魔獣コケッコウの死体を見る。
……うん自分がしでかした事ながら、もう少しマシな倒し方をしたかったな。
「ピヨピヨ」
俺ぐらいの大きさの魔獣コケッコウの幼体が親の亡骸に縋り付く様に近づいて来た。
(う〜む……居た堪れんのう……)
(あの幼体この後どうなると思う?)
(親が居らんからのう……この森に居る天敵に食い殺されるか、この事をバネにし強くなってワシらに復讐しに来るかもしれんな)
(そうか)
俺は痛む体に鞭を打ち、何とか起き上がる。そしてコケッコウの目に刺さっている棒を引き抜く。
そしてーーー
(お、お前さん、まさか)
(うん。まぁ、これも運が無かったと思ってくれよ?)
棒を振りかざす。棒の芯がコケッコウの頭蓋骨を完全に捉えた。棒越しから伝わって来る頭蓋が割れる感覚が妙に手に残る。
頭から血が吹き出し、糸が切れたかの様にコケッコウは倒れた。
こうして魔獣コケッコウの幼体を撲殺した。
(おうふ。お前さん無慈悲じゃのう。いや確かにワシの位を上げる手伝いをしろとは言うたが……成る程。これが人の子の残酷さという奴かのう)
俺だって無闇矢鱈に殺したい訳でわない。ただ成体あんなに強いのに、放って置いたら挑んで来るとか悪夢でしかない。
(まぁ、お陰で位は上がったからワシからは文句は言えんがの。思わぬメインディッシュが取れたし、そろそろ戻るもしようかのう)
(そうだね。……だけど、どうやって運ぶ?全部運ぶとか俺の力じゃ無理だと思うんだが?)
(む?わしはてっきり魔素の獲得で、ステータスが更新されていると思ったのじゃが?)
そういえば何か聞こえたな。………ステータスオープン
「ハティ」
ステータス
力6
耐久8
器用18
敏捷4
魔力13
スキル
【棒術LV1】【殴打LV1】【土魔術強化LV1】
魔術適性
無LV4
土LV2
水LV1
あ、本当だ色々変わってる。名前が付いてるし、ステータスと魔術適性が上がっている。何よりスキルが発現してるな。
(ふむ、どうやらステータスが更新していそうじゃな。結果は後で聞くとして早く、持てるだけ肉を持って逃げるとしようかの。鼻のいい奴は直ぐに来るからの)
結局持てたのは、幼体だけだった。
◇◇◇
(さて、肉は早く調理をせねば駄目になってしまうからの。パパッとやってしまうかの。)
幼体から十分に血を抜き取り、沸かした湯につけて毛穴を広げる。
(それにしても良く、こんなに大きな鍋を作れたの。しかも性質は鉄に近い様じゃし。)
(ステータスの更新で魔術の練度が上がって、強化系のスキルが発現したお陰だね)
(ほほう、ではお互いのステータス結果でも教え合おうかの)
スコールのステータスは大体こんな感じだ。
「スコール」
ステータス
力2
耐久3
器用9
俊敏17
魔力23
スキル
【威嚇LV1】【速読LV5】【暗記LV8】【光魔術強化LV1】【治癒魔術強化LV1】
ユニークスキル
【図書館】
魔術適性
無LV8
光LV3
治癒LV1
との事、スコールのステータスはどうやら後衛向きらしい。
俺もそこまで得意という訳では無いと思うが、スコールよりはマシなので必然的に前になった。
◇◇◇
コケッコウを湯から取り出し、羽を毟る。細かいのは火で炙って取り除く。土魔術で作った包丁なる物で、コケッコウの肛門の辺りを大きく切り込み、内臓を取り出す。後は可食部位ごとに分けて下処理は終わり。後は焼くだけだ
(お前さん器用じゃのう。良くワシの言う通りに捌けるのう)
(まぁ、器用が一番高いからね。それにしてもここまで下処理すると、さっきまでの姿が嘘みたいだね)
串と網を作り、焼き鳥なる物を作る。
(本当は木炭などで調理してタレを塗る方が美味いらしいが……無いものねだりしても意味ないの。しかし本当にお前さんの土魔術は便利じゃの)
(俺が主に使用するのが料理の時だからね。それ以外だと、魚を捕る時とあの棒を作った時だけだね)
こうして遅めの朝食を食べるのであった。
子供の頃は今では出来ない酷いことをしてましたよね。自分はバッタの足や首などを捥いで遊んでましたけど、今では無理ですね。