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―――――――――――1555年6月10日 内城周辺―――――――――――

「島津貴久が家臣、伊集院忠倉にございます」

「惟宗国康だ。面をあげよ」

「はっ」

そう言って忠倉が顔を上げる。確か忠倉は島津家の内政の中心人物だったはずだ。この前の奇襲の時は何をしていたんだろう。


5日前に島津が奇襲を仕掛けてきた。ま、そうなるようにわざと島津から見える位置で酒盛りをさせたり、居眠りさせたりしたんだけどな。島津は奇襲を仕掛けてきたときに鉄砲の三段撃ちで壊滅的な被害を受けていた。兵を率いていたのは島津忠平、のちの島津義弘と島津歳久だったらしい。彼らはすぐに城に戻っていった。正直追撃するか迷ったな。だって島津といえば釣り野伏だ。確かこのころにはまだその戦法はできていなかったはずだが不安だった。すぐに頼氏に調べさせると城の近くに伏兵が潜んでいた。分かっていれば対処はできる。すぐに兵を二つに分けて一隊は追撃と城攻め、もう一隊は伏兵をたたいた。伏兵の方はばれていたとは思っていなかったようでかなり混乱したようだ。すぐには逃げ出さなかったがその隊を率いていた鎌田政年を討ち取ると城に逃げ込んでいた。城攻めはあまりうまくいかなかった。どうやらある程度は予想していたらしく抵抗が激しかった。あまり被害が大きくなるのもよくないので適当なところで引き上げた。たぶん今日は降伏の交渉に来たのだろう。だったらいいな。


「それで今日は何の用かな」

「我ら島津家は国康様に降伏したく参りました」

「内城の降伏ではなく島津家の降伏でいいのかな」

「はい。島津家の降伏です」

よかった、よかった。これ以上戦が続いて大友が介入してこられたら面倒だ。どうやらそろそろ豊前の国人たちを討伐するらしい。援軍をよこせと言ってくるかもしれないな。それとも筑前・筑後の旧大友領を返せと言ってくるかな。


「では降伏の条件を伝えよう。一つ、まだ惟宗に抵抗している薩摩・大隅の城に開城するよう命令すること。一つ、薩摩・大隅は没収。ただし鹿児島郡については領有を認める。一つ、島津の分家は独立し、惟宗の直臣となること。一つ、当主の貴久は出家し、家督は嫡男の義辰が継ぐこと。一つ、もし開城を命令しても抵抗を続ける城があれば島津が先陣を務めること。以上だ。なお分家の降伏に関しては別に交渉することにする」

一つ目は降伏するんだから当然だろう。二つ目の領地の没収は厳しいかもしれないが3万石もあるしこんなものだろう。三つ目は島津の力を削ぐためだな。秀吉の九州平定の真似だな。あれは兄弟仲がよかったからかうまくいかなかったが分家とはそこまで仲がいいとは思えないからうまくいくだろう。四つ目は当然だな。責任を取るとすれば当主だ。五つ目はどうかな。これが一番被害が出なさそうだしいいだろう。抵抗しようとしている城主も島津が先陣となると知ったら躊躇うはずだ。島津もそんなことはしたくないだろうから懸命に説得するはず。悪辣かもしれないが余計な戦をせずに済むのはいいことだ。さて、受け入れるかな。


「それは・・・少し厳しいのではないでしょうか。開城は当然ですが鹿児島郡だけでは家臣たちを雇うことが厳しくなります。それに義辰様はまだ若年にございます。分家の独立も島津本家の地位が低下してしまう恐れが」

意外とわがまま言うな。それとも少しでもごねてもう少しましな条件にしようとしているのだろうか。ま、一切条件を下げるつもりはないけどな。

「前に降伏を促した時に惟宗に従っておれば鹿児島郡・谿山郡・日置郡・伊佐郡・薩摩郡・出水郡・高城郡・甑島郡は安堵したのだがな。逆らった以上それより重いものになるのは当然であろう。嫡男が若いから無理だというのも家臣たちが支えれば問題ないはずだ。俺も幼い時に当主になったがしっかりやれていたと思うぞ。それでも無理だというのなら康正を養子に入れるまでだ」

グダグダ文句を言っていないでさっさと受け入れろよ。別に家を乗っ取られるわけじゃないんだからいいだろうが。

「それから本家の地位が下がると言ったな。それは当主の力量次第だろう。俺が保証するようなことではない」

「しかし・・・」

「くどいぞ。我らには和睦を受け入れる理由はない。この条件を受け入れないならばこのまま潰すだけだ」

かなり悩んでいるな。よし、ここでダメ押しをしておくか。

「大隅のほうはなかなかうまくいっているようでな。すでに大隅で抵抗しているのは豊州家だけだ。その豊州家の飫肥を狙って伊東が戦の準備をしているぞ。同格になるとはいえ分家がなくなるのを防ぐか、あくまで抵抗して島津の家をなくすか。どちらが島津のためになるかお前ならわかるはずだ」

「・・・分かりました。その条件で降伏いたしまする。ただし隠居なされた後の御屋形様の安全の保障をお願いいたします」

なんだ、そんなことか。別に問題ないだろう。むしろ貴久を害する理由がない。

「構わん。だが必ず説得して参れ」

「はっ。必ずや」

よし、これで島津は片付いたな。

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