表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/402

薩摩侵攻

―――――――――1555年4月5日 虎居城 祁答院重朝――――――――――

「そうか、ようやっと国康様はこちらに兵を出されるか」

「はっ。薩摩に攻め込むのは約2万ほどで別動隊の1万が日向の島津方に攻め込むようです本隊は明後日にも到着するでしょう」

「北原もその時に攻めるのか」

「おそらくはそうなるかと」


北原は菱刈と同様に惟宗が出てくることを知ると島津方に付いた。どうやら北原の農民が多く惟宗に逃げ込んでいたらしい。どうやら当主の兼守の叔父の兼孝が領民に一向宗になるよう強制したことが原因のようだ。その話を聞いた限りでは自業自得のような気がするが本人たちにとっては理不尽な話なのだろう。それと菱刈同様、相良氏と仲良くしていたのも島津方に付いた理由の一つみたいだ。この辺りの国人たちは相良との関わりが多いな。


「しかし合計で3万か。分かっていたことだが国康様を御屋形様と仰がねばならんな。島津を当主と仰ぐよりはましだろうが」

「仕方ないかと。今の惟宗は九州最大の大名で天下でも大きな力を持つ大名の一つです。歯向かうことは滅亡を意味することになります。それに島津が惟宗の下に付けば我らと島津は同等ということになります。そちらの方がよっぽど良いかと」

もともと我らが島津に反抗したのは島津の下に付くことがいやだったからだ。同等になれれば問題ないだろう。入来院や東郷も同じようなことを考えているはずだ。


「ま、そこが妥協点か。それより惟宗は島津に勝てるのだろうな。これで負けるようなことがあれば最悪だぞ」

「大丈夫でしょう。惟宗は有力な港を多く抱えていますから兵や武器の数・質ともに島津に勝っているはずです。それに惟宗は国康様の代になられてから少弐や有馬・大内と戦っていますが、一度も負けたことがございません。今回も問題なく勝つでしょう」

「だとよいのだが・・・まぁ、今更そのようなことを心配していても仕方がないな。我らもすぐに戦の支度を整えなければ。兵はどれほど集まった?」

「8割方集まりました。惟宗の兵が到着するころには揃うことでしょう」

「うむ、ここで我らが手柄をたてれば国康様、いや御屋形様の覚えもめでたかろう。入来院や東郷に負けぬ手柄をたてねばな」

「はっ。この重朝、身命を賭して働きまする」

そう言って頭を下げると殿は満足そうに頷かれる。


「しかし島津は降伏するかの。どうもあの一族の事はようわからん」

「流石に御家の存続がかかっているとなれば降伏すると思いますが・・・豊州家があるので本家は降伏しないということがあるやかもしれません。あとは国康様が受け入れるかどうかかと」

「御屋形様は受け入れると思うぞ。今は九州一の大名だがもともとは対馬の小大名。領地に対して家臣が足りていないはずだ。優秀な人材であれば敵だったとかは気にせずに登用していくはず」

だと良いのだが・・・降伏を認めず我らを盾代わりにして潰すかもしれん。もしそうなったらできるだけ他の国人たちに押し付けねばな。


―――――――――1555年4月10日 大友館 奈多鑑基―――――――――

「では失礼させていただきます」

そう言って御屋形様の部屋を辞退する。しかしかなり出世した者よな。先代の時は部屋に入ることはあまりなかったというのに、今は側室とはいえ娘が御屋形様に嫁いでいる。正室とはあまりうまくいっていないようだから娘が御世継ぎ様を生むこともあり得よう。そうなれば儂は外戚として今以上に権力を握ることになるな。まこと良きことよ。


「父上。何やらご機嫌がよろしいようですな」

しばらく歩いていると反対側から倅の鎮基がこちらに近づきながら話しかけてきた。こやつは誰に似たのか強欲で吝嗇ときた。まったく、いい思いをしたいのであれば配下の者にも多少は利益が出るようにせねばならんだろうに。搾り取れるところからはしっかり搾り取り、働いた者には多少の恩賞を与える。これが賢い方法というものよ。

「先程御屋形様の部屋に行っていてな。豊前の国人共の反乱が終わったら宇佐神宮系の国人どもは根絶やしにしてくれると言っておられた。場合によっては宇佐神宮も焼き討ちにしてくれるともな」

「それはそれは。宇佐神宮がなくなれば我らに仕事が回ってきそうですな」

「そうだな。宇佐神宮の代わりに仕事をしてやるのだから多少宇佐神宮の土地をもらっても誰にも文句は言われないだろう」

「左様ですな」

そう言って顔を見合わせると笑い出してしまった。倅も笑っている。娘が御屋形様に嫁いでからうまく行くことが多くて助かる。持つべき者は地位の高い婿殿よな。


「しかしほかの重臣たちがあまり我らの事を快くは思っていないようだ。多少は自重せねばならんな」

「儲けていない者の妬みは面白くありませぬからな。兄上が養子に行っている田原あたりにでも利益を与えますか」

こやつは自重の意味を知っているのか?まぁ、多少やらかしても御屋形様がとりなしてくれよう。それまでしっかり儲けるとするか。ふははははは。笑いが止まらんわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ