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不仲

――――――――――――1553年11月5日 塚崎城――――――――――――

「はははっ。そうか、全て認めたか」

「はっ、阿蘇が惟宗につくこと、龍造寺鑑信の捜索と引き渡し、秋月との和睦。すべて認めました」

さすが外交衆筆頭。俺の予想では阿蘇は渋々認めて龍造寺は黙殺、和睦は拒否と思っていたんだけどな。和睦は親誠が言ったようなことを言い返したのだろうな。向こうも自分たちが言ったことだから拒否するのもまずいと考えたのだろう。相良の時に横槍を入れなければこんなことにはならなかっただろうに。


龍造寺のことは大友も腹に据えかねていたのだろうな。そうでなければ探す前にいないと言うはずだ。それとも匿うような反抗的な勢力がいるのだろうか?頼氏に探らせよう。多分宇佐神宮系の国人たちだと思うんだけど。いや、それとも日向の土持氏だろうか?土持氏は伊東氏に対抗するために大友の下についたが今回の御家騒動で大友は当分動かないと思い、戦力増強のため龍造寺を匿っていてもおかしくない。ま、引き続き多聞衆が龍造寺の居所を探しているから万が一大友が龍造寺をかばったとしてもわかるだろう。


「それで義鎮は何か見返りを要求してこなかったか」

「ありました。まずは今回の遠征で手に入れた筑前の領地を所持することを認めること。それからその領地については今後一切口出ししないこと。筑前での年貢を大友と同じようにすることの三つです」

「最後は論外だな。それでなんと答えた」

「もちろん最後の年貢の事を除いて認めました。さすがに大友が今回手に入れた領地の事に口を出すのは危険と判断いたしました」

妥当だな。むしろ大友と敵対した時に秋月を嗾けることで大友の兵を分散させることができる。だがそれで義鎮は認めたのだろうか。

「義鎮は何と言っていた」

「受け入れないのであれば城攻めを再開すると言っていましたが長増殿・鑑続殿・鑑連殿に説得されてしぶしぶ認めていました」

どうやらせっかく御家騒動の時に味方してやったのに惟宗嫌いは治っていないらしいな。治らなくてもいいけど舅殿が粛清されるようなことにならなければいいのだが。舅殿と康胤がいれば正直負ける気がしないな。

「秋月との和睦の条件はどうなった」

「当主の秋月文種の切腹と大友への服属で纏まりました。秋月の家督は嫡男の晴種が継ぐことになりました」

「そうか、人質などは要求しなかったのか」

「次男と長女が人質として大友館に」

「次男というと黒法師か」

「はっ。左様にございます」

黒法師はのちの秋月種実あきづきたねざねだな。史実では大友に反抗した時に嫡男も自害したため秋月の当主になったが今回は嫡男は生き残り黒法師は大友館に送られたか。おおかた大友が有利に働くように育てて晴種が反抗的になったら当主を入れ替えるつもりなのだろう。

「今回の交渉は筑前守護に命じられたからうまくいったな。正月になったら大樹への献金を例年より多めに持って行ってくれ」

「はっ」

「それと京に立ち寄った際に熊次郎に合いそうな貴族の娘を何人か探しておいてくれんか。母上から嫁と元服の日程を早く決めろとせっつかれているのだ」

どうせなら貴族の娘の方が変な閥ができないだろう。あとは元服だな。


―――――――――1554年1月20日 大友館 臼杵鑑連―――――――――

「御屋形様。先日の処分はどういうことですかっ。今すぐ撤回なされよ」

「左様ですぞ。あのような処分はただ不満を残すだけですぞ」

「撤回はせん。これは最終決定だ」

某と長増殿の抗議を御屋形様は不機嫌そうに聞いている。しかしここで御屋形様の機嫌を損ねるぐらいのことを危惧していては大友家は今以上に衰退する。多少機嫌を損ねるようなことがあっても撤回させねば。


先日、御屋形様が小原鑑元おばらあきもと殿と鑑連殿を加判衆から外された。おそらく鑑元殿は他紋衆だから外されたのだろう。そして鑑連殿は娘が国康殿に嫁いでいるからだろう。しかしどちらも適切とは言えない。それに鑑元殿は大神系の他紋衆と親しい。そしてその者たちは大友の支配に反抗的なところがあった。場合によっては反乱を起こすということも考えられる。鑑連殿の処分は惟宗の印象を悪くするのは間違いない。これ以上大友と惟宗との仲が悪いと周囲に思われては北九州に再び混乱が訪れるだろう。なんとしてでも阻止せねば。


「御屋形様、そもそもなぜこのような処分を決定されたのですか。このような処分をなされば家中の者が不安に思いますぞ。あの鑑連殿ですら加判衆をはずされたのだからいつ自分たちに何らかの処分が下されれてもおかしくないと思ってもおかしくない。ならばいっそと考えるものまで出てきかねませんぞ」

「鑑元は加判衆にするほどの功績を御家騒動の時も先の秋月征伐の時も上げることができなかった。実力のないものが加判衆にいるのはおかしいだろう。鑑連は御家騒動の時に戦に参加するのが遅かった。もっと早く参加していればあれほど長く戦をせずに済んだだろう」


こじつけだ。御屋形様は鑑元殿と鑑連殿が大神系の他紋衆や惟宗を後ろ盾に発言力を付けようとすることを恐れているだけだ。おそらく長増殿も同じようなことを考えているだろう。

「しかし鑑連殿は秋月征伐の際に最前線で指揮を執り十分な手柄を立てています。鑑元殿も大きな手柄はありませんでしたが御屋形様への忠義は皆が知っています。どうか御再考と撤回を」

「ならん。再考することも撤回することもない」


だめだ。これ以上言ってもより頑なになるだけだ。さて、どう説得したものか。長増殿の方を見ると長増殿も悩んでいるような表情をしている。今日はここまでなのだろうか。む、何やら外がうるさいな。

「も、申し上げます」

どたばたと音をたてながら小姓が入ってきた。

「小原鑑元様及び大神系・宇佐神宮系の他紋衆、御謀反にございます」

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