表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/402

終結

――――――――1553年1月21日 吉田郡山城 毛利隆元――――――――

「父上、入りますよ」

「おぉ、入れ入れ」

父上の許しを得て部屋に入る。部屋の中はいろんな名前が書かれた紙が散乱している。

「父上、この紙は何ですか」

「孫の名前に決まっておろう。なかなか良い名が思いつかんのだがどれがよいかの」

「幼名ですぞ。そこまで悩まなくてもよいのではないですか」


14・5年もすれば変えなければならないのだからそこまで悩まなくてもよいような気がするが・・・

「そうはいってものぉ。それより今日はいかがした。もうそろそろ子が生まれるのであろう?」

「今男が側にいてもできることはありませんよ。今日来たのは世鬼からの報告をお知らせに参りました」

ようやく父上の顔が引き締まった。


「そうか、それでどうだった」

「まずは九州ですが大友義鑑が自害いたしました。あとは残党処理だけですのでこれで大友の内乱は終わったとみてよいでしょう」

「ようやっと終わったか。それで惟宗が占領した領地はどうなる」

「それは戦が始まる前に流れていた噂の通り御井郡・御原郡・三潴郡・山門郡・三池郡のようです。それと筑前は惟宗に任せると」

「太っ腹よな。それとも惟宗が大友のことを押せば譲ると見たのだろうかの」

どちらかといえば後者だろうか。惟宗が義鑑に味方していれば今頃自害していたのは義鑑ではなく義鎮だったはずだ。


「義鎮は不満であろうな。せっかく九州の名門の跡目を継いだと思ったら衰退の一途をたどっている。代わりに九州で栄えようとしているのは同年代の惟宗国康。もしかすると家臣たちから比べられるかもしれんの。そのようではいずれ惟宗と大友は敵対しよう」

「しかし不満を持っても敵対までするでしょうか?惟宗には大友を敵に回す理由がありませんし大友は今のままでは惟宗に勝つことなどできないはずです」

あの劣勢から惟宗の助けがあったとはいえ跡目争いに勝ったのだ。無能であるはずがない。少し考えればわかるはずだ。


「義鎮だけではないが大身の名門の子の多くは無能、有能にかかわらず成り上がりを見下すことが多い。惟宗に助けを求めようとしたのがあれほど遅かったのもそれが理由であろう。そして見下したものが自分より上の立場に来ることを阻止しようとする。おそらく義鎮もそうするはずだ」

「しかし重臣の鑑連の娘が嫁いでいますぞ。それを無視して惟宗と敵対というのは難しいのではないかと」

「ふむ。話は変わるがお主は晴賢を討ち取るべきと思うか」

何かと思ったら急にどうされたのだろうか。まぁ父上の事だから何か考えがあるのだろう。


「私は討ち取るべきだと思います。晴賢は自らの主を討ち取った逆賊です。そのような者は信用できません」

「だが今の大内と毛利では到底相手にならんぞ。それでもか」

「はい、それでもです。あっ」

「気付いたか。人というものは有利不利関係なく憎い敵や認めたくないものには敵対しようとすることもある。策をたてる時はそう言った事にも気を付けることだ。まぁそのような役目は隆景の役目ではあるがの」

「はっ、肝に銘じておきます」

まったく、子が生まれるというのにこれでは頼りないな。生まれてくる子がある程度大きくなったら父上が元気なうちに隠居した方がよいのではないだろうか。


「では報告を続けてくれ」

「はい。以前から大友が大内より豊前の引き渡しを要求していますが受け入れられそうだとのことです。しかし豊前の国人たちがおとなしく従うかはわかりません。また義鑑に味方した国人や家臣は皆領外に追放されるか切腹させられその領地は義鎮に味方したものに配られたため調子に乗っている者がいるようです。そして義鎮自身もキリスト教とかいう宗教に入信したから勝てたと言ってかなりのめり込んでいるようです。そのことに不満を持つ家臣もいるとか。その不満を抑えるため奈多鑑基の娘を側室にして鑑基を寺社奉行にという話が出ているようです」

昔大内にキリスト教の坊主が来たと聞いたことがあるが一度目はキリスト教では衆道が禁じられていることを知り布教の許可を出されなかった。そのことで許可が出た後もあまり信者が増えなかったと聞いている。


「奈多は奈多八幡宮の大宮司家であったな。しかし奈多の噂はたまに耳にするがどれもよく無い噂であったような気がするが」

「私もそう聞いています。強欲で狡猾、疑い深く吝嗇。良い噂を流すのにも一苦労しそうな人物です。そのような者が寺社奉行になると聞いて不満を持つ寺社が多いようです。今は大丈夫でしょうが父上の読み通り惟宗と敵対するようなことがあれば惟宗の手のものにあおられて一揆をおこす可能性があります」

「そうか、大友と惟宗はその辺りで良い。大内はどうしている」

「宗像を取り込もうとしていますがあまりうまくいっていないようです。なんでも晴賢が送り込んだ氏貞に反発する勢力に味方する先代の正室である山田局を殺したため民からも反発を受けているとか。惟宗も反氏貞派に味方したためいずれは親惟宗の勢力が誕生するでしょう」

惟宗は順調に勢力を伸ばしているみたいだな。すでに石高は100万石を超えているというのになぜまだ大きくなろうとしているのだろうか?


「その様子ではいずれ北九州は惟宗のものになるの。尼子の様子はどうだ」

「美作東部に出陣するようです。おそらくこちらへの備えは少なくなるかと」

「ほう、それは都合がよいな。この機会に昨年裏切りよった江田を潰すぞ。戦の準備をしておけ」

「はっ」

さて、兵の数と兵糧の数を確認しておかねばな。こればかりは元春も隆景も手伝ってもらえんからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ