ザビエル
――――――――――――1550年9月1日 塚崎城――――――――――――
「お初にお目にかかります。某はパウロ・デ・サンタ・フェというものです。隣にいる方々はフランシスコ・ザビエル様とコスメ・デ・トーレス様です」
目の前でよく日焼けした日本人が頭を下げ二人の外国人がまわりをきょろきょろして座っている。その少し後ろには盛幸が座っている。パウロ・デ・サンタ・フェはおそらくヤジロウだろうな。何でこんなことになったのかな。
昨日、智正が部下から領内で許可を得ずに布教活動をしている者がいるとの報告を受けた。智正はすぐに拘束するよう指示したが連れてくると妙な身なりをした朝鮮人でも明の人間でもない外国のものもいた。どう対応したものか悩んだ智正はとりあえず俺に報告することにしたらしい。
この外国人はたぶんザビエルだろう。史実でも島津領を出た後は平戸で布教をしていたはずだ。その報告を受けた俺はとりあえずザビエルたちと会うことにした。
俺としては南蛮貿易をしたいから布教は許可するつもりだ。だが南蛮貿易で日本から輸出したものの中には日本人の奴隷がいたはず。現代から逆行転生した俺としてはあまり気分がいいものではないな。たぶんほかに売るものがなかったのだろうがこの歴史では惟宗が綿花や石鹸などを作っている。奴隷の代わりにそれらを売ればいいだろう。まぁ、そのあたりは商人たちと話し合うことか。
「其の方らは惟宗家の許可を得ずに勝手に布教活動を行った。そのことに対して何か申し開きはあるか」
「我らは日ノ本の外より参りました。まず島津様に布教を願い出てその許可が下りました。が残念ながら数か月後に貴久様は僧侶の讒言に耳を傾け禁教に傾きましたので我らは京に上ることを理由に島津領を出ました。その途中に明船が多くいていると噂を聞きザビエル様がぜひここで布教活動を行いたいとおっしゃられたため布教には必ず許可が必要とは知らずこのようなことになりました。申し訳ございませぬ」
そう言ってヤジロウが頭を下げる。ザビエルたちもそれに倣って頭を下げた。たぶん話の内容は理解できていないだろうな。少し話をしたいな。
「パウロとやら。お前は異国の言葉が分かるのか」
「はい。ザビエル様とトーレス様は日ノ本の言葉で話すことはできませぬが某はどちらとも話すことができまする」
「では聞こう。おぬしらが布教していたものはキリスト教という教えだな。その教えでは教皇とやらが最も力を持っていると聞く。それは間違いないな」
「¿Quién tiene más poder en el cristianismo?
「Ese es pope」
「間違いございませぬ」
「では日ノ本の仏教のように同じキリスト教の中でも宗派が分かれているのか」
「¿Cuántas denominaciones hay en el cristianismo?」
「Solo hay uno.Por favor dígalo.」
「¿Está bien?」
「No hay problema.」
なんだ、妙に長い会話をしているな。目の前で何を言っているか分からないのは少し不安になるな。盛幸に頼んで通訳を雇えないかな。それかヤジロウを雇うか。
「いえ、教皇様の元で一つの教えを信仰しておりまする」
おい、何で嘘をつくんだよ。つい最近、宗教革命が起きたばっかりだろうが。
「パウロ。俺は多少ならばキリスト教について知っている。そのうえでもう一度聞くがキリスト教の中でも宗派が分かれているのか」
「Él parece saber sobre el cristianismo.」
「¿También se trata de sectas?」
「Probablemente.」
「Sr. Xavier.Vamos a decir la verdad.」
「Lo entiendo.Hagamos lo que dice Torres.」
今度はトーレスも会話に入ったな。これで嘘をつき続けるならば布教は認められないな。
「申し訳ございませぬ。確かにいくつかに分かれておりまする」
「なぜ嘘をついた」
「そう言った方が正しい神の教えを広げることができると考えたからです。申し訳ございませぬ」
正しい神の教えね。確かイエズス会員は教皇の精鋭部隊とも呼ばれていたはずだ。ほかの宗派なんて認められないのだろう。それに日本でキリスト教を広めるには仏教のように複数の宗派が争っていると思われない方が有利だ。
「では、これからは布教の願い出と誓紙を提出し許可を得たうえで布教活動をするように」
「はっ。ご迷惑をおかけしました」
「それから日ノ本の民を日ノ本から連れ出すことは基本的に禁ずる。たとえ奴隷であってもな。おそらくいずれは南蛮の商人も来るだろうがその者たちもだ。其の方らから徹底するよう伝えておけ。もし許可なく連れ出した場合は禁教に処す。そのことザビエルにも伝えよ」
「はっ。No saques a los japoneses.Por favor, cuéntaselo a los comerciantes. está diciendo eso.」
「Lo entiendo.」
「ザビエル様も分かったと申しております。願い出と誓紙は某が書きまする」
「ザビエルとトーレスも名前だけは書いておくように」
「はっ」




