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菊池討伐

―――――――――――1550年3月10日 小萩山――――――――――――

「そうか、勝利たちは古麓城を落としたか」

「はっ」

頼氏からの報告を聞いて安心したよ。それにしても早いな。出来るだけ早くと言ったのは俺だがまさかもう落とすとは。さすが評定衆と兵法衆筆頭だな。これくらいの仕事をしてくれる人が後5人は欲しいな。大友から引き抜きたいよ。あそこは有能な将がたくさんいるからな。そうだ、有能な将といえば・・・

「頼安はいかがしている。確か幽閉されたと聞いているぞ」

「時忠殿が救出したとのことです。幸いにも怪我は大したことなくすぐに領民の混乱を鎮めるべく行動しています。それと頼安殿がこちらを」

そう言って頼氏が懐から手紙を取り出した。

「これは?」

「相良晴広の嫡男、万満丸の助命嘆願です」

手紙を広げるとかなりの長文で助命嘆願をと書いてあった。忠臣だねぇ。幽閉までされてもまだ相良家に尽くそうとするのか。晴広もこんな忠臣を幽閉するなんて馬鹿なことをしたものだよ。しかし万満丸の助命ねぇ。たぶん史実の相良義陽さがらよしひだろうな。こいつもなかなかの軍略を持っていたはずだ。それに甲斐宗運とは昵懇の仲になるはず。人手不足の惟宗としては欲しいといえば欲しいが晴広みたいになる可能性もあるし・・・。どうしたものかな。

「その万満丸はいくつだ」

「たしか7歳だったはずです。いかがなさいますか」

7歳か。頼安に教育を任せておけば馬鹿な真似はしないだろう。あとはどういう理由で助命するかだよな。

「まずはこの戦を終わらせるのが先だ。処分は後から考えよう」

「はっ」

とりあえずこの話は後回しだな。まずは目の前の城を落とすことに集中しよう。

一昨日、惟宗が到着する前に亀井城を囲っていた菊池勢は撤退した。数は約2000だったらしいから野戦ではかなわないと思ったのだろう。合志の兵800を除いた1200の兵は目の前の隈本城に籠城している。合志は自分の領地に戻って籠城の支度をしている。隈部を攻めていた菊池勢も別動隊に蹴散らされ今は赤星氏を中心に菊池城に籠城している。たぶん背後を襲われることはないだろうが念のため2000ほど抑えに置いている。つまり約8000の惟宗勢が1200の兵がこもる隈本城を包囲しているということになる。そして隈本城だがこの城は前世では隈本古城とも呼ばれ熊本城の一部になっている。それほど大きな城ではなく、史実では義武はこの城を包囲されたときさっさと抜け出して金峰山に籠ったらしいがすでに惟宗によって抑えられているから抜け出すことはないだろう。逃げるならば西ぐらいだが西には阿蘇がいる。阿蘇は一時期菊池氏を乗っ取ろうとしていたがそのせいで御家騒動が起きた。いわば菊池は阿蘇にとって鬼門のようなものだ。それに独立勢力とはいえ領地が大友に近い以上大友に反抗的な義武を匿うことはしないだろう。来たら捕らえて義鑑か義鎮の元に送るだろう。自分の支持する方に送ればいい得点稼ぎになる。あれ?そうなると阿蘇としてはむしろ来てほしいのかな。

「御屋形様、そろそろ総攻撃の予定の刻です」

「おぉ、もうそんな時間か。では、皆に合図を」

「はっ」

さて、この総攻撃で落とすことができるかな。


――――――――1550年3月20日 高崎山城 入田親誠―――――――――

「そうか、婿殿が菊池を討伐したか」

「はい、菊池義武は佐須盛廉殿の兵が討ち取られました」

合志氏も隈本城が落ちた後に攻め滅ぼされた。そして隈部・城といった主だった国人たちは皆惟宗の支配下にはいった。これで惟宗は100万石の大大名か。そして大友は内乱、大内も近頃は家中に不穏な空気が流れているという。九州の旗頭は御屋形様や義鎮が認めなくても惟宗であろうな。

「しかし忌々しいの義武は。いつもいつも儂の邪魔ばかりしよって。これで肥後は阿蘇を除いてすべて婿殿のものか」

御屋形様はそういうと手紙を放り投げられた。

「しかし惟宗はこちらには介入してきませんでしたな。正直なところあの国康殿が何もしないということはないと思っておりましたが」

私としてはさっさと惟宗が介入してこの内乱を終わらせてほしいのだが。

「儂としては婿殿が自発的に我らの味方になることが望ましいのだがの。その方がわしの影響力を敵味方に知らしめることができる。それにあくまで惟宗は大友の下という形になる。儂から援軍を求めては大友と惟宗は対等か惟宗の方が上になってしまう。恐らく婿殿も同じようなことを考えているのだろう。より影響力を残すには自分から参戦するのではなく請われてから参戦した方がよいと。まぁ、当面はこちらから援軍を請うことはないだろうから問題ない。問題は義鎮だな。あの馬鹿が婿殿に援軍を請うようなことがあれば喜んで婿殿はその話に応じるだろう」

さすがにそのあたりの事はわかっているだろう。分かっていなかったとしてもほかの家臣たちが止めるはずだ。

「もしかすると惟宗が仲介してくるかもしれんな」

「仲介ですか?それは和睦の仲介ということで?」

「あぁ、肥前の千葉のように大友家を二つに割るのだ。さすれば塩市丸と義鎮の両方が当主になることができる。家臣たちも内紛が続くよりはと考える者がいるのではないか」

「その場合はお受けになられますか?」

「受けるつもりはない。なぜ優勢なのに受けねばならんのだ」

恐らくそれは相良攻めの時に和睦をと言われた惟宗も思ったことだと思うのですが。

「それより菊池の反乱も終わったことだしそろそろ義鎮と決着を付けねばならんな」

「ということは・・・」

「戦の準備をせよ。鶴崎城を攻め落として義鎮を討ち取るのだ」

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