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少弐滅亡

――――――――――――1546年5月1日 塚崎城――――――――――――

「お久しゅうございまする。龍造寺胤栄にございます」

「久しいな。面を上げよ」

「はっ」

胤栄が顔を上げる。武家の棟梁というより文化人のような雰囲気だな。それに少し顔色が悪い。あまり体調がよくないのだろう。後ろに控えている鍋島清房の支えで入ってきたくらいだ。


「それで今日はいかがした」

「はっ、本日は少弐の盟約違反をお伝えするべく参りました」

「ほう、それは真なのか。場合によってはその方の処分を検討せねばならんが」

「某が大内にいた時に確認した話ですので間違いありませぬ。証拠の手紙もございます」

もちろん間違いだらけなんだけどな。俺がそんな話をするように頼んだ。証拠の手紙というのも惟宗の偽書作成担当の右筆が書いたものだ。


「その手紙というのは」

「こちらにございます」

胤栄が懐から手紙を出して差し出す。それを景満が受け取り俺に渡す。どれどれ。

「たしかに大内に通じているようだな」

「国康様、その手紙にはなんと」

盛廉が不安そうにこちらを見て聞いてくる。ほかの家臣たちもこちらを見ている。

「惟宗を滅ぼした暁には肥前・筑前の領有を認める。またそのための援助を大内は惜しまないと書いてある。大内義隆おおうちよしたかの花押も入っているから間違いないだろう」

「意外ですな。義隆は養嗣子の晴持はるもちを月山富田城の戦いで失ってからあまり領土を求めようとはしなくなったと聞きましたが」

「恐らく文治派と武断派の争いで武断派の勢力が大きくなってきたのだろう。それならこの動きは説明できる」

「某もそのように考えまする。特に陶隆房すえたかふさの発言力が大きくなっていたと見受けまする」

「頼氏はどう思う」

「可能性は高いかと。一時期少弐の使者が大内との間を行ったり来たりしていることがありました」

頼氏もうなずきながら肯定する。もちろんこっちにも根回しはしている。


「では、我らは少弐が盟約を違えたことを前提に行動する。まずは康広」

「はっ」

「大友のところへ行き今回の件の詳細伝えてきてくれ」

「承りました」

「ほかのものはすぐに戦の準備をしろ。これより少弐討伐を行う」

「「「はっ」」」


―――――――――1546年5月5日 勢福寺城 馬場頼周―――――――――

「なぜだ、なぜ惟宗がこの城を囲っているのだ」

「分かりませぬ」

「分からぬではない。すぐに調べよ。それから神代・高木・姉川ら国人衆に使者を出せ」

「はっ」

ようやく元の冬尚様に戻られた。しかしなぜこのようなことになったのだ。惟宗は我らを攻める理由はないはずだ。その証拠に昨年の龍造寺の騒動の後は戦をせずに内政に集中していた。だから冬尚様が酒にふけっていても問題なかったのだ。


「頼周殿」

「おぉ、資誠殿。惟宗の様子はいかがで」

「なかなか固い布陣です。使者を何度か出しましたがすべて殺されるか捕らえられているようです」

「左様で」

やはり無理か。

「冬尚様は何と」

「国人衆に使者を出せと」

「すぐに殺されるだけですな。それに少し問題が」

「問題とは」

「惟宗の陣に姉川・高木・龍造寺の旗が見えました。恐らく寝返ったのでしょう。それにこの城を囲われて3日です。神代はこの城が囲われていることを知っているはず。なのに援軍が来ないのはおかしいです」

「うーむ」


確かに可能性はある。むしろそう考えた方が自然だろう。有馬攻めの時は西郷などの有力国人を寝返らせてあっという間に攻略してしまった。今回もそれをしていないとは限らない。それに以前話していたではないか。国人たちが冬尚様の事を頼りないと言っている、惟宗の手が伸びてきている可能性もあるかと。まさかその時にはすでに惟宗の調略の手が伸びていたのだろうか。くそっ。

「このような状態で大内が攻めてきたら」

「間違いなくやられますぞ。いや、大内でなくても筑紫が攻めてくるだけで我らは滅ぶ。いかがしますか、頼周殿」

「和睦しかありますまい」

「しかし冬尚様が応じて下さるか」

「説得するしかないですな。某から申し上げましょう」

「お頼み申す」


やれやれ、厄介なことになった。冬尚様が和睦を受け入れて下さるか。いや、その前に惟宗が受け入れるか。城から出てきたものはほとんど殺されている。使者を出しても話をする前に殺されてしまうのではないだろうか。

「問題は惟宗に和睦を認めさせることですな」

「資誠殿もそうお考えか」

「えぇ、惟宗には今回の和睦を受け入れる利点がないですので。冬尚様の説得と同時に惟宗へ使者を出しましょう。使者には某が行きます」

「お願いいたす」

さて、冬尚様を説得するか。


「和睦はせん」

冬尚様に和睦を話しをするとすぐに断られた。まぁ、予想通りだな。

「そこを何とかお願いいたします」

「ならん、死んでも和睦なんぞするか」

「お願いいたします。この城には女子供がたくさんおります。また、少弐と惟宗が争えば田畑が荒れ民の生活にも影響がでます」

「ええい、うるさい。其方は少弐の事さえ考えておればよいのだ。それを民の事を考えよとは僭越ぞ。龍造寺同様成敗してくれる」

「な、がはっ」

いきなり立ち上がり脇差で一突きにされた。まさか酒のせいで乱暴になられたのか。意識が薄れてきた。このままでは少弐が。資誠殿、あとの事はお、お頼み申しあげ、る。

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