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―――――――――1545年2月10日 勢福寺城 馬場頼周―――――――――

「酒だ、酒を持って参れ」

「冬尚様、その辺りでおやめくだされ。これ以上はお体に触ります」

「うるさいっ。酒をどれだけ飲もうが俺の勝手だ」

「しかし・・・」

「ええい、さっさと下がれ」

「はっ」

冬尚様に部屋から追い出されてしまった。いかんな、このような役は家兼に押し付けていたからかどのように言って良いかわからん。


「頼周殿」

「おぉ、資誠殿ではないか」

正面から歩いてきたのは資誠殿であった。

「冬尚様のご様子はいかがで?」

「変わらなく酒を浴びるように呑んでおられます。先程もお諌めしたのですが追い出されてしまいました」

「左様ですか・・・仕方ありませんな。あのようなことをして結果は惟宗の力が増しただけでしたから」

「誠ですな。あれが成功していれば大友殿の目も少しはこちらに向いたでしょうに」


今回の騒動、皆は村中崩れと言っているそうだがその真相を知る者は冬尚様と資誠殿と儂だけだ。

龍造寺離反の噂は前から流れていた。実際にはそのような事実はなかったが冬尚様が龍造寺を潰すことを望まれたため事実ということにして龍造寺を攻め滅ぼすことになった。反対する家臣はほとんどいなかった。それもそうか、龍造寺が滅べば少弐の力が大きくなり自分たちの発言力も大きくなる。少なくとも惟宗との力関係は対等になるはずだった。それを邪魔され結果としては惟宗の力を強め、少弐の力が弱まる結果となってしまった。これではやけ酒もしたくなるわ。


「国人たちの中には少弐屋形は頼りないと言っているものもあるようですぞ。おそらく惟宗の手が伸びていると考えて良いでしょう」

ふん、いよいよ本性を現しよったか。

「特に山内の国人たちには積極的に調略をかけているとか」

「山内というと勝利殿か。しっかり抑えてくれれば良いのだが」

「惟宗も領地が接しているので好条件で寝返りを打診してくるでしょう。あるいは今回の真相を話して少弐の信用を落とすことも」

そこに冬尚様の醜態か。まずいことになったの。


「資誠殿のところには惟宗の使者は来ませんでしたかな」

「きておりませんな。おそらく来たとしても戦が始まる直前でしょう。頼周殿のところには?」

「来ないでしょうな。儂は今回の龍造寺の仕置の中心にとして働いたのです。冬尚様の信用が落ちているのなら儂も同様かと」

「それを言うのであれば某もですよ」


―――――――――1545年2月11日 大友館 入田親誠いりたちかざね―――――――――

「父上、あの肥前の仕置はなんですか!?」

あぁ、まただ。また義鎮様が御屋形様に文句を言っている。どうせ言い返されて終わりなのだがらいい加減諦めたら良いのに。ほら、また御屋形様がしかめ面になっているではないか。

「義鎮、何が不満なのだ。親大内派は肥前から一掃されたではないか。大友にとって今回の騒動でえることができる最大の利益を上げれたではないか」

「しかし、惟宗の勢力が拡大してしまいました」

「同盟相手で婿の惟宗が大きくなるのは良いではないか。大きすぎるのは良くないが今のままでは我らに刃向かうことはせんよ」

「そのぶん少弐の勢力が縮小してしまいます。このままでは肥後のように国人たちを乱立させて大友が争いの調停者になることができません」

なんでそのことを言うかなぁ。調停者になるために菊池氏の乗っ取りをして失敗したばかりではないか。どう考えても機嫌が悪くなるでしょうに。三国の太守になるのだからもう少し言葉に出すときは考えなければ。大国だからと言ってわがままを言えるわけではないでしょうが。傅役とはいえこのような様子ではとてもではないが嫡男として堂々と外に出せないぞ。

あぁ、御屋形様の眉間のシワが深くなっている。あとで文句を言われるのは私なのですぞ。

「なにより、惟宗はまだ領地を求めているはず。肥前の主だったものは少弐しかいないのです。いずれは滅ぼされますぞ」

「気を使う相手が減ってよかったではないか。滅ぶようではそれまでということよ」

「今すぐ惟宗討伐を行うべきです。いずれは我らと敵対することになりますよ」

「そのときは潰すだけだ。今は儂の養女を嫁に迎えている以上敵対はしない」

「しかし・・・」

「もうよい。下がれ」

「くっ・・・御忠告申し上げましたぞ」

そう言い捨てて乱暴に部屋を出ていかれる。さて、私も下がるとするか。

「親誠、お前は残れ。話がある」

「・・・はっ」

いやだ、また文句を言われるだけに違いない。


「お主は義鎮のことをどう見ている」

「蹴鞠など京の文化に興味を持たれるなど文化に対する理解が深いと見受けます。また度胸もあり剣術の試合では真剣での試合を望まれる時がございます」

「そのような世辞は良い。正直なことを述べよ」

いや、正直なことと言われても流石に若を悪しきようにいうのは躊躇われる。

「ふむ、わかった。その方ら、少し外で控えておれ」

「「はっ」」

私が何も言わないのを周りに人がいるからと勘違いしたのか人払いを命じられた。

「これで聞いているものは儂しかおらん。正直なところを述べよ」

「乱暴で酒癖と女癖も悪くとてもではございませんが大友の当主としてふさわしくない一面をお持ちです」

「ふむ、そうか・・・」

御屋形様が考え込まれる。一体私は何に巻き込まれようとしているのだ。

「よし、わかった。もう下がって良いぞ」

「は、はぁ」

一体なんなのだ。私は何に巻き込まれようとしているのだ。

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