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いつまで

――――――――1648年7月4日 新撰組屯所 古川成久―――――――――

「失礼します」

そう言って局長室に入る。局長はいつものように書類に目を通していた。違うのは部屋の様子が南蛮風に変わっただけだ。

「お呼びと伺いましたが」

「ええ、今の状況を聞いておきたいと思いましてね。ま、座ってください」

「はい」

局長に促されて椅子に座る。南蛮の物にはまだ慣れないな。

「さて、どこから聞きましょうか。とりあえず、毛利・伊勢がかかわっていたという証拠は見つかりましたか?」

「警察局が見つけたもの以外は出てきていません。両名が閉門されている間に家宅捜索を行いましたが、明確に関与が認められるものは何も」

「さすがにそのあたりはきっちり処分したということでしょう。ま、当たり前ではありますが」

そう、当たり前なのだ。証拠は完全に処分して、提供する兵糧武器にも毛利・伊勢の関与が疑われるようなものは一切残さない。これが当たり前だ。それなのに武器から毛利や伊勢の家紋が出てきた?当主はともかく、家臣まで無能だらけなのか?そんなわけない。

「捜査してどう感じましたか」

「状況証拠と私の勘としか申し上げられませんが、おそらく毛利・伊勢は関与していたと思われますが、ほかの六条会は関与していないかと。問題は証拠が本物かということかと」

「裁くために必要な証拠は偽物の可能性がある。厄介なことですね。政争に利用されているのも含めて」

「現在、京で捕らえた丸橋を尋問しています。何かしらの証言を得たいところですが」

「新撰組内でも偽の証拠でも裁いていいのではないかという声があります」

「それはだめです」

「むろん、わかっています。偽の証拠で裁いたとして、政争の結果、偽物であると判断されれば新撰組、警察局の信用は地に落ちる。法の執行者たる我々は信用されなければいけない。それを警察局が理解しているかどうかは別ですけどね」

警察局はどう考えているのか。今回の件は局長である佐治につき合わされているだけなのか、警察局全体でしているのか。


「前の報告書では水陸軍が関与している可能性があるとありましたね」

「まだ断定はできませんが、憲兵とともに調査を行っています。ただ、奉行と次官は六条会、もう一人の次官は九州閥、いかに独立した存在である憲兵といえども」

「動きにくくはなりますね。由井正雪が仲間を集める際に個々人に任せるような手法をとったせいでなかなか追いにくいでしょう」

「はい」

杜撰で効率が悪いと思っていたが、失敗した際に身を守るという点ではあの集め方は優れていた。なにせ誰も参加している全員を把握していないのだ。誰にどんな尋問をしても誰かは逃げ延びる。そして新たに計画を立てる。

「水陸軍は浪人を兵として雇うという計画が潰されましたからね、上様を疎ましく思っていてもおかしくはない」

ああ、それもあるのか。となると陸軍全体が何となくかばっているという可能性もあるのかもな。憲兵もその空気を読んで手を抜いているという可能性も。はあ、なんて面倒な。


「それと熊次郎様が本当に謀反にかかわっていたのか、という問題もありましたね」

「これに関して奥村は、知らなかっただろうと言っております。計画にも拉致を前提としたものでしたので」

「ただ上様はどうお考えなのか。まだいないとはいえ、己の子に将軍を継がせたいと考えれば邪魔でしょう。今でも六条会を通じて影響力を与えうる場所にいます。いや、あの不思議な上様がそんなことを考えているのかわかりませんが」

「これもいましばらく時間がかかるかと」

「それがそうも言ってられないようでしてね」

そう言いながら書類の山の中から一枚の書状を取り出して差し出す。

「来週、最終報告書を提出せよと上様からの御命令が出ました。まあ、代筆ですし、字の癖からして島津光久がそれを望んでいるようですが」

「来週ですか」

あの丸橋がそれまでに口を割るとは思えないが、どうしたものか。

「ついでに鷺山会、光友から適切に処分が下されることを望む、なんて書状が届いています。まあ、六条会を潰せということでしょうね」

「どうされるおつもりですか」

「どう?決まっているではないですか。あの方にそうしろと言われたように事実を上様にご報告するだけです」

生きているもので唯一、惟宗国康公に仕えた局長らしい。

「報告書作成はあなたに任せます。真実のみを並べなさい。責任は私がとります」

「かしこまりました」


「しかし警察に軍に情報本部に新撰組、この政争はいつまで続くんでしょうねえ」

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