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龍造寺氏

――――――――1544年10月1日 塚崎城寝室 北原頼氏――――――――

「少弐に不穏な動きありだと」

国康様の声がすこし不機嫌なようであった。最近は面倒ごとが多いからだろうか。

「はっ、間違いありません。兵糧や武器を多くの商人から少量ずつ買い取っています。ただ龍造寺にそのような動きはありませぬ」

「妙だな。少弐領内に流した噂はどれほどまで広がっている?」

「かなり広範囲に広がっております。間違いなく冬尚の耳にも入っているかと」

「家兼自慢の曽孫のこともか」

「はい。少弐の御当主は龍造寺の分家の出で出家した円月坊に知力も腕力も劣る。また、家兼が事あるごとに円月坊と比べて頼りないと言っているといった内容の噂を流しました」

円月坊はもとから噂にはなっていたためやり易かったと言える。なんでも12・3の時には20歳の知力があったとか7・8人の領民が門戸をこじ開けようとして逆に1人で押し返したとか。それなりに優秀なのであろう。


「冬尚の反応は?」

「かなり怒っているようです。それに龍造寺が邪魔になってきたようです。おそらく今回の動きも龍造寺排除が目的かと」

「しかし、どのようにして排除するつもりなのだ?」

「それはこれから調べまする」

「出来るだけ早く頼む」

「はっ」

国康様の頭の中ではいったいどのような策が巡らされているのだろうか。少弐と龍造寺を対立させその隙に攻め込む?いや、それだけではあるまい。それでは大友を敵に回す可能性がある。それとも今回の婚姻でそれは問題ないと見ているのだろうか。


「他の国人たちはどうしている」

「馬場頼周は賛成しています。むしろ中心となって準備を行っています。神代勝利くましろかつとしは知らされていないようですな。横岳資誠はほかの国人たちを説得しているようです」

「どれほどの国人たちが同調するか分かるか」

「大半は同調するでしょう。残りも中立か見て見ぬふりをするかと。なにせ龍造寺がつぶれればその分自分たちの影響力が増しますから」

「東西千葉はどうだ」

「どちらにも知らされていないようです。西は龍造寺と縁が深いですし東は我らが家臣の離反の噂を流していたので」

「信用されなかったということか。まあ、いい。それより神代は今回の動きを把握していないのか。勝利はなかなかの名将だと聞いているぞ。正直なところ家兼と勝利がいるからあそこと結んだようなものだぞ。そんな奴が見過ごすか?」

本当だろうか?顔が見えないから分からないが声には冗談のような雰囲気はない。

「恐らく気づいてはいます。ですが勝利がまとめている山内の諸国人たちの意見が一致せず動けないようです」

「今は山内二十六ヶ山の頭だが数年前まではよそ者だったからな。あまり強気になれないのだろう。少弐が行動に出るまで纏まらないように噂を流せ」

「はっ」

「それと山内を中心に調略を仕掛けろ。騒動が起きればすぐに叩き潰せるようにしておきたい」

「はっ」

叩き潰す?それは少弐をということだろうか。それとも龍造寺?いったい何を考えられているのだろうか・・・。


「他に報告はあるか」

「ありまする。以前国康様が言われていた安芸武田氏の遺児を見つけました」

「なにっ。見つけたか。それで向こうはなんと」

「ぜひにと。ただ今は監視の目があるのでいずれ向かうと」

「そうか、わかった」

なぜ、わざわざ呼び寄せようと思われたのだろうか?以前聞いてみたが優秀な将になると言われた。国康様がぜひ自らの目で見てみたいものであるな。


――――――――1544年12月1日 村中城 龍造寺家兼――――――――

「少弐屋形が戦の備えをしている?それの何が問題なのでしょうか」

目の前の鍋島清房が首をかしげながら尋ねる。まだこのことが示すことが分かっていないのだろう。

「問題なのはこのことを我らに知らされていないことじゃ。普通に戦をするのであれば真っ先に我らに戦の備えをするよう言ってくるはずじゃ。だが今回はそのような様子はない」

「つまり我らを襲おうとしているということでしょうか?」

「いや、今儂らを攻めても国人たちの信用を失うだけじゃと思う。だが儂らを攻めないにしろ聞かれたくないというのは間違いない。儂が反対するようなことをしようとしているのではないかと思ってはいるのだが」

「例えば宗を、いや今は惟宗でしたな。惟宗を攻めようといているとか」

「だとしたら自殺行為だな」

今年の11月に予定されていた国康殿と義鑑殿の養女との婚姻は無事に終わったと聞く。奥方は病弱だが国康殿はかなり気に入ったとか。それに国康殿と義鑑殿の仲も良好ですでに義鑑殿の三男、塩市丸殿の烏帽子親になることが決まっているらしい。もし今、国康殿を攻めれば義鑑殿がどちらに味方するかは明らかじゃ。まさかそれがわからぬほど愚かではあるまいな。


「まぁ、よい。あと1月もすれば正月じゃ。その時に何をするつもりか確認して諌めねばな」

「諌めるのが前提ですか。それはなんというか」

「当然であろう。今さら戦を起こして勝てるわけがない。筑紫征伐にも失敗したのだぞ」

「そうでしたな。ここでまた失敗しては国人たちの信用を失います」

そこで抑えることができればよいのじゃが。最近、龍造寺が大内に内通しているという噂が流れているから信用されんかもしれん。

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