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だれに2

――――――――1647年10月15日 大坂城 杉村頼長―――――――――

「この辺りで休憩にしましょう。続きは昼餉の後に」

「光久殿の言うとおりだな、先ほどから同じような話にばかりなる」

議論が途切れたところで光久が休憩を提案する。その言葉に盛智殿が同意する。ちっ、いいところだったのだが、仕方ないか。

「では評定はいったん休憩とします。再開の時間は上様のご容態もございますので、おってお伝えします」

「ちっ」

光久の言葉に秀就殿が舌打ちをして部屋から出て行った。それに続いて皆がぞろぞろと部屋から出ていく。あれはもうどうにもならんな。多少なりとも味方になればと思っていたが、小さい毛利閥がさらに割れたのであれば価値はない。

「頼長殿」

「おお、盛智殿」

「とりあえず部屋はおさえさせている。とりあえずそちらに。信綱殿もすでに部屋に向かっている」

「わかりました。昼餉を運ばせましょう」



部屋に入ると信綱殿がしかめっ面で座っていた。

「お待たせして申し訳ない。すぐに昼餉を運ばせましょう」

「対して待っていないのでお気になさらず。それより先ほど、光久が光友とどこかへ向かっていたが」

「評定の打ち合わせでしょう。先ほども進行うまい具合にこちらの主張を妨害しながら光友を助けていた」

「失礼します」

そう言って小姓が入ってくる。

「昼餉をお持ちしました」

「そうか。おいていったらしばらく人を近づかせるな」

「かしこまりました」

そう言うとさっさと運び込んで部屋から出て行った。うん、うまそうだな。

「しかし想定とは違っていたな。光友は長成様と言っていたのではなかったのか」

「前日の甲寅会の会合までは長成様と主張していた。それがここで変えてくるということは九州閥に認めさせられたということだろう」

何とも情けない限りだ。これではたとえ長久様が将軍になったとしても光友より九州閥の力のほうが強くなる可能性が高い。


「しかしわざわざ長久様とはな。人となりだけを見れば熊次郎様が妥当だろう」

熊次郎様は血筋こそ長久様に劣るが、康正様の再来と言われるほど優秀と評判だ。元服前だのまだ若年だの歳のことをとやかく言っていたが、国康公の例を考えれば歳など大した問題ではないだろう。


それに対して長久様は、こういっては何だがあまり評判は良くない。歳は25と問題はなく、国康公の血を引き、父康久様は上様のいとこにあたる。だが国康公の趣味しか受け継がなかったといわれるほど、趣味の事ばかりに銭をかけている。将棋に能に歌舞伎、ほかにもお伽草紙にもはまっているとか言っていたな。そして政にはあまり興味を示さない。これがなければ満場一致で長久様だっただろう。


弟の康則様は上様と同じく病弱という話だ。だから可能性の低い熊次郎様をあえて支持して将軍にすることで、俺の権力基盤を固めようと思っていたのだが、似たようなことを光友が考えていたか。それとも九州閥の誰かか。九州閥の中心となる人物は光久だが・・・


「それでどうする。このままではおそらく多数決ということになりそうだが」

盛智殿が漬物を口に運びながら問う。

「確実に熊次郎様を支持するのは譜代閥の5人と徳川閥2人、毛利秀就、頼長殿筆頭に甲寅会5人の計13人か。一方、長久様を支持するのは九州閥5人と毛利就隆、光友はじめ甲寅会4人の計10人。旗本と無派閥次第ではギリギリ負けるな」

「市川文部奉行は大丈夫なのか。次官が二人とも光友についたのだぞ。それも今日にになって分かった。そうなると裏切る可能性がある。ほかの甲寅会も油断できんぞ」

盛智殿に続いて信綱殿が指摘する。

「市川については自分のほうから念を押しておく。熊次郎様になれば次官などどうとでもなると言えば安心するだろう」

「いや、真親殿は私が説得しよう。頼長殿が念押しすると不信感を持たれていると感じて、かえって光友に寝返るやもしれん。それから無派閥の者も私が説得する」

「では旗本閥は譜代が何とかしよう。派閥として付き合いが最も深いのは譜代閥だ」

「二人ともかたじけない。自分は光友に味方する甲寅会派に会おう。寝返れば上々、そうでなくとも光友に不信感が出てくるはず」

頼もしい味方だ。やはり九州閥のような強硬な態度をとる輩や秀就・就隆のように派閥を割る馬鹿とは比べ物にならん。最初にここを抑えておいて正解だった。

「それと、後見人を長頼様にお願いしようと考えているのだが」

「九州閥の不満を抑えるためか。今回の件には最初からかかわっておられないのだからそれがいいだろう」

「九州閥さえ押さえればあとは光友についた甲寅会を一人ずつ潰すなり剥がすなりできる。熊次郎様に決まった後も問題ないだろう」

さすが派閥の長、すぐに何を意図するものか察する。

「その話は再開後、すぐがいいだろう。この後会う無派閥からその話は言わせよう」

「そうですな、信綱殿。では私は旗本閥にあってくる」

そう言って二人はそう言って立ち上がる。

「お二人とも、お頼み申す」

「わかっておる」

「次は評定後に」

そう言って二人は部屋から出た。信綱殿が部屋を出て首をかしげたがすぐに歩き始めた。


当面の政はこの三人で決められるだろう。光友のせいで甲寅会は評定を支配することができなくなったが、甲寅会の影響力はまだまだ残せるな。あとは他の派閥との調整を俺がすれば必然的に井頼様のような立場になれる。

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― 新着の感想 ―
[一言] そろそろ新作が読みたいです、
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