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分裂と死

――――――――1647年10月14日 新撰組屯所 古川成久―――――――

「局長、古川殿が参られました」

「そうですか、古川だけ入りなさい。後は人払いを」

「はっ」

ここまで案内をしてくれた伝林坊が一礼して下がる。しかし何というか、局長もよく言えば柔軟だな。唐土出身の者を浪士調役に任ずるなんて。

「失礼します」

そう言って部屋に入る。しばらくお会いすることはなかったが、さすがの局長も老けたな。いや、いまだに現役のほうがちょっと異常というか。最初期から局長として新撰組率いているとか何かの冗談としか思えない。あれだけ局長を目指していた木曽組長が先に隠居するなんてあの頃聴いていたら何かの冗談だと思っただろうな。

「久しぶりですね。最後にあったのは・・・」

「九州に行く前ですので4年ほど前になります」

「4年も前ですか。年を取るとあっという間に時間が過ぎますね」

「御冗談を。局長ほど衰えとは無関係の人はいないでしょう」

老いはしても衰えはしていないはずだ。ついこの間も局長が指揮して白柄組構成員の半分以上を逮捕して大きく勢力を減衰させたばかりだ。

「いやいや、さすがに衰えました。それより九州での活躍、ご苦労であった。この短い期間で山中源左衛門を逮捕することができるとは。期待以上でした」

「あれはほとんど現地の警察や各藩の協力によってできたことです。自分の手柄では」

「現地の者たちだけではできなかったと、法務奉行所から礼が届いていますよ。関係各藩も膿を出し切ることができたと。君の調整力が実に素晴らしかったと報告も受けています」

なんだ、なんだこの違和感は。何かおかしいぞ。局長からこんな言葉を言われたことはそうない。何かさせられるのか。

「京都新撰組、横浜新撰組、博多新撰組と新撰組下部組織をその地域においてしっかりとした足場を固め、健全な捜査が行われるようにした。この調整力は非常に素晴らしい。これらの下部組織と本隊、そして警察との協力によって新撰組は日本の治安を維持することができる」

「あ、あの」

「どうだろう。そろそろ本隊のほうへ戻ってきてもいいのではないかな」

「本隊にですか。それはどこかしらの組長としてということでしょうか。しかしそれでは隊士たちも快く思わないのでは」

「いやいや、役職としては副長を考えています」

「ふ、副長!?」

いったい何段飛ばしの出世なんだ。いや、そもそも下部組織の長と本隊の上下関係は何となくうやむやになっているから何とも云い難いが。さすがに組長以上ではないだろう。これで本当に副長になれば下部組織の長である局長代理と本隊組長は同等ということになるのか。いや、いちおう頂上作戦の時の処罰として横浜に送られたはず。それが副長?

「君の歳と功績を考えれば順当でしょう。組長のなかで君ほどの手柄を立てたものがいません。横浜での工場従業員による一揆阻止、博多での山中源左衛門の捕縛。その中での横浜・博多新撰組の創設と安定。実によくやってくれています」

「ありがとうございまする。しかし過去に失敗がある自分では・・・」

「失敗は誰にでもあります。私も奴隷密貿易を完全に阻止することはできなかった」

珍しく局長が悲しげな表情をされる。あの表情が微笑で固定されている局長が・・・

「局長」

「あれの失敗は調整力のなさだと考えています。あの方が私に、新撰組に求められたのは突破力と中立性だったというのもあるでしょうが、それでも調整力がなかったのは悔やみきれません。これからの新撰組には調整力が必要です。どうか副長として私を助けてくれませんか」

「・・・ここまで言われて固辞することはできません。微力ですがお支えさせていただきます」

何か違和感はあるが出世できるのに固辞するというのも違うだろう。

「そうですか。ありがとうございます。では早速ですが君には極秘裏に特別隊を編成してもらい、井頼殿亡き後の混乱を防いでもらいたいと考えています」

さっきまでの悲しげな表情があっという間にいつもの微笑に戻り、局長はどこからか出してきた書類を差し出してきた。あ、やっぱり何かはめられた気がするぞ。

「特別隊ですか。それも極秘裏にというのは」

「甲寅会が大浦光友派と杉村頼長派に割れます。ほぼ間違いなく評定や奉行所を巻き込んでの政争になるでしょう。大浦派には九州閥、杉村派には毛利閥と六方とのつながりが懸念されている派閥がすでに味方に付くそぶりを見せています。そこに旗本閥や譜代閥、出世しているものは数少ないとはいえ多くの浪人に伝手がある徳川閥、普段は政にあまりかかわらない親族衆と荒れるでしょう。六方やそれらに属さない過激な浪人たちを使ってくる可能性が高い」

「それらをどうにかしろと。しかしそのあたりは上様がうまく調整されるのでは」

「残念ながらそれはできないでしょう」

できない?横浜に博多と中央から遠ざかっていたから知らないだけでそこまで愚鈍なのか。国康公や井頼様の血を引いているのに?

「上様は、人事不省に陥っています。情報ではいつ亡くなられてもおかしくなく、たとえ生き延びられたとしても政を行うのは無理だろうと」

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― 新着の感想 ―
[一言] ドロドロの派閥闘争楽しみにしてます
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