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武断

――――――――1631年2月10日 大坂城 惟宗長康――――――――――

「なんだこれは」

鹿之助の報告書を読んで思わず声が出てしまう。

「ここにあることは事実なのか」

「残念ながらそちらに書いてある大名らが何らかの形で六方と協力関係にある証拠がすでにいくつも」

中には六方を通じて幕府が禁じている大型の戦用の船を所有している馬鹿どもまでいるらしい。黒田め、真っ先にここは潰してくれる。

「ふざけよって」

思わず報告書を握りつぶしてしまう。いかんいかん、これに当たったところで意味はない。

「早急に潰す。新撰組は証拠固めを進めよ」

「譜代や毛利閥を中心にこれ以上の改易は浪人の増加を生み、治安が悪くなるのではないかという懸念が出ていると聞き及んでおりますが」

「かまわん。どうせ己が潰されたくなくてのたまっている妄言よ。浪人がいくら増えようと百姓にでもなればいい。開墾しなけれならない土地は高山国は海南諸島にいくらでもある」

開墾に対しては幕府が支援をするのだ。これで生きていけないとでものたまえばただの甘えよ。

「六方になられれば困るが、そのあたりは新撰組で抑えるのだろうな」

「はっ」

「ならば問題ない」

後で井頼に命じて改易の準備をさせよう。ん?

「甲寅会は六方と通じている輩はいなかったようだな」

「今回はそのような証拠は出てきませんでした。しかし道八会のほうはまだ調べが進んでおりませんので、何とも」

「そうか。まさかとは思うが、甲寅会に遠慮しているわけではないよな」

「滅相もございません。新撰組は上様にのみ従い、あらゆる勢力から独立しているからこそこのような捜査が行えるものと考えています」

「そうか。今後とも励め」

「はっ」

鹿之助が一礼をする。

「それで、院はどうしている。院政などと言う戯言は言わなくなったか」

「むしろ以前よりうるさくなっています。側近が六方に通じていたことよりも公家の逮捕とそれを容認した帝に対して不満を隠そうともしません」

「周りの人間が全員味方だと思われているのだろう」

いや、そこまで愚かだっただろうか。少なくとも一条が打った手を回避できる程度には頭はまわっていたはず。だとするとわざと言っているのか。何のために?

「公家どもはどうしている」

「こちらも公家の逮捕に対して不満を言っているようです。ですがあれは口だけだろうと一条様が申しておりました。結局は自分が逮捕されるのが怖いだけだと」

「意気地なしどもめ。それの相手であれば一条で問題なかろう」

「それより大きな声となっているのは次の東宮の件だそうです。院の強気もここにあるだろうと」

次の東宮か。どこぞの宮家から出せばいいと考えていたが。

「宮家の方々の考えは変わらんか」

「はい。まずは帝にできるだけ近い皇子が東宮になるべきであると。それでも継ぐ方がおられないときに非常の手段として宮家から誰かが継ぐべきであると」

「まあ、このような朝廷が混乱している状態で東宮になりたいなどと考える方はいないか。筋という意味でもそちらのほうが正しい。しかしそうなると」

「院が譲位されてからの皇子ということになるでしょう。まだいませんが、あの女好きの様子を見る限りは近いうちに生まれてもおかしくないかと」

「新撰組に仙洞御所の周りを警備と称して人を入れないようにするか」

「すでに中に何人も住まわせているでしょう。無駄かと」

「冗談だ」

となると皇子が生まれたらすぐに東宮にして仙洞御所から移っていただこう。父親に似られては困る。

「まったく、朝廷の相手に大名の不始末。やらねばならんことは多いな」

「そのような中、仕事を増やすようで申し訳ないのですが」

「なんだ」

「横浜に新撰組の下部組織を設置しようと考えております」

「横浜にか?」

横浜は関東にある幕府や九十九の工場で製造された製品が集まる場所だ。貿易のことを考えれば九州に工場を作るのがいいのだろうが、祖父様が関東の発展のためには必要なことであると関東に工場を集中させ、横浜の港を整備した。おかげで横浜は関東一の発展を遂げている。

「浪人や今回逃げ出した六方幹部に備える必要があると警察局と意見が一致し、その中心となるべく横浜に」

「京都新撰組のようなものか。いいだろう。財務奉行所に予算を出すよう命じよう」

「ありがとうございます」

「それでだれが局長をするのだ?」

「古川成久を考えております」

古川・・・ああ、前に連れてきた若い隊士か。

「譜代か」

関東は九州に次いで譜代が多い。

「ご懸念はお察しいたしますが、あれは身内だからと言って手を抜くような馬鹿ではございません。先日も情報を六方に流した親しくしていた隊士を自らの手で捕らえました」

「そうか、お前の推薦であれば問題なかろう。ほかの人事案も早急に提出せよ」

「はっ」

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