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失態と騒動の終わり

――――――――1630年11月20日 新撰組屯所 古川成久―――――――

「やらかしてくれたな」

組長たちがこちらをにらみつける中、名古屋副長がようやく口を開く。

「申し訳ございません。すべては自分の責任であります」

そう言って深く頭を下げる。

「京における大鳥組のまとめ役、山中源左衛門・水野成貞・坂部広利などを取り逃がした。これの意味は分かるか。この作戦の失敗を意味するのだぞ」

「申し訳ございません」

今回の頂上作戦で大坂のほうは幹部は全員逮捕に成功、組長の大鳥逸平は大立ち回りの末に捕縛した。今は余罪の追及をしているが、仲間や組のことについては一切話さないらしい。しかし組長と幹部の多くを捕らえたことで大坂の大鳥組は事実上の解散に追い込まれた。しかし京で活動していた大鳥組幹部は作戦前日までに京から脱出、献金を受け取っていた公家も数名取り逃がすという大失態をおかしてしまった。

「それもどこに逃げたかわからぬときた。大坂・京に集まっていた六方どもが日本中に散らばったのだ。今回逃げ出した幹部どもを中心に日本中で新しい組ができてもおかしくない。地元の荒くれどもとの争いで犯罪の数は増えるであろう」

「早急に逃げた幹部を捕らえるべく、検問の範囲を広げて捜索をしております」

「その検問も裏切り者を抱えていては意味がなかろうて」

東郷二番隊組長が不機嫌そうにひげをなでながら言う。

「今回の作戦が京の大鳥組関係者に漏れていたのは間違いない。そしてその情報元は京都新撰組であろう」

「しかし東郷組長」

「しかしもかかしもあるか。少なくとも今回の作戦で京都新撰組側の最高責任者である貴様には責任をとってもらう必要があるぞ」

「そうだ」

「作戦前に公家どもを逮捕しようとした動きで感づかれたのではないか。なぜ黙って勝手に行動を」

「申し訳ございません」

この場にいる方々の非難にひたすら頭を下げる。

「まあまあ、そのあたりでいいでしょう」

今まで黙っていた局長がゆっくりと口を開く。それに組長たちはいっせいに口を閉ざし、組長の言葉に耳を傾ける。

「現状、やらねばならないことは二つ。一つは逃げ出した大鳥組幹部を早急に見つけ出すこと。もう一つはどこから情報が漏れたのかを調べ上げること。そこまではいいですね」

「はっ」

「であれば成久にはこのまま五番隊組長として働いてもらいます。まずは院とその周辺の情報収集を。それから今回の事件で自棄になったものが帝や公家に危害を加えないよう警護の強化を」

「よろしいのですか!?これが裏切っている可能性もあるのですぞ」

「であればここで誰かしらに責任を押し付けようとするでしょう。信用して問題ありません」

「ありがとうございます」

出来ればそんなことをする奴ではないと言ってほしかったが。

「もちろん今回の件が片付き次第、何らかの処分は下されるでしょう。覚悟はしておいてください」

「はっ」

「逃げ出した大鳥組幹部の捜索は二番隊に任せます。警察局のほうにはすでに話を通していますので、警察と協力して見つけ出してください」

「はっ」

ただもう難しいだろう。ここまで時間が経過すれば船を使って逃げた可能性がある。そうなれば日本中が捜索範囲だ。

「それと今回押収した証拠品の中から徳川が大鳥組にかかわっていたことがわかりました」

「えっ?徳川は情報本部の罠で道八会と」

「道八会とつながっていたのは忠長派です。そして大鳥組とつながっていたのは家光派」

「けっ、徳川の内紛が六方どもの争いにまで広がっていたってことか」

そういえば徳川邸を出入りしていた火傷の男の素性が最後までわかっていなかった。道八会の誰かと思っていたが大鳥組だったか。

「逮捕された組員の中には徳川騒動で浪人となった者たちもいたようです。床下で見つかった金も大鳥組の献金を情報本部が利用したといったところでしょう。それ以外にも多くの大名との裏取引が確認されています。二番隊以外は手の空いている者たちを集めて合同捜査本部を結成し、それらの捜査に当たってください」

「情報を漏らした愚か者の捜査はどうするのかの?」

「私が調べます。何か質問はありますか」

そう言って皆を見渡す。誰も発言はしなかった。

「では解散ということで」

「「「はっ」」」


部屋を出てしばらくすると、局長が前から歩いてきた。

「局長、この度は」

「いいですよ。それより管理職はつらいでしょう」

「はあ」

「誰がしたかもわからない責任を押し付けられるのですからね。それでもそれをまた部下に押し付けなかったことは評価します」

「・・・ありがとうございます」

「ああ、それからこれ」

そう言って手に持っていた書状を渡してきた。

「頼みましたよ」

そう言って肩を叩くとさっさとどこかに行ってしまった。これは一体・・・。



新撰組屯所を出ると兼弘先輩が待っていた。

「別に待っていなくてもよかったんですよ」

「俺の部下が見逃さなければ問題なかった話だ。待つぐらいするわ」

ばつが悪そうに頭を掻きながら言う。

「それはどうも」

「で、処分はどうなりそうだ」

「正式決定は落ち着いてからだそうです」

「そうか、じゃあ手柄を挙げねえとな」

「手柄?」

先輩は何を言っているんだ?

「裏切り者を見つけるんだよ。それと逃げ出した幹部どもを見つける。でなきゃあ俺たちが処分されるんだぞ」

「そう、ですね」

「マサチカと連絡はついている。例の神社に行くぞ」

まあ、そっちのほうが都合がいいのか。あまり気が進まないけど。

「はい」


「おーい、マサチカ。来たぞー」

神社につき、先輩が大声で叫ぶ。

「うるせえな。二日酔いの頭に響く」

「おまえ、社を寝床にしてたのか。ばち当たるぞ」

「もう当たってるよ。で、何もわかってねえぞ、情報を漏らした奴については」

「なんだ、逃げ出した幹部の場所はわかってるのか」

「そうだが・・・」

怪訝そうな顔をして周りを見渡す。

「どっちがしくじったか・・・ガキか」

「あん?なんのことだ」

「ちっ、余計なもんに手え出してしまったな」

「何言ってるんだよ?ガキって」

「うるせえ」

そう言ってマサチカが走り出そうとするが、茂みから人が次々と出てくる。

「な、誰だ」

「局長直轄の組員たちです。先輩」

「なに?」

「京都二番隊組長内田兼弘、および元徳川家臣服部正就、機密情報漏洩の罪で逮捕します」

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