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大友義鑑

――――――――――――1543年6月1日 塚崎城―――――――――――――

鑑続が帰るのを見届けると思わず溜息が出た。何かしら動きがあるとは思っていたけど烏帽子親になるか。少しずつ肥前の影響力を強めていこうということか。


「熊太郎様、よろしかったのですか」

こういう時に初めに口を開くのは盛廉だな。役割分担でもしているのだろうか。

「構わん。今は大友とのつながりを強化しておきたい。その点では大友の重臣の娘が来るのは歓迎できる」

「いえ、そちらではなく元服の方です」

あ、そっちか。

「先ほどの提案でこちらが対等な関係を望んでいると分かったはずだ。義鑑が烏帽子親になってもそこまで問題にはならないはずだ」

何かあるとすれば二階崩れのときかな。いちおう多聞衆が義鎮よししげ、のちの大友宗麟おおともそうりんと義鑑の三男である塩市丸の近くに潜入している。うまくいけば塩市丸と義鑑が死なずに大規模な内乱に繋がるかもしれんな。その間に肥後・筑後で勢力を伸ばし大友以上の力をつけたい。そのためにも少弐征伐は必要だな。早く龍造寺討伐に動かないかな。


「しかし、諱が決まっているとは思いませんでした」

少し棘のある言い方だな、智正。

「それはそうだろう。なにせさっき考えたのだから」

「さ、さっき!?」

「ああ、今後宗の公式文書に押そうと思っている『国家安康』の初めと終わりを一文字ずつ取って国康と名乗る」

公式文書に国家安康の印を押そうと思ったのはスローガンのようなものがあれば家中の士気が上がると思ったからだ。それとこの四字を大義名分に攻めることもできる。多少苦しいかもしれないがそこは戦国時代。とりあえず形になってさえいれば問題ない。名前は・・・ダジャレで名字を決めたりしていることもあるし問題ないだろう。


「盛廉、今回の婚姻の準備などをお主に申付ける」

「はっ、かしこまりました」

「頼氏、今回の大友の行動を少弐がどう捉えるか、今後どう動くか探れ。あと天草郡の国人たちを争うよう誘導しろ」

「はっ」

天草郡の国人たちが争えば後から攻める時には国力が低下しているはず。楽に制圧できるだろう。


――――――――――――1543年9月1日 高良大社――――――――――――

「お初にお目にかかります。宗熊太郎です」

「大友義鑑にござる」

俺が頭を下げると目の前のおっさんも頭を下げる。これが九州北部最大勢力の当主か。見た目はどこにでもいそうな普通のおっさんだが頼周とかと比べるとなんというか雰囲気が違うな。

「この度は私の烏帽子親を引き受けていただきかたじけない。改めてお礼を言わせていただく」

「いやいや、この間もなかなか素晴らしいものを頂いたばかりだというのにその上お礼まで言われたらかえってこちらが恐縮してしまう。それにいずれは塩市丸の烏帽子親となっていただくのだ。そのようにすぐに下手に出てはいけませぬぞ」

「ご指導かたじけない。ところで後ろに控えている方は?」

かなり体格が良く目が大きな30代ぐらいのおじさんがずっとこちらを見定めるように睨んでいるのがかなり気になる。たぶん重臣だとは思うのだが。

「大友義鑑が家臣、戸次鑑連にござる。以後お見知り置きを」

「おお、舅殿となる方であったか。こちらこそよろしくお願いいたす」

まさか、のちの立花道雪だったとは。さっきは普通に歩いていたからまだ半身不随にはなっていないのだろう。今回ついてきたのは婿になる俺を見定めるためかな。


「しかし、よろしかったので。某の娘は病弱ゆえ迷惑をかけることもあるかと思うが」

「構いませんよ。これも大友殿と宗の発展のためになります。それに我が領内には明からの船が来るので漢方などの薬も沢山あります。ご案じ召されるな」

政千代が病弱なのは既に多聞衆が調べて把握済みだ。

それにしても政千代はどんな人だろうか。前世で政千代という娘がいたことは知らなかった。病弱だということは誾千代が生まれる前に亡くなっていたということだろうか?この時代だからただの風邪と侮っていては命取りとなる可能性もある。病弱であればなおさらだろう。


「政千代は気立てが良い。良い嫁になると思うぞ」

「それは会うのが楽しみですな」

「ふつつかな娘ですがよろしくお願いいたす」

「こちらこそよしなに」

どんな子だろうか?かるく多聞衆に調べさせたが病弱ということ以外はあまり分からなかった。


「ところで少弐殿の娘はどなたに嫁がれるのですかな」

「次男の塩乙丸に。長男の義鎮には幕臣の一色殿の娘をもらう予定となっているので」

「さすが、北九州最大の大名ですな。嫡男の嫁の実家の格が違う。もっとも大友殿もそれに負けていないと思いますが」

「いやいや、我が家は頼朝公に取り立てていただかなければ無名も同然」

「またまた、ご謙遜を」

落胤伝説はもう少し謙遜してほしいけどな。

「失礼いたします。元服式の準備が整いましてにございます」

「おお、そうか。では参るといたすか」

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