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大国

――――――1628年12月20日 浅井家上屋敷 浅井井頼――――――――

「今度はジョホール王国か。こうも頻繁に援軍を求められてはかなわんな」

酒を飲みながら調長殿がため息をつかれる。今日の評定で決定されたジョホール王国への援軍派遣の事だろう。

「仕方ありません。ジョホール王国とは同盟を結んだのです。アチェ王国に飲まれるよりは援軍を出したほうがよかった」

アチェ王国がジョホール王国へ侵攻の構えを見せたことで援軍を求めてきた。前例もあるうえに同盟を結んでいる以上、援軍は出さなければならない。それにアチェ王国は外に延びようとする意志が強い。できるだけ早い段階で叩いておかなければならなかった。

「だがこのままでは争いがあるごとに援軍を送らねばならなくなるぞ。それが影響力を増すということなのかもしれないが、財政上の問題もある」

「わかっております。とりあえずジョホール王国とアチェ王国は戦のあとに日本が仲介となって和睦をさせます」

「それがいつまで続くか」

そう言ってため息をつかれると残った酒を一口で飲み干される。

「唐土があのような状況である以上、南海においては日本以上の勢力は存在しないだろう。戦をしようと思えば勝てないことはまずない。だからと言ってこのように外への影響力を増すばかりでいいのだろうか」

「と言いますと」

「影響力が増せば当然しなければならないことが増えてくる。銭もかかろう、人手もかかろう。そのようにして外に力を入れていて足元は大丈夫と言えるか。現に朝廷との関係も怪しくなっている」

「帝の譲位ですな」

「そうだ」

一世一元の制を禁中並公家諸法度に追加してからすぐに朝廷は捕らえた僧の釈放と一世一元の制の見直しを求めてきた。しかし上様はこれを拒否された。その結果を受けて先日、帝は譲位を決められた。

「次の帝は惟宗の血をひかれる興子内親王殿下だが、おそらく院政を引こうと考えておられるのだろう」

「朝廷では惟宗に意思に従う一条らがいますからな。思い通りにできず窮屈な思いをされていたのかもしれません」

「上様はそれを認めるつもりはないだろう。公武の棟梁、それが先代が目指された鎮守府大将軍の形だ」

「とはいえ、我々にできることはないでしょう。我々のなすべきことはこの国をいかに費用を抑えて大国としての地位を維持するか」

大国としての地位が揺らげば英蘭を含め南蛮諸国がどう動くかわからない。だが費用が掛かりすぎれば大国の地位も揺らぐ。

「朝廷のことは一条様にお任せしましょう。新撰組も京に新たな屯所を作るようですし」


――――――1629年1月15日 新撰組京都屯所 古川成久――――――――

「あの」

「なんでしょうか」

「なぜ自分が京都五番隊の組長なのでしょうか」

「さあ、なんででしょうねえ」

そう言いながら局長がひげをなでる。

「普通に考えれば五番隊の隊員から選ばれるはずですが」

五番隊は要人警護が主な任務だ。おそらく京での役割は公家の方々の護衛などになるのだろう。

「大坂と京では五番隊の役割は違います」

「え?」

「大坂では要人警護でしたが、この京では一条の手足となって情報収集や操作、場合によっては暗殺」

「あ、暗殺」

「そうです。これまでは情報本部がしていましたが、新撰組が引き受けましたからね。まあ、さすがに情報本部のように現場の判断だけで殺しはさせませんよ。必要であればこちらから許可を出します」

逆に言えば暗殺の必要があると判断されれば自分たちは殺さないといけない。これは困ったなあ。

「でもそれは自分である必要はありませんよね。なんで自分なのでしょうか。伍長になった兼弘先輩でも問題なかったはず。いや、歳を考えればそっちのほうが妥当」

「たかだか数年早く生まれただけでしょう。それに私が局長になったときは年上の部下なんてたくさんいましたよ」

「それは局長が」

「新撰組は性質上、あらゆる勢力から独立していなければならない。とはいえ、信用という点ではやはり譜代が一番なのです。今はどれだけ距離をとられていたとしても」

局長も自分も、ともに譜代。対して先輩は信濃木曾氏の流れ。

「たかが生まれで」

「たかが生まれ、たかが譜代。信用なんてそんなものですよ」

「そんなって」

「それに表向きの任務である要人警護は彼に頑張ってもらおうと思っています。君は情報収集のほうに力を入れていただければ」

「はあ、わかりました」

もう何でもいいや。仕事をすることだけに集中しよう。

「早速ですが、五番隊には動いてもらいます」

「まだ荷ほどきも終わっていないのですが」

「来月の帝の御譲位の警備をお願いします。分かっていると思いますが、これが終われば院政に移ろうとされるでしょう。それに協力する勢力を速やかに特定、監視してください」

「隊員はもちろんその手のことは」

「問題ありません。もともと存在しない隊に所属していた隊員たちですから、その手のことには慣れています。ちゃんと指揮してくれれば問題ないでしょう」

「・・・わかりました」

いろいろ疑問が出てきたがそれを飲み込んで頭を下げた。

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