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派閥争い

――――――――1619年4月30日 大坂城 浅井井頼――――――――――

「ではそろそろ始めましょう」

信之殿が声をかけると一気に静かになる。今日が私にとって、甲寅会とって一番大事な日になる。

「では、井頼殿。お願いします」

「はい。今回は唐土での騒乱についてです。ご存じのように金が七大恨を日本や諸勢力に送り、明との対立姿勢をあらわにしました。そして去年、明の拠点がある撫順を攻撃。明もそれに対応して金討伐の兵を送りました。金に敵対する女真族や朝鮮も明に味方し、1万の兵が鴨緑江を超えました。しかし四路に分けられた軍を金は各個撃破、金の大勝に終わりました」

そこまで言って一度周りを見る。全員に緊張感が見えるな。

「明はこの敗戦で慌てて日本に援軍を要請してきました。また同時に金からも使者が参りました。理由は先の戦による朝鮮との通商停止、蒙古の中立です。ここで日本が明に味方することになれば危ういと見たのでしょう。戦の前に日本に七大恨を送ったにもかかわらず、表向きは反応を示さなかったことも不安になる理由の一つかと思われます。また、日本を通じて朝鮮との通商を再開させようという考えもあるでしょう」

「それで、さすがにここにきて中立というわけにはいかなくなったと」

ここで久保殿が声を上げる。

「まあ、唐土の品を南蛮に売ることで少なくない利益を得ていますからな。奉行はどうお考えになりますか」

「皆の意見を聞きたいな。唐土は難しい。易姓革命がおこるし、異民族もある」

「わかりました」

少しいらだったような表情をしながらうなずく。事前の根回しでもこのような調子だったからどう考えているかよくわからないんだよな。

「井頼殿はどうするべきとお考えですか」

「金に味方するべきと考えます」

これは甲寅会で話し合って出した結論だ。

「明の態度は属国や格下に対するようなものでした。それに対して金は対等な同盟者として日本を扱いたいとしています。どちらにつくかは明白かと」

「私は反対ですな」

突然の発言に皆、一斉に武弘総合外交政策局長のほうを見た。

「私は時間がかかったとしても明が勝つと考えます。目先の利益に目がくらみ金に味方して大きな利益を失うのは避けるべきです」

「私もその考えに賛成します。人口の差で明らかに金が不利です」

武弘局長の発言に守隆南蛮局長も賛同した。これに久保殿がにやりと笑った。主導したのは外務奉行所での九州閥の中心である久保殿だな。だが九州閥と徳川閥の反対は予想通り。だが

「私は井頼次官の意見に賛成です」

発言をしたのは松尾智則人事局長だった。竹中重義前局長が逮捕されたことで徳川閥に嫌われたが、譜代閥の智則殿に恩を売ることができた。事前に調長殿とともに根回しをしておいてよかった。久保殿は想定内だったのか、意外と落ち着いた口調で尋ねた。

「それはどういうわけかな」

「先ほど、守隆局長が人口の差を口にされましたが、明の民は明の朝廷に対して不満をためており、一揆がおきるのは必至。むしろ人口が多いほうが反乱がおきたときの混乱が大きいのでは」

「それは情報本部が介入すればいい」

「反乱は民の意思。指導者の一人二人殺したところで新たな指導者が生まれるだけです」

守隆局長の反論を軽くあしらう。

「楢崎はどうだ」

信之殿がこれまで発言をしてこなかった元好南海局長に話を振った。ここで毛利閥の意見を聞いておきたいというところか。

「自分はもう少し様子を見てもいいのではないかなと思いますが。状況次第ではこちらの利用価値を高めることもできますし」

「しかしこちらの信用を失わないか」

「それは我々の腕の見せ所と言ったところですよ、奉行」

何というか、毛利閥らしい意見だな。外務奉行所に所属しているとはいえ、外のことにはあまり興味がないというか。それもあって外務奉行所内での毛利閥は非常に少ない。ここでは甲寅会か九州閥・徳川閥のどちらかの意見になると考えてどっちつかずの意見を述べたといったところだろうか。このままでは数の上ではこちらが不利か。

「では最後に君島」

「はい」

奉行の言葉に皆が永胤唐土局長のほうを見る。担当部署の意見は重要だからだろう。

「私は、金に味方するべきと考えます」

「なっ」

永胤局長の言葉に驚いたように武弘局長が立ち上がる。そうだろう、この会議の前までは九州閥に対して明支援を推すと言っていたのだから。

「騒がしいぞ。君島、続けてくれ」

「はい。まず日本が支援するほうが唐土を支配するでしょう。そうなったときに万が一、敵対するとなるとどちらが都合がいいか。これは金のほうでしょう。女真族は騎馬を用いて戦をしていますので海を越える戦は明と比べて苦手です。また今回の戦には金が勝ちましたが、日本に対等な立場で支援を求める程度には危機感を持っているのでしょう。こちらのほうが恩を売ることができます」

「しかし必ず金が勝つとは限らないぞ」

「明が必ず勝つとも限りません。ならば勝算の高いほうを選ぶべきでしょう。そして今回の場合は際の戦で勝ち、勢いに乗っている金かと」

「では、決まりだな」

久保殿が何か言いだしそうになる前に信之殿が言う。

「担当部署の君島の意見を信じよう。外務奉行所として金を支援すべきと次の評定で上様に申し上げる」

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