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甲寅会

――――――――1614年2月10日 浅井家上屋敷 浅井井頼―――――――

「まさかこのようなことになるとはな。使節団として南蛮諸国を回っていたころには想像できなんだ」

そういいながら調長殿が葡萄酒を一口飲む。興元殿は酒を飲みすぎてすっかり眠ってしまっている。宗矩殿と直文殿は仕事の関係でどうしても今日はこれなかった。直文殿が持ち込んだ葡萄酒をもとに甲斐で作ったらしい。なかなか悪くないけど、やはり南蛮のほうがうまいかな。

「上様も奇妙なことをお考えになられる。わざわざ派閥争いの火に油を注ぐような真似を」

「上様にはその火を操れるとお考えってことでしょう」

そういいながら葡萄酒を飲む。俺はどちらかというと清酒のほうが好きかな。唐土の酒も悪くはないけど、やはり日本のもののほうが体に合う。

「だいたいそこまで派閥争いはひどいのか。個人的にはあまりかかわってきていないからよくわからないのだが」

「調長殿は譜代の方々に何か声をかけられたりしそうだが」

調長殿は譜代なのだ。譜代閥に声をかけられていてもおかしくないだろう。

「たまにあるが、やはり人間関係が出来上がったところに帰ってきたので浮いているからな。奉行も無派閥の高虎殿ということもあるし」

「外務奉行所はかなり主導権争いが激しいですぞ。外務奉行所はこの国の行く末を決めうる立場にある部署の一つ。派閥の発言力を強めるにはもってこいだ」

「その点、産業奉行所は直轄地関連の部署が多い。徳川閥や九州閥らには魅力的に見えないのでだろうな」

「産業奉行所の役割は重々承知していますぞ」

「ありがたいことだ。で、派閥を作るとして誰に声をかける」

「その前に派閥についてある程度お互いの共通認識を持ちましょう。もっとも、水軍の話を聞くつもりで興元殿を呼んだのですが」

起きる気配はないし、明日にでも聞けばいいか。

「そうだな。まずは主だった派閥。これは譜代閥・徳川閥・毛利閥・九州閥・旗本閥」

「譜代閥の中心は」

「財務奉行所の倉野良通殿だな。先々代のころから銭にかかわることをしてきた。政策的には大名の力を抑えようと考えているものが多い。それに結局は予算を握っている財務奉行所が強いのだよ。それと水軍は譜代閥に近い。おかげで船を作り放題だ」

「そこまではいかないでしょうけど陸軍と比べると優遇されていますな。上様が水軍重視というのもあるでしょうが。徳川閥の中心は法務奉行の本多正信殿。しかしこれはあまり徳川寄りというだけで公正に仕事をしていると感じます。次官以上に徳川閥は少ないですが、局長級になると一気に増えている。私たちが隠居するころにはどうなっているかわかりませんな」

もっとも、そこまでの責任を取れと言われても困るだけだが。

「政策では経済より農業といったところでしょうか。それから大名の力を増やそうとしている」

「毛利閥は文部奉行所次官、毛利輝元殿。当人の地位は低いが、財務奉行所主税局に嫡男が、国税局には吉川から嫁を貰った益田元祥がいる。量より質といったところか。大名の権限強化という点では徳川と同じだが、農業より経済、それも国内の経済を優先すべきと考えている」

「九州閥は首席補佐官の吉弘康理殿だな。それと宗矩殿の話では陸軍内でも九州閥に近い者がいるらしい。水軍に対抗してってところだな。ほかの派閥が戦がない世でどう発展するかという点が共通しているのに対して、ここは他国との戦を積極的に行いたいらしい」

「旗本閥は内務奉行の石田三成殿。勢力としてはここが一番弱いでしょう。しかし先代様・先々代様のもとで仕事をしたという実績があるため、派閥と呼べるものを形成している。政策的には譜代閥に近いですが、もっと過激です。一部には大名をなくして日本を直接惟宗が支配する形を望んでいるようで」

さすがにそんなことをすれば費用は莫大なものになるだろう。あまり現実的ではない。

「派閥としてはこんなものでしょう。後は中間層といったところで」

「ある意味ではそこが一番多いのだがな。それで、我らはどういう政策をするつもりで」

「そんなもの考えていませんよ」

考えていたら危険視されかねないからな。浅井のような弱い家は中間層にいるに限るのだが。

「では政策の研究という名目で集まりますか。今は使節団員だったからという理由で集まっていますが、これからはそういうわけにはいかない」

「そもそも誰を中心とするか。私だと弱いでしょ」

「情報本部・・・は上様以外が近づくのを嫌うし、新撰組だと余計弱いし」

「親族衆の方々はどうでしょう」

「大丈夫か。基本的に無派閥といったところだろう」

「しかし上様の跡継ぎが生まれなければ跡を継ぐのは親族衆のどなたかです。もう10年もたつのにまだ生まれないのですぞ。このままでは親族衆のどなたかが上様の養子となり跡を継ぐことになる。その時に親族衆の方々に近づく派閥もあるでしょう。そうなる前に名目上の主催者として」

「なるほどな。どなたに頼む」

「康正殿のご子息、貞勝殿です」

「悪くない。後はその研究会の名前だな。いいのはあるか」

「そうですな・・・今年の干支は甲寅ですし、甲寅会というのはどうでしょう」

イメージとしては

譜代閥→幕府の権限強化

徳川閥→大名の権限強化・重農主義

毛利閥→大名の権限強化・国内経済優先

九州閥→対外強硬派

旗本閥→大名の根絶・重商主義

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