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慶長遣欧使節

―――――――――1613年5月10日 大坂城 浅井井頼―――――――――

居心地がかなり悪い。

外務奉行所内での会議である外務政策会議が行われる前なのに、いちおう次官なのに誰も話しかけてこない。同じ次官の久保殿の周りには大内武弘総合外交政策局長を筆頭とした九州閥が、奉行の信之殿の周りには竹中重義人事局長・九鬼守隆南蛮局長を筆頭とした徳川閥に近しい者たちが、楢崎元好南海局長の周りには毛利閥が集まっている。俺のような派閥にあまりかかわっていない君島永胤唐土局長も同じく派閥にかかわっていない部長・課長たちと交流を深めている。しかし俺のもとには誰も来ない。使節団として日本にいた期間が短かったうえに、武弘局長が元部下なのに今は上司になっている俺を嫌っているため、ほとんどの人間が俺に話しかけてこない。これで上様は唐土のほうに対応しろと言われるのだから無茶を言う。

「申し訳ない。遅れました」

そういって松尾智則総務課長が入ってきた。

「ではそろそろ始めましょう」

そういうと皆、一斉に椅子に着く。外務奉行所では南蛮との交渉を行うため、椅子と机を用いて会議を行っている。

「井頼殿、お願いします」

「はい」

信之殿に促されて立ち上がる。いくつか不満そうな顔が見えるな。評定で決められたとはいえ、俺が中心となってこの計画を進めているのが気に食わないのだろう。

「先日の評定にて上様より、再度南蛮に使節団を送るようにとの指示がありました。計画書については各役所に分担させていただいたのでここで説明させていただきます。今回の使節団の目的は二つあります。一つはイスパニアに行き、海南諸島の所有権について正式に日本のものとすること。もう一つは阿蘭陀等の国々に現状の日本の領土を認めさせて、日本人の安全を保障させること。この二つです」

「阿蘭陀等と言われましたが、前回の使節団で立ち寄った暹羅などの南蛮以外の国々はどうなのでしょうか」

質問をしたのは林勝久安全保障政策課長だった。

「暹羅などには日本を侵略する意思ないし実力は不足していると判断しました。これは水陸軍奉行所も同様の意見です。よって今回の使節団派遣では補給以外では立ち寄る予定はありません」

そのあたりのことは九州閥や譜代閥がよく知っているだろう。水陸軍は幕府の戦力。そのため譜代や準譜代と呼ばれる者たちがどうしても多くなる。

「それに対して南蛮は自国以外にも拠点を作ろうとしています。数年以内にその意思があろうとなかろうと日本を攻めるための拠点はできるでしょう」

ユダヤ人たちへの扱いを見た以上、それが日本人にも向かわないとは限らない。それに備えて打てる手は打っておかないと。

「今回の使節団にはほかの奉行所の参加はありません。そのため今回は船を動かすものと護衛以外は4人とウィリアム・アダムスとします」

これが難しいんだよな。ある程度、派閥に気を使いながら構成を決めないといけない。俺やほかの使節団員の前例も考えて使節として帰ってくれば出世は約束されていると考えるものが多い。俺は次官、宗矩殿は憲兵司令官、調長殿は次官、興元殿は第2艦隊司令官。幕府に仕えていない三人も幕府からかなり厚遇されている。

「代表は松尾智則総務課長。残りの三人は前田利常・上村家政・少弐資政」

智則は譜代閥、利常は派閥なし、家政は徳川閥、資政は九州閥にも毛利閥にも近い。それに若いわりに国のため幕府のために働こうという意思のあるものと聞いている。上様に頼んで新撰組に協力を頼んで調べたが問題ないと判断した。そのせいで外務奉行所内の不正摘発に協力させられそうなんだけどな。なんで俺がこんなことを。多分、宗矩殿と同じような理由だろうな。新撰組局長は譜代の鹿之助殿だし、これで俺も譜代閥扱いなのかな。譜代じゃないけど。父上は敵対したけど。

「次に日程について。出航は10月28日です。6月にイスパニア領のメキシコシティにてイスパニアの使節団と会談します。その交渉が終わり次第、英蘭・阿蘭陀・仏蘭西を訪れます。その後、来た道を引き返します」

「イスパニアとの交渉がまとまらなければどうなる」

信之殿が不安そうに尋ねる。そういえば利常とは個人的に親しくしていると聞いたことがあるな。

「その場合はすぐさま引き返します」

今回の交渉は実質的な和睦交渉。個人的はもっと経験を積んだ人に行ってほしかったのだが、そういう人はだいたい出世争いに負けて地方に飛ばされるかほかの奉行所に回されているんだよな。ま、乱世の時と比べると誰もが経験不足か。

「阿蘭陀等にはいかなくていいのでしょうか。費用の点からみて財務奉行所あたりが何かしら言ってくる可能性がありますが」

重義殿が銭を管理する人事局長らしい質問をする。

「敵の領地で交渉を行う以上、引き返すときは安全を第一で行動してもらいます。上様の命令ですので財務奉行所もあまり突っ込んでこないでしょう」

「わかりました」

「ほかに質問のある方はいますか」

そういって周りを見るが誰も発言をしない。

「ではこれでこの議題は終了させていただきます」

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