慶長三陸地震
―――――――――1612年1月15日 大坂城 惟宗長康―――――――――
「はぁ。とてもではないが新年を祝おうという気がしない正月だが、さっそく評定を行おう。総務奉行所」
「はっ。資料の2枚目をご覧ください」
総務奉行の貞信が発言をする。
「今回の津波での被害一覧となっています」
「かなりひどい被害となっているな」
地震自体は大したことなかったらしいが、津波のせいで大勢が亡くなった。
「食料の備蓄も津波で流されたところがほとんどです。現在は九十九に格安で米を買い入れ無料で配布しています。復興のめどが立つまではこれを続けていく予定です」
それは仕方ないだろう。ここで死なれてはほかの直轄地の百姓たちが不安がる。そのせいで直轄地から大名領に行かれては困る。
「天災であれば仕方ない。とりあえず被害にあった直轄地の年貢は当面の間は免除とする。財務奉行所、問題ないな」
「はい。これだけの被害であれば収穫は不可能。むしろ無理に年貢を取って復興が遅れるほうが損が多いかと」
「九十九にも何らかの見返りを用意してやらんとな。産業奉行所、石鹸か何かの特許料を安くしてやれ」
「かしこまりました」
しかし天災が多いな。この津波の3か月前には会津でも地震があった。康正大叔父上もせっかく隠居したのに、また大慌てで仕事をしているらしい。あの人もそうそうゆっくりできないな。
「大名たちはどうするつもりなのだろうか。対策次第では大名領から人が逃げ出す可能性もあるだろう」
「さすがに年貢の免除は不可能でしょう。収益の大半を年貢に頼っていますので。しかしそれでも減収は免れないでしょう。まず借金まみれになるでしょう」
借金まみれか。貸し付けは九十九だけだが、さすがに回収できないと判断すれば貸し付けないだろう。そうなれば何もできなくなるな。多くの藩が家臣たちの領地を直轄地化する代わりに一定額の銭を渡す蔵銭制を用いている。もし藩に銭がなくなれば家臣たちはどうするだろうか。幕府としては九十九の損失は幕府の損失につながる以上、回収できる見込みがないのに貸し付けさせることはできない。
「もし借金を抱えたまま改易となった場合、その借金はどうなる」
「現行の法律では藩主が負うものとなるでしょう。藩に貸し付けているというより藩主に貸し付けているという形ですので」
俺の質問に正信がすぐに答える。何人か不愉快そうな顔をするがさすがだな。
「では改易をする際は幕府が借金を肩代わりするという法律を作らないか。それとともに武家諸法度に自ら改易を申し出ることができるよう改正するというのは」
藩主からすれば借金で押しつぶされる前になんとか自分だけでも助かるすべができる。幕府からしてみればどうせ肩代わりしようとも九十九の利益は幕府の利益のようなもの。大した損失ではない。むしろ藩領を手に入れることができる。
「それはよろしいかと」
最初に意見を言ったのは三成だった。
「諸藩にとっても幕府にとっても利益のあるものです。さらに万が一の時は幕府に助けてもらう必要がある以上、諸藩も今まで以上に幕府に対して強く出ることができなくなるでしょう」
なるほど、そのように活用することもできるのか。
「法務奉行所はどう思う」
「幕府の影響力が増すという点においては賛成です。しかし借りるだけ借りて逃げられる可能性が」
銭だけ持って逃げて後始末は幕府に押し付けるということか。それは不愉快なことだな。
「そこは実際に改易するかどうかは申し出てきたとしても実際にするかは幕府が決めるとするのはどうでしょう。それから藩の資財はすべて幕府が差し押さえるというのは」
「なるほど。仮に銭を持って逃げたとしても新撰組なりなんなりに捕まえさせることができるな」
まぁ、そこまでして先祖伝来の土地を手放そうとするかというとそうでもないような気がするが。
「ではその方向で法案を作ってくれ。総務奉行所は復興計画を早急に提出するように。次は陸軍奉行所。呂宋の警備計画だな」
「はっ。資料をご覧ください」
康胤が皆に資料を見るように促す。
「現在、日本に敵対的な行動をとる勢力は呂宋および周辺諸島には存在しません。そのため上陸阻止を目的とした配置となっております」
「水軍奉行所、拠点の建設はどうなっている」
「現在計画を立てております。次の評定には提出させていただきます」
「そうか。次は・・・特にないな。では次は俺からいいか。主席補佐官」
俺の言葉に補佐官たちが資料を配る。奉行たちは怪訝そうな顔をしながらそれを受け取った。次官連絡会議ではそのような話はしていなかったからな。
「最近はあまり景気のいい話がないからな。このあたりで俺の元服の時のようなことをしてみようと思ってな。補佐官たちに計画を立てさせた」
父上たちが行ったようなものだな。
「この行事では5日ほどを予定している。内容としては将棋の棋王戦と囲碁の棋聖戦と茶会、それから各地の兵法者を集めて競う大会を行う」




