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筒井騒動

――――――――1609年11月23日 筒井城 惟宗貞勝―――――――――

「この度はわざわざお越しいただきありがとうございます」

「なに、従姉の葬式だ。親族として参列せねばと思ってきたまで。他の親族は忙しいからな」

中坊秀祐が頭を下げる。上様は言うまでもなく大友一家は呂宋攻めで大忙し、一条も猪熊が起こした騒動の後始末、父上も去年隠居してから体調がよくない、康久や弟たちは最近与えられた領地での政で忙しい。それで一族を代表して俺が葬儀に参列することになった。筒井は外様とはいえ当主である貞次殿は惟宗の数少ない親族だ。そう簡単にないがしろにできる大名ではない。

「しかしこう言っては何だが、筒井の噂でいいものは聞かんぞ」

「お恥ずかしい限りです」

否定しないか。どうやら噂は本当だったか。貞次殿は政に興味を持たず鷹狩ばかりしている、酒色に耽っている、贅沢ばかりしている、家臣たちの対立も纏められないなど聞いていたが。

「大方様も亡くなる間際までそのことを気にかけておられました」

「貞次殿はどうしている。本来であればこうしているのは貞次殿であるべきだと俺は思うのだが」

「お部屋で休まれております。大方様が亡くなられて随分と気を落とされています」

「気持ちは察する。大政所様も亡くなられたという知らせを聞いてからすっかり気落ちされて以前のように活動されなくなった。しかし当主として、藩主としての自覚は持っていてもらいたい」

幕府内でも筒井の評判は良くない。旗本を中心に大名の数を減らすべきと考えている者は少なくないなかで、そのような行動をされればどうなるか分かっているのだろうか。

「そのことなのですが・・・」

「なんだ」

「先程仰られたように殿に関してあまりよくない噂が流れています。しかしそれは噂ではなく事実です」

「家臣同士の争いもか」

「現在、筒井は二つに割れております。一方は現在の財政難を乗り越えるための改革を進めたいものたち、他方は現状を維持したいものたち。殿は噂通り政に興味がございません。しかし己が贅沢のために前者の者たちを重用されています。某もその一人です」

いきなりずいぶんとぶっちゃけた話をし始めたな。

「我々は初めに、幕府と旗本の関係のように領地をすべて筒井家のものとすることにしました。そして家臣たちには数か月に一度決まった額の銭を渡すのです。しかしこれに対して後者がかなり抵抗しています。ここ最近までは島清興殿が反対派を抑えていたのですが、去年亡くなられて。さらに今回、大方様も亡くなれたことでこれまで以上に」

「家中での争いが激しくなると」

「すでに激しくなっています。今回の葬儀で違和感を覚えなかったでしょうか」

違和感か。確かに感じたな。

「随分と待遇が違うものがいたような気がするな」

「今回の葬式では知行に応じて差をつけられたのです。賛成派は当然ながら率先して知行を筒井家に差し出していましたので」

「反対派に比べて待遇が悪かったのか」

親族として愉快な話ではないな。

「それで何が言いたいんだ」

「このままでは大和藩は分裂してしまいます。幕府よりどうにかうまくいくように介入していただけないでしょうか」

こいつ正気か。最悪の場合、武家諸法度違反と判断されて取り潰される可能性もあるんだぞ。貞次がすぐに休んだことと言い、筒井は幕府の内情を全く把握していないのか。それともこいつは俺を通じて幕府に知らせることで直臣になることを望んでいる?よく分からん。

「それで具体的にはどうしたいんだ」

「それは幕府にお任せいたします」

もう意味が分からん。筒井を潰したいのか。それとも本当にどうにかしてくれると思っているのか。大名の数を維持したいものたちもいるから問題ないと思っているのか。いることはいるが少数派だぞ。それにそういう者たちは自分さえ良ければどちらにも転ぶぞ。一部しか見えていない。それとも最終的には親族衆が少ないことを理由にうまくまとめてくれるとでも思っているのか。俺も親族衆だから何とかしてくれるとか。

「どうか幕府の力をお借りして筒井の再建に力を貸していただきたく」

「とりあえず幕府には伝えておこう。それがお前にとって良い方向になるかどうかは分からんが」

「よろしくお願いいたします」

いや、よろしくされたところで俺がどう頑張っても伝わった時点で終わりだろ。だいたい何をどうよろしくされればいいんだよ。

「もし筒井が取り潰しということになればどうするつもりだ」

「その場合は幕府のため、惟宗のために働きたいと考えております。それとこれはほんの気持ちですが」

そういって桐箱を差し出す。結局直臣になりたいのかよ。

「では某はこれで失礼させていただきます。ごゆっくりされて行ってください」

そういって部屋を出ていく。最後まで何がしたいのかよく分からなかったな。

「ま、いいか」

中身は何か知らないが俺は俺の信条に合わせて行動するのみ。とりあえず大坂を守るうえで大和は直轄地とした方がよかったからな。大名の数を減らしたい俺としては一石二鳥。とりあえず武家諸法度違反で訴えるか。

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