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予定外

―――――――――1608年3月20日 大坂城 惟宗長康―――――――――

「では次に陸軍奉行所」

「はっ。お配りした資料をご覧ください」

指名されて康胤が資料を見るように促す。資料には呂宋及びその周辺の島々の絵とどのあたりまで制圧できたかが書かれてある。国防会議だから昌幸が説明するかと思ったが。

「現在は呂宋島のほぼ全域を制圧しました。またすぐ南にある島、この島は唐土の商人が摩逸と、イスパニア人がミナ・デ・オーロと呼ぶ島なのですが陸軍奉行所としましては暫定的に摩逸島と呼んでいます。この摩逸島もほぼ全域を制圧しました。しかしそのまた南、呂宋島とマギンダナオの間にある島々はイスパニアがこの周辺を支配下に置く際に真っ先に押さえたところが多いため、抵抗は激しいものです。しかしこちらに攻めてくる余裕はなく、敵の兵站においても不安が残ると予想されています。時間をかければ問題なく制圧できるでしょう」

「敵の兵站に不安があるのは分かったが、こちらの兵站はどうだ」

元服前、傅役たちは祖父様が戦において最も重視したのは兵站だったと言っていた。それは戦場が日本の外になっても変わりないだろう。

「たしか水軍が海上における不安要素の一つとして蘇祿をあげていたな。水軍が大半の船を破壊したとはいえ、その土地を制圧できなければまた船ができて兵站を脅かしかねないぞ」

「そちらもすでに兵を送り込んでいます。しかしほかの土地とは違って日本人が少ないため、ほぼ全戦力が戦に参加しています。そのため他と比べますと少し苦戦気味のようです。しかし主戦場は陸となったため、海上の兵站維持は問題ないと考えます」

「兵站維持は問題ないとのことですが、移民を乗せた船は問題ないでしょうか」

発言をしたのは産業奉行所次官の長安だった。

「移民船には兵站維持に用いる船より戦う能力は非常に低いです。兵站維持には問題ないものでも移民船にとっては脅威となる可能性があります。産業奉行所としては早急に蘇祿の攻略をお願いしたい」

「確かに移民が成功しなければ今回の呂宋攻めは成功したとはいいがたいだろう。そのあたりはどうなのだ」

「はっ。陸軍としましても全力を尽くしているところですが、移民船出航予定日までに制圧できるかと言われますと」

「でしたら水軍が海上の護衛を行いましょう」

昌幸が言い終わると、すぐに元吉が声をあげた。それを見て陸軍参謀次長の二人と陸軍奉行所次官の種長が少し顔をしかめる。

「現在、水軍は敵の海上戦力の大幅減少によりかなり余裕のある状態です。移民船の護衛程度の戦力は問題なく出せます」

「水軍奉行所としましてはそれが一番現実的と考えます」

「産業奉行所もその案に賛成します」

元吉の言葉に貞範と高虎が同意する。

「ほかのものから何か意見はないか」

そう言って皆を見る外見を言う様子はない。

「ならばその案を採用しよう。次は・・・移民の話も出たところだ、産業奉行所」

「はっ。皆さまにお配りした資料をご覧ください」

高虎が皆に資料を見るよう促す。

「こちらにありますように当初予定していた移民の数から半分ほど減らさせていただきました」

「呂宋への移民が予定の半分だと。どういうことだ」

高虎の報告に思わず声が出てしまった。さきほど移民が成功しなければ今回の呂宋攻めは成功したとはいいがたいと話をしたばかりというのに。

「はい。先の地震にて被害を受けた地域の復興を優先せねばならないので、今回の計画で呂宋島に行く予定だった移民をそちらに回す必要があるかと」

たしかにあの地震は被害が大きかった。揺れ自体は幕府が想定しているものより大きなものではなかった。しかし広範囲において津波が発生し、地震自体の被害より大きなものが出た。時期も呂宋攻めに一揆の鎮圧と被ってしまったためにかなり手間取った。

「しかし呂宋を安定させないことには貿易にも影響が出かねない。今年は英蘭の船が来るのだぞ」

「呂宋は戦が行われている最中ですので、英蘭も仕方ないと思うでしょう。しかし国内の有様がひどいものだと貿易相手として不安を持つかと。また先の使節団の報告書では英蘭の政治的混乱は免れず、貿易にも影響が出ると予想されるとありました。ここは長期的な目で見るべきかと」

「しかし・・・いや、外ばかりに目を向けていて足元が崩れたら意味がないな。仕方ない、仕方ない」

天災なのだ。予定通り行かなくても仕方のないことだ。それにこの資料を見ると国内の復興と呂宋の開墾の力の入れ具合をうまく調整している。これが現状では最善だろう。

「さっき使節団の話が出てきたが、ユダヤ人はどうする」

「現在は言語習得のための勉強をしているところです。いずれは10人程度に分けて各地の開墾などに従事してもらう予定です」

「そうか。彼らが日本で住民として登録された以上、日本人だ。不当に扱うことは許さん」

「「「はっ」」」

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