イングランド
新しく作品『常陸不死鳥日記』を投稿し始めたので、よかったらそちらもよろしくお願いします。
――――――――1603年7月26日 ロンドン 浅井井頼―――――――――
「まさかこのような時に来ることになるとは思いませんでしたな」
そう言いながら興元殿が豪快に笑う。笑い事ではないと思うんだが。
「まったくで。まさか英蘭の女王が亡くなられて、新たな国王が即位する直前だったとは」
時期がいいのか悪いのか。しかし女王が亡くなる前に会っていたら新国王とまた交渉しないといけなかった。それを考えたらまだましというものか。
「たしかこれから会う人物は亡くなられた女王の側近で新国王即位に尽力した方で、日ノ本でいえば首席補佐官のような役職についているとか。これからもかなりの権力を握るとみていいでしょうな」
「外務奉行所としても国王の側近と会えるのは有益です。それに交易の件に関しても言質を取れれば一気に進めることができるでしょう」
イギリス東インド会社は勅許会社。国王の命令には逆らうことはできんだろう。
「しかしなぜ今回は自分だったのですかな。順当なら調長殿か鴻池あたりでは」
「理由は二つです。一つは今回の交渉に参加しない方たちにはこの国の教会に行ってもらうからです」
「なるほど。英蘭はイスパニアとは違う宗派の国でしたな。各国にカトリックと思われている自分が教会に行くのはあまりよくないと」
「はい。もう一つは日ノ本の軍事力を示していただきたいのです。特に水軍の力を」
「万が一、戦になれば水軍同士の戦になりますからな。距離を考えれば戦はしたくないはず。そこに日ノ本の水軍の力を示せば戦を避ける理由ができるのと同時に、交渉も対等な立場でできると」
「・・・もしかして分かってて聞きました?」
「はははっ。そんなわけがないでしょう。おっ、あれが約束の建物では」
なんだか話をそらされた気がするが、実際に会う約束をしている建物に近づいてきたので話をやめる。
「通訳は向こうが用意すると言っていたのですよな」
「はい。そのはずですが」
とりあえず門の前に立っていた警備らしき兵にラテン語で声をかけると、その兵はすぐに建物に入っていった。しばらくして兵ともう一人の男が出てきた。
「初めまして。お待ちしていました」
「これは驚いた。日ノ本の言葉を話すものがいるとは」
「もともとイスパニアで商人をしていました。その後この東インド会社に雇われることになりまして。どうぞ、こちらへ」
これは想定していた交渉とは違うものになりそうだな。
「I've been waiting.I am Robert Cecil.」
「待っていた。私がロバート・セシルだ」
「浅井井頼です」
「自分は細川興元というもの」
「The one on the right is iyori Asai and the one on the left is okimoto Hosokawa.」
「I've heard about Japan from before.We would like to accept any offer to trade your country.」
「貴方の国の話は聞いていた。ぜひ交易をしたいと」
「But our country, which had been waging war with Hispania until recently, cannot decide whether to trust you.」
「しかしイスパニアと戦をしていた我が国はあなた方を信用していいか判断できない」
おそらくイスパニアは日ノ本と交易をすることで得た利益を戦に使ったのだろう。
「イスパニアは国家としての信用である約束を破りました。なので新しい交易相手を探しています」
「Hispania has broken his national promise.That is why we are looking for new trading partners.」
「イスパニアとの関係はこれからどうなるか分からない。もしかしたら戦になるかもしれない」
多分あの御屋形様であればそう簡単に戦はしないだろう。だがここは舐められないように強硬な姿勢も辞さないところを見せておかないと。
「しかしあなた方から信頼を裏切るようなことをしない限り、イスパニア以上の待遇は約束します」
「His relationship with Spain is exploring all possibilities, including war.But if you do not betray, we promise more treatment than Hispania.」
通訳の言葉を聞いて少し考え込み始める。
「この話は他の国にもさせていただいています。貴国の早急な判断を期待します」
「This story has been told to other countries. I look forward to your early decision.」
「all right. I want to decide in detail. Call someone from the East India Company right away.」
「細かいところまで決めたいので、東インド会社の人を呼んでもいいですか」
「ありがとうございます。もちろんです」




